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京都シネアドボ「映画は他者の痛みを語れるか――夢みるインドネシア映画の挑戦」上映・トーク

最近、日本でもインドネシア映画が紹介される機会が増えています。1926年にインドネシア(当時は東インド)で最初の映画が作られて以来、インドネシア映画は100年の歴史を迎えようとしています。ただし、インドネシア映画はこの100年間に順調に発展してきたわけではありません。特に1990年代半ばには国産映画の製作本数が10本に満たない年が続き、インドネシア映画は瀕死の危機を迎えたとまで言われました。スハルト大統領の長期政権が終わって民主化が進んだ1998年以降、インドネシア映画は復活を遂げて現在の活況に至っています。

インドネシア映画にはさまざまなジャンルがありますが、特に1998年以降の映画に通底しているのは、同じ社会に暮らしてきた人々が過去に経験してきた痛みをどのように受け止めるのかというテーマです。映画は他者の痛みを語れるのかという問いにインドネシア映画がどのように応えようとしてきたのかについて、5本の作品をもとに考えてみたいと思います。

広大な国土を持つインドネシアには風土や文化が異なるさまざまな地方がありますが、インドネシアの映画産業はこれまで首都ジャカルタを中心に発展してきました。この上映・トークで取り上げる5つの作品は、いずれもジャカルタ以外の地域を舞台にしています。これらの作品を通じてインドネシアの多様な姿も見ていただければと思います。

※東ティモールとインドネシアは別の国ですが、1970年代半ばのインドネシア国軍による東ティモール侵攻から2002年に東ティモールが独立(主権回復)するまで、インドネシアから見ると東ティモールはインドネシアの一部でした。インドネシアが東ティモールを自分たちの問題と捉えることについて考えるため、この上映・トークでは東ティモール映画の『ベアトリスの戦争』を対象に含めています。

※参加費無料/要事前登録
事前登録:
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSc8YO47LBml0uYy0LfyiwHQ4tkKFcuAQNEeRQP2_w8TWkRiZQ/viewform?vc=0&c=0&w=1&flr=0

日時
 2021年10月11日(月)9:00 ~ 10月17日(日)21:00 オンライン上映
 2021年10月16日(土)14:00~16:30 トーク

会場
 オンライン
 上映・トークともに事前登録が必要です。こちらから登録してください。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSc8YO47LBml0uYy0LfyiwHQ4tkKFcuAQNEeRQP2_w8TWkRiZQ/viewform?vc=0&c=0&w=1&flr=0

プログラム
オンライン上映
10月11日(月)9:00~10月17日(日)21:00
『楽園への長き道』
『デリサのお祈り』
『ベアトリスの戦争』
※『アクト・オブ・キリング』と『マルリナの明日』のオンライン上映はありません。市販のDVDまたは各種動画配信サービスでご視聴ください。

トーク
10月16日(土) 14:00~16:30
(講師:西芳実、司会:山本博之)
◆主な内容
・アンワルは本当に過去の殺人を悔いたのか――『アクト・オブ・キリング』
・なぜ神の名の下でイスラム教徒の同胞を犠牲にしたのか――『楽園への長き道』
・マルリナは生首を持ち歩いて何をしたかったのか――『マルリナの明日』
・津波で家族も友人も失ったデリサはどう立ち直ったのか――『デリサのお祈り』
・なぜベアトリスは愛した男を裁くのか――『ベアトリスの戦争』
・映画は他者の痛みを語れるか――五つの作品から考える
※いずれの作品も結末や核心部分に触れるため、未視聴の方はご注意ください。

登壇者
西芳実(にし・よしみ)/講師
京都大学東南アジア地域研究研究所准教授。専門はインドネシア地域研究。多言語・多宗教社会の紛争・災害対応過程。主著に『災害復興で内戦を乗り越える―2004年スマトラ島沖地震・津波とアチェ紛争』(京都大学学術出版会、2014年)、近刊に『夢みるインドネシア映画の挑戦』(英明企画編集)がある。
山本博之(やまもと・ひろゆき)/司会
京都大学東南アジア地域研究研究所准教授。専門は東南アジア地域研究/メディア研究。編著書に『マレーシア映画の母 ヤスミン・アフマドの世界 人とその作品、継承者たち』(英明企画編集、2019年)などがある。混成アジア映画研究会主宰。

作品紹介
アクト・オブ・キリング(The Act of Killing)
ジョシュア・オッペンハイマー監督/デンマーク・ノルウェー・イギリス/2012年/122分、(オリジナル全長版)166分/インドネシア語(日本語字幕)
60年代のインドネシアで密かに行われた100万人規模の大虐殺。その実行者は軍ではなくプレマンと呼ばれる民間のやくざ・民兵たちであり、驚くべきことに、いまも「国民的英雄」として楽し気に暮らしている。(アマゾン・プライムより)
(※殺人や拷問などの暴力表現を含む場面があります。)
(『アクト・オブ・キリング』のオンライン上映はありません。市販のDVDまたは動画配信サービスで視聴してください。)

楽園への長き道(Long Road to Heaven)
エニソン・シナロ監督/インドネシア/2006年/115分/インドネシア語・英語(日本語・英語字幕)
世界最大のイスラム教徒人口を抱えるインドネシアはイスラムの名によるテロをどう受け止めたのか。9.11以降に「テロとの戦争」が世界化する中で2002年に発生したバリ島爆弾テロ事件を、テロの企画者、実行犯、地元の人々、報道の4つの視点から描くことで恨みの連鎖を避ける道を探る。
(※爆発による死傷者が映る場面があります。)

マルリナの明日(Marlina Si Pembunuh Dalam Empat Babak)
モーリー・スルヤ監督/インドネシア/2019年/93分/インドネシア語(日本語字幕)
夫と子どもを亡くし、荒野の一軒家で暮らす天涯孤独のマルリナ。突然、彼女のすべてを奪おうとする7人の強盗団に襲われた。暴行を受けながら、次々と強盗団を倒し、首領マルクスの首を刎ねて窮地から脱出。自らの正当防衛を証明するため、たった一人で、警察署へと向かう。だが強盗団の残党たちはマルクスの復讐を誓って、彼女の跡を追い始めていた。(アマゾン・プライムより)
(※殺人や暴行などの暴力表現を含む場面があります。)
(『マルリナの明日』のオンライン上映はありません。市販のDVDまたは動画配信サービスで視聴してください。)

デリサのお祈り(Hafalan Shalat Delisa)
ソニ・ガオカサック監督/インドネシア/2011年/106分/インドネシア語(日本語・英語字幕)
6歳の少女デリサは、インドネシアのスマトラ島の海辺の村で、母サラマと3人の姉たちと暮らしている。腕白なデリサは男の子たちにまじってサッカーをするのが好きだが、姉たちと違ってお祈りは苦手で、ご褒美をもらわないとお祈りを覚えようとしない。お祈りの暗唱の試験の日、村を大きな地震と津波が襲い、母や姉たちや友達が亡くなり、一命をとりとめたデリサも右脚を失う。外国から帰ってきた父ウスマンと再会したデリサは、母への思いを胸に人生の意味を見出す。2004年のインド洋津波の実話にもとづく。
(※津波による犠牲者が映る場面があります。)

ベアトリスの戦争(Beatriz’s War)
ルイギ・アキスト監督、ベティ・レイス監督/東ティモール/2013年/101分/インドネシア語、テトゥン語(日本語・英語字幕)
インドネシア軍による全面侵攻以降、東ティモールにおいて占領が女たちにどのような影響をもたらしたのか。ベアトリスの夫トーマスは虐殺を逃れたものの行方不明になる。ベアトリスはトーマスの姉テレサらとともに、インドネシア軍が管理する収容キャンプで女たちの暮らしを守る。住民投票により東ティモールのインドネシアからの独立が決まり、16年前に行方不明になったトーマスが村に帰ってくる。しかしベアトリスはその男性が夫であることに確信がもてない。
(※殺人や暴行などの暴力表現を含む場面があります。)

主催
 混成アジア映画研究会
協力
 京都大学東南アジア地域研究研究所
 科研費プロジェクト「東南アジア映画の物語と表現を読み解く」
問合せ
 malaysianfilm@cseas.kyoto-u.ac.jp