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東南アジア学会: 現代ミャンマー政治の原点をめぐって-伊野憲治『ミャンマー民主化運動』(めこん,2018)書評会- (10月関西地区例会)

日時:2018年10月13日(土)13:30-17:30
場所:京都大学稲盛会館2階213号セミナー室
(http://www.cseas.kyoto-u.ac.jp/access/)

プログラム:
13:30-13:40 中西嘉宏(京都大学)
「趣旨説明」

13:40-14:20 伊野憲治(北九州市立大学)
「『ミャンマー民主化運動―学生たちの苦悩、アウンサンスーチーの理想、民のこころー』自己レビュー」

14:30-14:50 根本敬(上智大学)
「コメント1:ビルマ暦1300年闘争(1938-39)とのアナロジー」(仮)

14:50-15:10 中西嘉宏
「コメント2:国軍から見た1988年民主化運動とクーデター」

15:10-15:30 土佐桂子(東京外国語大学)
「コメント3:民衆「運動」の再考」(仮)

15:30-15:50 髙橋昭雄(東京大学)
「コメント4:なぜあの時だったのか?:「民主化運動」の経済的要因を考える」

16:00-17:30 ディスカッション

18:00- 懇親会

研究会趣旨:
伊野憲治『ミャンマー民主化運動:学生たちの苦悩,アウンサンスーチーの理想,民のこころ』(めこん,2018)の書評会をおこなう。1988年,ヤンゴン郊外での若者同士の喧嘩に端を発した反政府デモは,ミャンマー史上最大規模にまで発展した。ついには,当時の独裁者で同国を26年にわたって支配したネーウィンが辞任する。しかし,同年9月18日に国軍がクーデターを敢行し,デモ隊を暴力的に弾圧した。その後,国軍による統治はなし崩し的に約23年間続き,その間,ミャンマーの民主化運動は弾圧され続けた。2011年,軍事政権は終わり,同国の政治活動の自由は格段に広がった。2016年には,アウンサンスーチー率いる国民民主連盟(NLD)が政権与党になっている。とはいえ,現憲法下でも国軍に対する文民統制は弱く,NLDと国軍との関係は微妙なバランスの上に成り立っていて,1988年の民主化運動が生み出した「民主化勢力と国軍の対立」という構図は,かたちを変えて今も続いている。1988年の民主化運動は現代ミャンマー政治の原点なのである。今年は1988年民主化運動勃発とそれへの悲惨な弾圧から30年目にあたる。今年出版された伊野憲治『ミャンマー民主化運動』は1988年の事件を中心に,同国の民主化運動について検討したもので,そこからミャンマーの政治と社会に関する多くの論点を引出すことができる。本研究会では,筆者の伊野会員に同書の内容や執筆の背景について報告してもらったあと,分野の異なる4名のミャンマー研究者がコメント,または話題提供を行ない,ミャンマー民主化運動について多角的に掘り下げることにしたい。

伊野憲治・報告要旨:
「『ミャンマー民主化運動―学生たちの苦悩、アウンサンスーチーの理想、民のこころー』自己レビュー」
本報告では、まず、本年3月に「めこん」より出版された拙著『ミャンマー民主化運動』の構成、内容を背景となる現地体験等と関連付けながら概観する。その上で民主化勢力内での学生運動家たちとアウンサンスーチーの主張、行動を比較しながら、結局、民のこころに吸収されていく民主化運動の姿を明らかにする。最後に、現代ミャンマーを理解するうえでの本書の意義と問題点を再検討し、本書で語り尽くせなかった、民主化運動の別の局面を提示し、今後の課題としたい。

問い合わせ先
中西嘉宏(nakayosi[at]cseas.kyoto-u.ac.jp)

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