現代ラテンアメリカ政治地域研究のファーストステップ

村上勇介・出岡直也・山岡加奈子 編
法律文化社、2025年
286頁、ISBN: 978-4-589-04447-1

編者による紹介

本書は、ラテンアメリカ(中南米)の現代政治に関心を持つ方々のために、基本的な事柄の説明と分析を行った入門書です。高校の社会科科目と大学の専門課程との間の橋渡しの役割を担うことを願って編纂されました。

第I部では歴史的背景の概説を行うとともに、近年を中心とする1930年前後以降の現代史(ブラジル、メキシコの地域大国の他、中米、カリブ地域、アンデス諸国、南米南部の下位地域別)を辿りました。また第II部では政治体制変動、国家、市民社会、民主主義の課題、の4つのテーマから現代政治の位相に迫っています。最後に第III部でアメリカ合衆国との関係、地域外アクター(中国、ロシア、欧州、グローバルサウス、BRICS)、人の移動、日本との関係の4点から国際関係の動態を探りました。

ラテンアメリカは、前世紀終わりからの市場原理を徹底させる新自由主義(ネオリベラリズム)改革が急速かつ全体に浸透し、それに対する反応も早く現れた地域です。ラテンアメリカに比べると新自由主義の浸透が緩やかで、2010年前後からその影響が顕在化した欧米や日本、またラテンアメリカ以外のグローバルサウスの現在を捉え、今後の新たな社会を構想・構築する上で、ラテンアメリカの「先例」が参考になるはずです。(村上勇介

目次

はしがき

第I部 歴史展開と今世紀の動向

第1章 現代ラテンアメリカの基底・背景  2
1 ラテンアメリカという地域 2
2 植民地遺制 4
3 独立後の展開と課題 8

コラム1 都市化 21

第2章 メキシコ  23
1 歴史的背景 23
2 二重の移行(1980〜90年代) 26
3 民主化後の三大政党政治(2000〜18年) 30
4 左派政権の誕生とメキシコ政治の変容(2018年〜) 33

コラム2 ラテンアメリカにおける麻薬問題 38

第3章 中米  40
1 本章の論点 40
2 歴史的発展経路 41
3 革命運動の時代 45
4 権威主義への退行 49

コラム3 パナマ 57

第4章 カリブ地域  59
1 歴史的背景 59
2 キューバ 60
3 ドミニカ共和国 65
4 ハイチ 66
5 旧英領諸国 69
6 多様なカリブ地域 72

第5章 アンデス諸国  74
1 アンデス諸国とは 74
2 現代のアンデス諸国I──1930年代から70年代まで 77
3 現代のアンデス諸国II──1980年代以降 81

第6章 ブラジル  90
1 南米大陸最大の国 90
2 歴史的背景 91
3 二重の移行(1980〜90年代) 92
4 幸運な左派政権?(2000年代) 93
5 民主主義の動揺と制度的混乱(2010年代) 95
6 ボルソナーロ政権の誕生と政策 98
7 再びのルーラ政権──歴史の回帰か新しい時代の到来か 100

第7章 南米南部  102
1 アルゼンチン──政党システムの断片化から二大政党連合間の競争を経て流動化へ 102
2 チリ──二大政党連合を中心とした政党政治から新たな局面へ 106
3 ウルグアイ──「三党制」から二大政党連合を中心とした政治へ 109
4 パラグアイ──コロラド党中心の政党政治 112

第II部 政治への眼差し

第8章 政治体制変動  116
1 本章の焦点と関連する基礎概念 116
2 最初の決定的な岐路の段階における政治体制変動 121 
3 第2の決定的な岐路の時代の政治体制 127

コラム4 最初の決定的な岐路の時期におけるポピュリズム(古典的ポピュリズム) 133

第9章 国家の能力と代表のあり方  135
1 国家の能力と代表のあり方に着目する意味 135
2 ラテンアメリカ諸国の国家の能力 136
3 ラテンアメリカ諸国における代表の不全 141

第10章 市民社会  151
1 リベラリズムとラテンアメリカの独立 151
2 普遍的人権の抑圧 152
3 低信頼社会 157
4 新たな公共空間を求めて 159
5 今後の課題 163

コラム5 ジェンダーとラテンアメリカ政治 164

第11章 民主主義の課題  166
1 現代ラテンアメリカ諸国における民主主義の課題 166
2 半民主主義的主体による不安定化 167
3 対立の亜民主主義的領域への亢進 170
4 大統領による民主主義の後退 172
5 民主主義の質の問題 176
6 ラテンアメリカにおける民主主義をめぐる状況をどうみるか 178

第III部 国際関係の動態

第12章 アメリカ合衆国(米国)との関係  184
1 米国と近隣諸国の支配・従属関係 184 
2 米国の運河建設と関係国支配 187
3 南米諸国の戦略──大国間のバランシング 189
4 善隣外交 190
5 冷戦期の米国とラテンアメリカ・カリブ諸国との関係 192
6 冷戦後の米国とラテンアメリカ・カリブ関係──無関心から回帰へ 195
7 モンロー主義への回帰へ 198

コラム6 ラテンアメリカの麻薬問題(国際面) 200

第13章 新しい地域外アクター:中国、ロシア、欧州、グローバルサウスとBRICS  202
1 中国とラテンアメリカ・カリブ諸国との関係 202
2 ロシアとの関係 206
3 欧州とラテンアメリカ・カリブ諸国との関係 209
4 発展途上国としてのラテンアメリカの役割とグローバルサウス・BRICSの挑戦 213

第14章 人の移動  218
1 ラテンアメリカ政治と人の移動 218
2 出移民地域への転換──国家の脱領土化? 220
3 出移民をめぐる世界的な情勢変化──国際人権レジームの中で 226
4 ユニバーサル・シチズンシップをめぐって 228
5 世界の「ラティーノ」が問題提起することは何か──アクティブ・シチズンシップとのかかわりで 232

第15章 日本とラテンアメリカとの関係  234
1 移住者から始まった関係 234
2 日本とラテンアメリカの経済関係 237
3 日本の経済協力・経済援助──より政治的色彩を強める関係へ 241
4 再編成が進む日本とラテンアメリカの関係 245

コラム7 環境問題 247

引用・参考文献 249
人名索引 256
事項索引 260
著者紹介