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第28回ゾミア研究会(人間文化研究機構「現代南アジア地域研究」プロジェクト・京大拠点(KINDAS)研究グループ1研究会との共催)

今回は、インドのナガに関する特集です。
どなたでも自由にご参加いただけるオープンな研究会です。
事前登録などの手続は必要ありません。ぜひお気軽にご参加ください。

日時:2017年10月22日(日)13:30~18:00
会場:京都大学東南アジア地域研究研究所・稲盛財団記念館201号室(東南亭)
https://kyoto.cseas.kyoto-u.ac.jp/

プログラム:
13:30~13:45 趣旨説明等
13:45~14:35 小磯 学(神戸山手大学・現代社会学部教授)「民族集団アンガミ・ナガ(インド北東部ナガランド州)の祭りとアイデンティティ」
14:35~15:25 遠藤 仁(人間文化研究機構・総合人間文化研究推進センター研究員/秋田大学大学院国際資源学研究科(現代中東地域研究拠点)客員研究員)「物質文化から見たインド北東部の社会変容」
15:25~16:15 渡邊三津子(千葉大学大学院・人文科学研究院助教)「インド北東部ナガ丘陵における集落分布および土地利用の変遷」
16:15~16:30 休憩
16:30~16:45 コメント1 木村真希子(津田塾大学・学芸学部准教授)
16:45~17:00 コメント2 藤田幸一(京都大学・東南アジア地域研究研究所教授)
17:00~18:00 総合討論

報告要旨
1) 小磯報告
民族集団ナガはインド北東部のナガランド州とその周辺地域(全体で四国ほどの面積)に約200万人が暮らす。一部では1960年代まで首狩りをし合うなど敵対関係にあった約70の諸集団から構成され、各々言葉、衣装、装身具、祭りなどが異なり、それぞれが別個の集団としてのアイデンティティを保持している。
歴史的には、19世紀以降イギリス軍の侵攻が外部世界を意識する端緒となる一方、アメリカの宣教師の活動によって急速にキリスト教への改宗が進んだ(今日では97%がキリスト教徒、3%が古来の精霊崇拝)。さらに20世紀半ば以降にはインドや(当時の)ビルマの中央政府に対する独立運動が活発化し、「他者」に対しての諸集団全体を「ナガ」として統一視する意識が芽生え今日に至っている。
今日、老若男女ともに彼らの多くは熱心なキリスト教徒である。しかし同時に、かつて(そして限定的には今も)教会が「未開」として否定した伝統衣装や装身具、祭りを頑なに守ってもいる。それが帰属する集団の、そしてナガとしてのアイデンティティを強化する役割を担っているのは当然としても、キリスト教徒としても矛盾なく受け継がれている事例を考察する。

2) 遠藤報告
本発表ではインド北東部に居住する民族集団ナガを対象にキリスト教化や第二次世界大戦、近代化という大きな社会変容を伴う事象に際し、彼らの社会がどの様に変化してきたのか、その一端を物質文化、特に装身具から読み解く。
インド北東部の急峻な山岳地帯、いわゆる「僻地」と呼ばれる領域に、州境や印緬間国境に分断され居住しているナガは、これまで大きな社会変容の波に幾度も見舞われている。しかし、平野部に比べ、その生業体系の根本や道具等は急激には変化せず、比較的伝統的な生業や道具を今でも見ることができる。
一方で、装身具に眼を向けるとキリスト教化による価値観の大きな変化や、第二次世界大戦やその後インドからの独立運動による戦火に見舞われたことによる喪失、近代化による価値観の変化など、装身具のもつ意味は大きく変容している。互いに意思疎通が不可能なほど細分化された複数の言語集団で構成された、民族集団ナガは元来アイデンティティを共有する集団ではなかったが、近年では「ナガ」としてまとまる動きが顕著であり、その際にも装身具が象徴の一つとして利用されている。以上を俯瞰し、彼らの社会変容と物質文化の存続を考察する。

3) 渡邊報告
インド北東部とミャンマー北部に跨る峻険な山岳地帯(ナガ丘陵)に居住する民族集団ナガの人々は、山の尾根に集落を築き、焼畑による畑作や陸稲、水稲農耕を営み、狩猟や採集の比重も高い。また、家禽や家畜(ブタ)も飼育しており、半家畜といえるミタンニ牛を森林で放し飼いにしているという点も彼らの特徴となっている。しかしながら、キリスト教化や近代化の波の中で、彼らの生活や文化は大きく変化してきた。本報告では、人口増加の影響を受けて変化するナガの集落分布やその周辺の土地利用に焦点を当てる。
1901年以降の統計データを見ると、ナガランド州の人口は1951年から2001年の間に19倍に増加した。急激な人口増加は土地利用の過密化を招き、斜面崩壊や地滑りが多発して社会問題となっているが、実際、増加する人口はどのように集落に吸収されてきたのだろうか。Mimi、Khonoma村を取り上げ、Corona衛星写真(1960年代)、Pleiades衛星画像(2014年)を比較判読し、集落分布や周辺の土地利用にみられる地域性やその変化を紹介するとともに、それらに影響を及ぼす地形的な要因について考察する。

お問い合わせ等:
ゾミア研究会事務局の京都大学東南アジア地域研究研究所・藤田幸一(kfujita[at]cseas.kyoto-u.ac.jp)または、
下條尚志(shimojo[at]cseas.kyoto-u.ac.jp)まで。

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