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第30回ゾミア研究会(2017年11月10日)

今回は、サラワクのイバン人に関する報告です。
どなたでも自由にご参加いただけるオープンな研究会です。
事前登録などの手続は必要ありません。ぜひお気軽にご参加ください。

日時: 2017年11月10日(金) 午後3時~5時30分ころまで
会場: 京都大学東南アジア地域研究研究所 稲盛財団記念館201号室(東南亭)
報告: 内堀基光(放送大学)「サラワク・イバン人のエスノジェネシス」
プログラム:
  3:00~3:10 趣旨説明等
  3:10~4:00 内堀基光「サラワク・イバン人のエスノジェネシス」
  4:00~4:10 休憩
  4:10~4:30 コメント:祖田亮次(大阪市立大学)
  4:30~5:30 内堀先生リプライ
        総合討論

報告要旨: 
 ボルネオ島西部のイバン人と呼ばれる人びとのエトノスとしてのまとまりがど のように形成されてきたのか。これについて私がはじめて書いたのは1984年で あった(「ある焼畑耕作民の歴史──サラワク・イバンの場合」、大林太良編『民 族の世界史6:東南アジアの民族と歴史』、山川出版社、416-436)。そこでは、 ごく荒削りの仮説として、彼らの祖が現在のサラワク州南部のルパール川流域に 到来する前──時期は特定できないが17世紀よりは前──、現在の西カリマンタンを 流れるカプアス川の中流域で、周囲の成層化された社会制度(世襲首長や貴族層 の存在)をもつ集団からの逃散者たちが集まってきたのがはじまりではないかと 述べた。こうした集団が同地域にいた漁業と交易に関わっていたマレー人(の 祖)との接触を通して、高移動性を軸とする社会的昂進状態を獲得したのではな いかとするものである。実証的な証拠はないが、イバンのその後の社会構造(平 等主義)、行動コード(高移住性と拡散志向、首狩)、文化(物質文化としてイ ンベントリーの少なさと言語表現中心主義)、言語(類マレー語性)など、こう したイバンのエスノジェネシスを傍証するものだと論じ、サラワクにおけるその 後の狩猟採集民の「イバン化」をも含めて、これを「イバン運動」と表現した。 この時に参考にしたのは、E・リーチのカチン高地におけるグムサとグムラオの 振り子的な社会構成変動の力学であったが、原稿を書いた後、きわめてよく似た 議論をV・キングがしていたのに気づいた。また近年ではJ・スコットが『支配さ れない技法』の中でより大きな時間枠組でのゾミア地帯社会論を展開しており、 島嶼部の例としてイバンにも言及している。ゾミア社会論を読んでだいぶ時間が 経つが、ふたたびイバン社会の生成について考えをまとめたく感じ出したところ であり、たしょうでもその後得た民族誌資料や理屈を整理して、この研究会での 発表機会を利用させていただきたく思っている。

お問い合わせは、ゾミア研究会事務局の藤田(kfujita[at]cseas.kyoto-u.ac.jp)または、下條 shimojo[at]cseas.kyoto-u.ac.jpまで。