所長挨拶

東南アジアと諸地域の多元性に学ぶ

 東南アジア地域研究研究所は、2017年1月1日に、旧東南アジア研究所と旧地域研究統合情報センターの二部局が統合して、新たにスタートしました。東南アジアおよびその周辺地域の総合的研究をミッションとし、半世紀の伝統をもつ東南アジア研究所と、地域研究における情報資源の共有化と相関型地域研究を推進するために広く情報の蓄積をもつ地域研究統合情報センターは、いずれもフィールドベースの学際研究を推進してきました。統合後は、先達の皆様が築いてこられた研究や資源の蓄積を活かしつつ、教員35名、客員研究員やポスドク研究員、さらには研究支援スタッフを合わせて、150名を超える大所帯となって、新たな一歩を踏み出しました。

 私たちの住む世界は今や不安定性と偶発性に満ちて、日々刻々と変化しています。科学技術のめざましい発展の一方で、環境劣化や人口の高齢化、感染症や災害、紛争や貧困、差別や不平等といった喫緊の課題に直面しています。より複合的な対応を求められるこうした課題に立ち向かうために、私たちは、分野を越えた研究を進め、東南アジアという特定の地域と世界の諸地域とを相互に比較し、さらに、立ち返って自らの足元である日本について考えながら、問題への地域ベースの複合的な理解と解決へ指針を提供することを目指しています。

 そのような目的に向けて、私たちの研究所では、多分野・多国籍の研究者が協働しつつ、研究を進めています。人類社会が過去に歩んできた道をたどり、今に至った径路を知り、そして今、どのように他者と共存するのかを問う、これこそが人文・社会系の知の核であり、出発点です。その上で、特定地域でこれらの問題を考える上で、医学や生態環境、農学、林学や工学の知もまた、不可欠です。私たちの研究所の世界的にも稀有な特徴は、そうした人文・社会系の問いに共鳴し、かつ、各分野ならではの視点に立って新たな問いと展開を共に考える理系研究者の存在です。

 私たちは、京都にあっては、多くの国内外の研究者に研究所の資源を利用していただきながら、共同研究を通じて刺激を受けています。一方、フィールドでも様々な人々に出会います。グローバル化が進む今日でも、あるいはそうだからこそ、多様性に富んだ東南アジアを中心とするフィールドの地に足をつけて、見聞きし、語りあい、先進国発のパラダイムへのオルタナティブの知を見いだせると考えています。問題の解決を考える上で、異なる立場からフィールドで関わる当事者、研究者のみならず市民団体、行政、企業関係者といった人々の考えを知り、協働することはますます重要になっています。

 このように京都とフィールドの間を往還し、さまざまな立場の方々とさらに連携を強め、時間軸と空間軸の中で自らの立ち位置を踏まえながら、現在のグローバルな課題に取り組み、自然環境と人類社会の持続的な共存に向けた展望を世界に発信していくために、所員一同、皆様とともに励んでまいりたいと思います。

 今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

 

京都大学東南アジア地域研究研究所
所長 速水 洋子

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