データベース | 京都大学 東南アジア地域研究研究所

地域情報学の構築

世界の諸地域の様子や動向をどのようにすれば捉えることができるのか。これは、人類が自分たちと異なる人々への関心を向けたときから取り組んできた課題であり、グローバル化が進む現代世界でますます重要性を増している課題です。この課題に対し、学術研究の分野では、統計資料や公文書、聞き取り調査や手記、新聞等のメディア情報や研究文献などを収集し、分析してきました。 

こうした分析方法の重要性は今後も変わりませんが、今日では、世界の新しい状況に対応し、従来の手法に加えて次の4つの工夫が必要になると考えられます。

  1. 国境を越えた動きを捉えて提示すること
  2. 図画・映像・建築物・音楽などの非文字資料を利用すること
  3. 多種多様かつ大量の情報の中から人々の暮らしや考え方を浮かび上がらせること
  4. 研究対象である現地社会の人々が利用できる形でデータベースを作成し、公開すること

研究者がそれぞれの研究関心に即してデータベースを作成し、これらの課題に取り組めるよう、当研究所では「Myデータベース」によるデータベースの作成支援、「地域研究資源共有化データベース」によるデータベースの統合検索、データの可視化・分析のためのシステムやツールを作成・公開しています。

資料・データベース一覧

作成支援、統合検索、可視化・分析のためのシステム・ツール

Myデータベース

研究成果をデータベースとして公開するためには、データベース管理、コンピュータシステム、ネットワークなどに関する専門技術や知識が必要であり、研究者個人がデータベースを公開することは容易ではありません。「Myデータベース」は、データベース構築に関わる管理法と運用法を見直して、研究者個人によるメタデータの定義・修正・検索機能の設定・検索画面の作成などを簡単に行えるようにしたデータベース構築支援サービスです。いくつかの条件を満たしたCSVファイルあるいはXMLファイルと画像等のコンテンツデータさえ用意できれば、Web上の「Myデータベース」の指示に従って操作するだけで、自分専用のデータベースを作成し公開できます。本研究所で公開されている多くのデータベースは「Myデータベース」を利用しています。

学術情報基盤に対する社会的な要請が増しており、「Myデータベース」では以下の2点について機能拡張を進めています。一つ目は、データのオープン化とデータの高度利活用です。この要請に応えるため、「Myデータベース」をRDFとSAPRQLを基礎としたデータベース管理システムとして再構築しました。新しい「Myデータベース」ではSPAQLエンドポイントを公開しており、これにより高度なデータ連係やWeb mashup等のアプリケーション構築が可能となっています。

二つ目は、研究データ管理機能です。そのために、研究データ管理用メタデータの定義と「Myデータベース」への実装およびユーザインタフェースの修正作業を進めています。これにより、論文に関わる基本データの公開や、外部資金申請時の研究データ管理計画書の作成に際して、「Myデータベース」をデータレポジトリとして利用することが可能となります。

本研究所における共同研究等の成果の公開を希望される場合はこちらからご相談ください。

MyデータベースAPI(仕様の準備中)

データベースのユーザインタフェースやアプリケーションは研究者ごとに異なるため修正等の頻度も高いですが、情報系要員の制約等から個別要求に応えることは不可能です。そこでMyデータベースではApplication Programming Interface(API)を提供し、研究者自身によるツール等開発の便宜を図っています。

地域研究資源共有化システム

インターネット上に分散しているデータベースの統合検索を目指した地域研究資源共有化データベースです(現在は、本研究所内のデータベースのみを公開しています)。

地域研究資源共有化データベース(多言語対応版)

地域研究のデータは、英語・タイ語・ロシア語などさまざまな言語で記述されています。そのため、検索語が日本語であれば英語のデータベースにはヒットしないという問題があります。「地域研究資源共有化データベース(多言語対応版)」は、言語グリッド(http://langrid.org/jp/)のサービスを利用して「地域研究資源共有化システム」に翻訳機能を加えた実験システムです。日本語で英語やタイ語のデータベースを検索し、検索結果を日本語や英語に翻訳して表示することができます。

地域情報学基礎データベース

広く人文社会学研究を支援する基礎データとして、地域情報学に関わる共同研究を中心に開発したデータベースです。日本の歴史地名に関するデータベース(歴史地名データベース)と暦間の日付変換ツール(HuTime)は、研究所外のサイトより公開されています。

オントロジーツール

多様な研究資料を語彙に注目して繋ぐためには、語彙を意味によってあらかじめ分類・配列・整理しておく必要があります。このように構造化された語彙辞書をシソーラスと呼びます。「オントロジーツール」は、地域情報学に関わる共同研究の成果であり、シソーラス等のさまざまなデータをトピックマップによりデータベース化したものです。シソーラスデータである日本図書館協会および国立国会図書館の件名標目表、農林水産関連分野の語彙集(AGROVOC)に加えて、世界各地の民族・社会・文化に関する文献語彙集(HRAF)、さらに複雑なマンガの書誌・画像・動画・テキストをFRBRで統一的に記述した漫画『花より男子』各言語版のトピックマップなどがあります。このうち、件名標目表とAGROVOCは、研究所外のサイトより公開されています。