Kyoto CSEAS Series on Asian Studies(英文)

The Chinese QuestionEthnicity, Nation, and Region in and beyond the Philippines

Caroline S. Hau
April 2014
NUS Press & Kyoto University Press

中国の政治・経済・文化的なプレゼンスの向上を背景に、東南アジアの中国像は、いま大きく変貌している。冷戦時代、各国のいわゆる華人たちは、政治的・文化的に警戒され、東南アジア各国で吹き荒れた「国民化」の波の中で圧迫された。だが今日、華人社会本来の経済的な力量に加えて、中国との積極的な関係を模索する各国政治の動向を背景に、「華人」あるいは中国的なもの、は積極的に再評価されているようにも見える。ところがこの「華人」自身のアイデンティティも、中国本土が直接各国の国家エリートと結ぶ中で、微妙な揺らぎを見せている。いわゆる「フィリピン化」の中で、華人が独特の社会カテゴリーを形成したフィリピンを舞台に、映画や文学に表象された「中国」「中国人」像の変遷を分析することで、21世紀の新たな国民統合、地域意識、そして世界市民的言説の形成に迫る。