マツタケをめぐる学際的な出会い – CSEAS Newsletter

マツタケをめぐる学際的な出会い

Newsletter No.81 2023-06-14

呉 昀熹 (農村発展研究)

京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科(ASAFAS)での学生生活を終えて、東南アジア地域研究研究所(CSEAS)で研究者としての第一歩を踏み出しました。今も先生の指導を受けていますので、これまでと全く異なる新しい環境というわけではありませんが、CSEASでの研究生活は本当に刺激的です。様々な分野の研究者と交流する機会があり、研究の奥深さや学際的なテーマの面白さを実感しています。まるで新しい世界への扉が開かれたようで、より広い視点から自分の研究内容を吟味しようという意欲が湧いてきました。

また、研究仲間との読書会は、途切れることなく続いています。最近、食に関するある作品を読んで、感銘を受けました。マツタケの国際的な流通を題材にした人類学者アナ・チンによるThe Mushroom at the End of the World: On the Possibility of Life in Capitalist Ruins(邦訳は『マツタケ─不確定な時代を生きる術』赤嶺淳訳、みすず書房、2019年)という本です。この本は、マツタケがどのように密林から先住民の手によって採取され、やがて美食家の食卓まで辿り着くかという物語を描くだけではありません。秩序に慣らされた現代において、マツタケは秩序を超えた社会を提示しています。本書では、人と人、人と自然、種と種の間のつながりなど、菌類の世界的なサプライチェーンにおける直接的、あるいは間接的なさまざまなアクターの絡まりあいを通じて、特定の研究や民族に限定されない幅広い分野の複合的なつながりが著されています。また、持続可能性の問題を見つめなおし、そこにおけるアクターの種を超えた広がりを鮮やかに描き出しています。就寝前の読み物として紹介したいと思います。

(イラスト:Atelier Epocha(アトリエ エポカ))

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“Multidisciplinary Contact over Mushrooms” by Yunxi Wu