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親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰を抜かした事がある。なぜそんな無闇をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談に、いくら威張っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃したからである。

小使いに負ぶさって帰って来た時、おやじが大きな眼をして二階ぐらいから飛び降りて腰を抜かす奴があるかと云ったから、この次は抜かさずに飛んで見せますと答えた。

庭を東へ二十歩に行き尽くすと、南上がりにいささかばかりの菜園があって、真中に栗の木が一本立っている。これは命より大事な栗だ。

夏目漱石(H2)

作品一覧(H3)

  1. 吾輩は猫である
  2. それから
  3. 文鳥・夢十夜

親類のものから西洋製のナイフ(H4)

を貰って奇麗な刃を日に翳して、友達に見せていたら、一人が光る事は光るが切れそうもないと云った。
切れぬ事があるか、何でも切ってみせると受け合った。

そんなら君の指を切ってみろと注文したから、何だ指ぐらいこの通りだと右の手の親指の甲をはすに切り込こんだ。幸いナイフが小さいのと、親指の骨が堅かったので、今だに親指は手に付いている。しかし創痕は死ぬまで消えぬ。

引用:坊っちゃん
作品名発表年掲載・収録
坊っちゃん1906年4月春陽堂刊『鶉籠』収録
二百十日1906年10月『鶉籠』収録
それから1909年6月春陽堂
結合したセル 縦に結合したセル テーブルのテスト
テーブルのテスト テーブルのテスト テーブルのテスト

虞美人草

甲野藤尾は虚栄心の強い美貌の女性。兄の欽吾が神経衰弱(鬱病)療養により世間とは距離を置き、家督相続を放棄しているのを良いことに、小野と宗近という二人の男性を天秤にかけ、彼らが狼狽する様を楽しんでいた。

硝子戸の中

ガラス戸で世間としきられた書斎で、単調な生活を送っている作者のもとに時々は人が入ってくる。自分以外にあまり関係ないつまらぬことを書くと前置きして、身辺の人々の思い出が綴られる。

アコーディオン

勘太郎は無論弱虫である。弱虫の癖に四つ目垣を乗りこえて、栗を盗みにくる。ある日の夕方折戸の蔭に隠れて、とうとう勘太郎を捕まえてやった。
その時勘太郎は逃げ路を失って、一生懸命に飛びかかってきた。向むこうは二つばかり年上である。弱虫だが力は強い。