坂本 龍太

坂本 龍太
部門・職位
環境共生研究部門
准教授
専門
フィールド医学
研究分野/キーワード
・ブータン王国における地域高齢者ケア
・人間の生活環境下に潜むレジオネラ症の感染源
・高地で暮らす高齢者の健康状態と生活の質
・水銀暴露のもたらす健康への影響
連絡先
sakamoto65@cseas.kyoto-u.ac.jp

坂本 龍太

ブータン王国における地域高齢者ケア

ブータンにおいて、持続可能な地域在住高齢者の健康診査、及びその後のフォローアップを中心とした包括的なヘルスケア・システムを創出することを目的とする。社会の高齢化は世界的に進行しており、地球上で1950年の時点で5%ほどであった65歳以上の人口は2009年までに8%弱になり、2050年までに16%ほどになると推測されている。ブータンもその例外ではない。ブータン王国保健省の報告によれば、ブータンの0歳児の平均余命は2005年に66.3歳 (女性66.8歳、男性65.6歳) であり、65歳以上の人口が2005年の29745人 (4.7%) から2030年までに58110人 (6.6%) に倍増すると試算している。日本の場合、65歳以上の人口は1940年 (昭和15年) の4.7% から伸び続け、2010年 (平成22年) 9月15日の時点で23.1%という超高齢社会となった。ブータン政府は1961年以降5年毎に国の5カ年計画を作成してきたが、高齢者に対する保健対策はまだ手つかずの状態である。本研究では、ブータン王国保健省と協力してブータン東部のカリン地区において往診を含めた高齢者健診を経年的に実施している。世界中で得られた最新の知見に基づきながら、現地で住民とともに持続可能で地域に即した健診・ケア体制を創り上げていく。

人間の生活環境下に潜むレジオネラ症の感染源

レジオネラ・ニューモフィラは重症市中肺炎の主要な原因菌の一つである。近年、レジオネラ尿中抗原キットの普及に伴い報告数が増加している。しかし、その感染源が、特に孤発例で、不明であることが多い。我々はレジオネラ・ニューモフィラが特に温かい時期に路上の水たまりから容易に分離されることを明らかにしてきた。レジオネラ・ニューモフィラは水たまりから空気中に飛散しうることを考えると、我々がこの菌に日常的に暴露されている可能性を示唆するものである。レジオネラ症による死亡を減らすためには、肺炎患者を診た際に、旅行や入浴施設などを利用歴がなくてもレジオネラ症の可能性を排除しないことが重要であり、人間の生活環境下に潜む感染源に注意を払う必要がある。

高地で暮らす高齢者の健康状態と生活の質

人間は、酸素を、気道から肺にある肺胞に取り込み、血液中のヘモグロビンに結合させ、心臓のポンプ作用により、食物の代謝物とともに全身を循環させ、細胞中のミトコンドリアへ送り、ATP (アデノシン三リン酸)という形で活動に必要なエネルギーを作り出す。酸素は言うまでもなく人間が生きる上で必須のものであり、標高の変化が人体に与える最も大きな影響は酸素分圧の低さによるものであろう。低地に住む我々が高地に行くとき、吸入酸素分圧は、低地を100%とすると、標高とともに低下し、海面レベルに比べ3千メートルでは約7割に低下することが知られている。生まれてから長い年月高地に暮らしてきた高齢者の健康状態は低地で暮らす我々と比べどのように異なるのか。包括的機能評価を行い、適応方法やその負の側面など様々な面から検討している。機能面だけでなく生活の質についても研究している。

水銀暴露のもたらす健康への影響

西ヌサ・トゥンガラ州にて流産及び無脳症、小頭症、水頭症、ヒルシュスプルング病などの先天性疾患が多数報告されており、小規模金採掘に伴う水銀汚染の影響が危惧されている。現地からの要請に基づき、Mataram大学、秋田大学、病院、小規模金採掘現場、妊産婦、その他住民と協力しながら慎重に研究を進めていく。

- たんけん動画
目の前の一人からはじまる研究:身近な環境に棲むレジオネラ属菌



- 京大先生シアター
ブータンにおける地域高齢者医療