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連携教員の著作が刊行されました直井里予 著『うつる人びと──映像で語るカレン難民の少年との日々』(晃洋書房)

2025.06.12

著者からの紹介

本書に登場するカレン難民は、1980年代のビルマ内戦激化時に祖国を脱し隣国タイに逃れてきた人々です。このカレン難民を対象に10年以上にわたって、難民キャンプという特殊な社会で暮らす人々やそのライフコースの変容を映像に納め、制作・発表してきました。

本書では、撮影対象(主人公)である、キャンプで生まれ育ったカレン難民の少年ダラツゥという「個」に焦点をあて、彼を取り巻く人々との関係と「越境をめぐる生の実態」を述べつつ、映画の制作過程に合わせた長期的・通時的な参与観察により記述・考察しました。そして、映像を用いた難民理解の限界と可能性を問いながら、撮影の際における撮影対象者との関係性の形成を自己再帰的考察と映像の公開(上映会)における、「観る者」との交差における分析を通した他者(難民)表象の問題一般への還元可能性を提示することを試みました。

本書に付属しているQRコードで映像作品の鑑賞と併せることで、「撮る者」「撮られる者」そして「観る者」が共振(相互作用)する様子を追体験し、カレン難民についてより深く理解できるようになるかと思います。

本書を通して、カレンに限らず難民問題全体に関する議論に新しい視点をもたらし、社会に存在するさまざまな価値観の理解共有へとつながることを願っています。(直井里予

詳しくは教員の出版物ページもご覧ください。

関連情報

直井里予「病縁の映像地域研究─タイ北部のHIV陽性者をめぐる共振のドキュメンタリー」(京都大学学術出版会、2019年11月)