情報とフィールド科学

出版社
京都大学学術出版会
創刊年
2015
言語
日本語
現代世界はたくさんの情報で溢れています。技術やツールの発達によって、これまで利用できなかった情報が利用できるようになり、多くの情報を短い時間に少ないコストでやり取りできるようになりました。また、情報の発信も容易になり、個人でも様々な形の情報を容易に発信できるようになりました。

このように、利用できる情報の種類や量が増えたことで、これまで私たちが知ることができなかった事柄も知ることができるようになりました。学問の世界、中でも生きた人間社会の歴史や現実を幅広く扱うフィールド科学と呼ばれる分野においては、これまでは誰かによって書かれたもの(文献資料)や統計資料、人々の生活の痕跡(例えば発掘出土品)や都市計画・建築、若干の画像・絵画資料に依存せざるを得なかった資料の範囲が急速に広がりました。しかし、それによって私たちを取り巻く様々な事柄がよりわかるようになったとは限りません。情報の種類や量が増えても、それを読み解くツールや方法論が十分に確立していないためです。現実世界には、数字や文字テキストのほかに、音声、図画、動画、形、景観などの様々な種類の情報があり、それらをどのように扱えばよいのかはまだ十分に確立していません。

このブックレット・シリーズが、そうした混沌と溢れる情報の中からフィールド科学にとって有用な情報を引き出す方法について考える手引きとなれば幸いです。

地域を比較し、その関係性を明らかにするという営為は、じつに多くの興味や好奇心、ときには意図しなかった驚きや発見をもたらしてくれます。ひとりでも多くの方が、本シリーズによってこうした営為の仲間入りをしてくださることを願ってやみません。