目次

所長挨拶

 2022年4月から東南アジア地域研究研究所所長を拝命しました三重野文晴です。私の専門分野は経済発展論と金融論で、主にタイ、ミャンマー、ラオスを対象地域として、企業や金融機関など経済システムの特性を研究しています。東南アジア等の地域に焦点をあてた実証的研究には、様々な学問ディスプリンが追求する物事の統合的理解の枠組みと、地域研究が本領とする「そこで起こっていること」の実態理解、この両輪が不可欠です。

 本研究所の特徴の一つは、研究スタッフの研究分野の多様さと、それによる学際融合型の地域研究を志向していることにあります。人文社会科学から生命科学を含む自然科学まで様々な分野を専門とする研究者が集い、世界中から常時7〜8名が参加する海外客員教員とともに東南アジアなど対象地域の諸課題の解明に、横断的な協力によって取り組んでいます。本研究所は東南アジア研究、グローバルな地域研究、地域研究の情報学との融合を主な柱としながら、多様なディスプリンを背景とする研究者が協力し、フィールド調査などによって現場に迫り、「東南アジア等地域で起こっていること、起きてきたこと」の解明に強みをもっていると自負しています。この強みを新しい時代にさらに充実させていきたいと思っております。

 2020年代に入り、世界とアジアは大きな変調を経験しています。新型コロナウイルス感染症の世界的流行は、人類の生活環境を大きく変えてしまいましたし、2010年代までは当然のことと信じられていた国際協調や自由貿易が、体制対立と統制に急速にとってかわられました。一方で、社会のデジタル化が例外なく加速し、人々の生活のみならず、政治、経済の体制までも変容させつつあります。そして、これらが相互に影響し増幅させる関係にあることは明らかです。また、そこには2010年代までの技術の進歩、市場経済化、社会変容がもたらした帰結とそれへの反動の双方の側面が関わりあっていると考えられます。

 こうした変調は、東南アジア地域研究に新しい課題を登場させるとともに、研究アプローチの変革を迫っています。一つにはフィールド調査や地域との協働がますます重要になっているにもかかわらず、その実施がこれまでより容易でなくなっているからでもあり、また一つには、東南アジア地域研究に大量情報の利用やサイバー空間での事象の理解の重要性が高まっているからでもあります。われわれは、こうした環境の変化がもたらす新しいチャレンジに臆することなく取り組んで参ります。本研究所の活動に、ご協力とご支援を賜りますようお願い申し上げます。

京都大学東南アジア地域研究研究所
所長 三重野 文晴

沿革

 現在の東南アジア地域研究研究所は、2017年1月に東南アジア研究所と地域研究統合情報センターが統合して発足しました。東南アジア研究所は、東南アジアの総合的研究を担う研究部局として1963年に京都大学に学内組織として設置され、65年に官制となった東南アジア研究センターにはじまります。地域研究統合情報センターは、国立民族学博物館の地域研究企画交流センターと東南アジア研究センターの両者を淵源として2006年に京都大学の研究部局として設置され、そのミッションを地域情報資源の統合と相関型地域研究の推進においてきました。このような60年近くにおよぶ活動の伝統をもつ本研究所は、東南アジア研究、グローバルな地域研究、地域研究の情報学との融合を主な柱としています。

 2009年度には二つの旧組織がそれぞれ文部科学省の共同利用・共同研究拠点「東南アジア研究の国際共同研究拠点」と「地域情報資源の共有化と相関型地域研究の推進拠点」に認定され、本研究所の発足を挟んで、東南アジア研究と地域研究の研究コミュニティに広く研究資源を提供するとともに、公募研究や研究集会の実施などによって研究ネットワークの充実に努めて参りました。2022年度からはこれらを統合・継承して「グローバル共生に向けた東南アジア地域研究の国際共同研究拠点」として新たに認定をうけ、活動をはじめています。

 本研究所は、設立当初から世界の東南アジア地域研究の拠点となるべく活動を展開してきました。フェロー制度のもと世界中から常時7〜8名の海外客員教員が研究所に参加しています。2013年にはアジアで東南アジア研究を担う11機関に呼びかけて「アジアにおける東南アジア研究コンソーシアム」(SEASIA)を発足させ、基幹組織としてその展開に努めています。

研究所のめざすもの

  東南アジア地域研究研究所では、東南アジアをはじめとする諸地域の自然と社会、その歴史的展開の理解を、より広く現代世界のさまざまな課題に立ち向かう指針へと連結させていく新しい地域研究をめざしています。その目的を達するため、人文社会科学系、自然科学系の多様な学問領域を架橋し、現地に分け入るフィールド調査に基づきつつ、学術界を超えてローカル・アクターと協働しています。そして環境劣化、感染症や災害、民主化の停滞、 経済格差や民族と宗教をめぐる抗争をはじめ、さまざまな問題に取り組んでいます。現在、これまで蓄積した国内外のネットワークを活かしつつ、多くの若手を含む多国籍の研究者が集う研究所として、グローバルな共生社会に寄与するべく努めています。

東南アジア地域研究研究所

超学際共同研究の推進

  • 国家を超えて課題に取り組むコミュニティを形成
  • 地域の多様性に即した生命中心の科学へ転換
  • 地球環境と調和した社会イノベーションの創出
  • 世界諸地域の情報資源の共有化と利活用

社会貢献

日本と世界が直面する課題に取り組むため、研究成果を日本社会と現地社会に広く還元する。社会との対話から生まれたアイディアを研究活動に反映させ、双方向交流を深めて知識を普及し、情報技術を活用し、英語と現地語で現場の当事者と専門家を繋ぐさまざまな活動を行なう。

教育

地域の課題に取り組む学際・国際的な研究や議論の場を内外の若手研究者に提供し、ポスドク研究者の招へいや、アジア・アフリカ地域研究研究科はじめ、学内の複数の研究科における大学院教育に携わり、英語による学部教育にも協力する。

第43回 東南アジアセミナー(ベトナム)

研究組織

組織図

研究部門

京都大学東南アジア地域研究研究所の研究活動を中核となって支えているのは、相関地域、政治経済共生、社会共生、環境共生、グローバル生存基盤の各研究部門です。各研究部門は、それぞれ、主として自然科学、人文学、社会科学に立脚した研究を推進しています。

– 相関地域研究部門

相関地域研究部門では、地域を横断するかたちで情報資源の開拓と先駆的な研究活動を推進することで、地域研究の研究アプローチを発展させることをめざす。基礎研究だけでなく、社会との連携および実践型の調査研究を多様なかたちで推進し、公共の領域に資する学術活動としての地域研究を展開させることもねらいとしている。

– 政治経済共生研究部門

政治経済共生研究部門では、東南アジア地域とその周辺地域における政治経済のダイナミックな変容を分析し、比較検討するためのフレームワークを構築する。これらの変容を理解し、地域のステークホルダーと継続的に連携しながら、個々の地域に即した政治経済発展のための戦略に資する研究を推進する。

– 社会共生研究部門

社会共生研究部門では、変化する文化・社会・生態の相互関係に着目することによって、東南アジアにおける複数の文化の共生について研究する。社会的・宗教的・言語的変容、文化や知の生産をめぐる政治、あるいは家族、ジェンダー、セクシュアリティといった問題を、現代と歴史の双方の文脈において追究する。このような研究は、ディシプリンと地理的な境界に基づいた既存の東南アジア研究を批判的に検討する視点に立つことを通じて可能となる。

– 環境共生研究部門

環境共生研究部門では、自然科学、医学、情報学にまたがる学際的なアプローチを通して、地圏、生物圏、および人間圏に影響を与えるさまざまな問題を研究する。地球温暖化、環境劣化、生物多様性の減少、自然資源の過剰搾取、蔓延する感染症等といった問題は、特に急速な経済成長や社会変革を経験しつつある熱帯地域において深刻である。人間社会の長期的な持続可能性と人間と自然の共存のための知識や理論を構築することを目的とする。

– グローバル生存基盤研究部門

グローバル生存基盤研究部門では、21世紀に起こっている地球規模の変容を批判的な視点で分析する。経済、政治、そして社会文化における喫緊の課題を研究するなかで、社会科学と自然科学という現代の学問分野の境界を超えて、人類社会と自然環境の共存への道筋を見出す。

その他、学術ネットワークを強化するために、海外連絡事務所(バンコク、ジャカルタ)、国内外の客員研究部門、地域研究企画推進室、持続型生存基盤研究推進室、実践型地域研究推進室を設置しています。また大学院教育を組織的に担うためにアジア・アフリカ地域研究研究科・東南アジア地域研究専攻において総合地域論講座を運営しています。これらの研究・人材育成活動を円滑に推進するために研究支援室を設置しています。

海外連絡事務所

海外連絡事務所は、タイのバンコクとインドネシアのジャカルタの2カ所に設置されています。バンコク連絡事務所は1963年に設置され、現在はスクンビット地区にあります。ジャカルタ連絡事務所は1970年に南ジャカルタのクバヨラン・バル地区に設置され、現在にいたります。
海外連絡事務所は、タイおよびインドネシアだけでなく、東南アジアの大陸部と島嶼部の全体をカバーする研究活動の拠点です。本研究所の所員のほか、学内他部局や他大学の研究者が駐在員として常駐し、現地語図書、統計、公文書、地図などを毎年継続して収集しています。そのほか、現地の研究者や研究機関と共同研究を推進しています。本研究所が2010年に共同利用・共同研究拠点としての活動を開始してからは、駐在者の一部を公募で決定しています。
2014年6月に京都大学がバンコクに京都大学ASEAN拠点を設置して以降は、バンコク連絡事務所も同拠点と連携しながら、東南アジアにおける学術研究ネットワークのハブとして、よりいっそうの発展をめざして活動しています。

バンコク連絡事務所

    バンコク連絡事務所は1963年に開設されました。それ以来、東南アジア地域研究研究所や関連部局・機関の教員が交代で駐在し、現地の研究機関や研究者との交流の拠点として活発な活動を展開してきました。開設当初はまさに現地調査のベースキャンプとしての役割やタイの研究教育機関や研究者との交流の拠点として重視されましたが、近年は、東南アジア大陸部の全体を視野に入れた交流拠点として、ますます広範な活動を展開しています。
    現在の連絡事務所の役割は、情報収集拠点、情報発信拠点、現地調査のベースキャンプの3つに大きく分けることができます。
    連絡事務所の最も重要な機能は情報収集です。現地語図書や現地国の統計資料・地図類は、主として連絡事務所を経由して購入しています。また、National Research Council of Thailandやチュラロンコン大学、タマサート大学、カセサート大学、チェンマイ大学、コンケン大学などのタイ国内の現地研究機関の現地研究者や学生との日常的な接触を通じて、その学術的動向や現地社会のニーズに関する情報を継続的に収集しています。
    情報発信拠点としての機能強化は、近年、特に強く認識されるようになりました。駐在者はそれぞれ、ワークショップやレセプションを開催し、幅広い分野の研究者との学術交流を深めています。また、現地機関や研究者からのさまざまな問い合わせの窓口となっています。さらに最近は、タイおよび周辺国における、京都大学の研究教育活動の全体をサポートする情報発信拠点としても役割を果たしています。このような活動は、タイにおける京都大学と東南アジア地域研究研究所のプレゼンスを高めるうえで大きく貢献しています。
    さらに、ベースキャンプとしての機能も未だ重要です。連絡事務所は、調査資料や機材の一時保管や、分析作業をおこなう場所などとして、また各種のロジスティックの手配から事故の際の対応など、円滑にフィールドワークを実施するための多様なサポートを必要に応じて提供しています。駐在者の多くは、連絡事務所をベースにタイを中心とした現地の研究者と緊密に連絡をとり、共同研究を立ち上げ、推進しています。

所在地

住所: 12CD, GP Grande Tower, 55, Soi 23, Sukhumvit Rd, Klongtoey Nua,
Wattana, Bangkok, 10110 THAILAND

電話: +010-66-2-664-3619
Fax: +010-66-2-664-3618

アクセス

スワンナプーム(Suvarnabhumi)国際空港より

国際線と一部国内線からバンコク連絡事務所へ

【リムジン】:空港カウンターで申し込み案内人の指示に従う。
【メータータクシー】:到着出口(A〜Cのいずれかの出口)からエスカレータで下の階へ行き、空港入り口を出てすぐに前にあるメータータクシーのブースで行き先を告げ乗車。

料金

【リムジン】:メータータクシーの約3倍。
【メータータクシー】:タクシー料金約250バーツに加えて空港のスタンド利用50バーツとルートにより高速料金約65バーツ。

所要時間:約1時間


[スワナプーム空港での注意]

到着出口について

 出口A〜Cがあるが、いずれも極めて狭く大混雑している。出口は空港会社で指定されているが、荷物引き取り箇所が指定出口とはかなり離れた箇所になることもあり、他の出口から出ることも可能。
待ち合わせの場合には、事前に出口A〜Cのいずれか、また出口を出てから左側か右側かを打ち合わせておく必要。タクシー利用の場合には、右側へ。

国内線乗り継ぎについて

 航空券の発券で予め予告されるが、スワナプーム空港からドンムアン空港までの乗り継ぎ時間は3時間30分以上必要。30分毎にシャットルバス運行。入国手続きが行き先(バンコク、チェンライ、チェンマイ、クラビ、プーケットなど)及び搭乗便で異なる。また荷物引き取りも同じ。航空券発行の旅行会社で確認し、チェックイン時、到着前にアナウンスされる機内案内に注意のこと。

該当航空会社タイ国際航空、Nok Air, One-Two-Go

ジャカルタ連絡事務所

    ジャカルタ連絡事務所は、1970年10月に、ジャカルタのクバヨラン・バルのラジャサ通りに非公式に開設され、1973年に運営経費が国の予算として認められて正式な開設の運びとなりました。その後、一度ジャカルタのメンテン地区で開設されたことを除けば、一貫してクバヨラン・バル地区内に事務所を構えてきました。
    東南アジア研究センター(当時)では、1983年度に「東南アジア諸国現代政治・社会動向分析のための地域資料緊急整備5カ年計画」が発足し、東南アジア諸語の資料収集を開始しました。ジャカルタ連絡事務所は、この計画の一環として、インドネシア語やジャワ語などの現地の言語で書かれた資料およびオランダ語の資料、さらに統計類の収集を開始しました。図書資料を中心とした情報収集は、今日でも、ジャカルタ連絡事務所の重要な業務となっています。

    ジャカルタ連絡事務所は、開設以来、東南アジア地域研究研究所とインドネシア各地の大学等研究機関との共同研究の円滑化を図ってきました。それは、1968年より始まっていた、インドネシア科学院(LIPI)傘下のLEKNAS(社会経済研究所)と共同で実施されていた南スマトラ州経済調査を皮切りとしました。東南アジア地域研究研究所は、その後、ハサヌディン大学、ボゴール農業大学、インドネシア国立国土地理調査機構、パジャジャラン大学、アンダラス大学、チュンダラワシ大学、国立イスラーム大学、スルタン・アグン・ティルタ大学、リアウ大学、ゴロンタロ大学などと研究交流協定を結び、また科研プロジェクトなどでその他の研究機関とも共同研究を実施しています。さらに、バンドゥン工業大学やガジャマダ大学などとの間の大学間協定締結にも東南アジア地域研究研究所は重要な役割を演じました。これらの活動の円滑な推進のため、ジャカルタ連絡事務所が大いに活用されています。

    ジャカルタ連絡事務所はまた、東南アジア地域研究研究所のみならず、京都大学の他の部局や国内の他の研究機関のインドネシアにおける研究や教育の支援もおこなっています。具体的には、これら研究機関が調査許可を取得するための支援、インドネシアから日本への留学生や研究者の派遣に対する情報提供、インドネシアの教育機関による日本側との共同研究への助言などです。また、東南アジア地域研究研究所が進める慶應義塾大学およびアジア諸国との遠隔講義においてもジャカルタ連絡事務所はその拠点となっています。さらに、ジャカルタ連絡事務所は、京都大学がインドネシア京大同窓会(HAKU)と共同で毎年各地で開催する京都大学東南アジアフォーラムをサポートしてきました。近年は、インドネシアにとどまらず、東南アジア島嶼部の全体を視野に入れた研究交流を推進し、各地との連携を強化する拠点としても役割を果たしています。

所在地

Jl. Kartanegara No. 38, Kebayoran Baru, Jakarta Selatan, Jakarta 12180, INDONESIA
電話 +62-21-7262619
Fax +62-21-7248584

アクセス

スカルノ・ハッタ空港より

【タクシー利用:はじめての方】

 空港建物を出る前に、タクシーカウンターで行き先を告げて、チケットを購入します。この場合、Golden Bird, Silver BirdかBlue Birdを指定します。外に出て、それぞれののスタンドに行けば、係の人がチケットを切ってくれます。価格と車両、安全度はGolden, Silver, Blueの順です。事務所までの道が難しいので、運転手には「Kebayoran BaruのJalan Senopati」と言います。「Pacific Place(ショッピングモール)の方」というのもよいです。Jalan Senopatiに入ると、右手に大きな鳥の彫像が2羽あるケーキ屋があります。その次の三叉路を右折しJalan Kartanegaraに入り1つ目の曲がり角(200m位)を越えたところの左手にあります(角から2軒目)。

【タクシー利用:何度も訪れている方】

 チケットを買わずに、空港建物の外に出て、タクシースタンドに並ぶ。3回ほど、高速道路の料金所を通過します。運転手によっては立て替えておいてくれるが、その都度、支払う方が後でもめなくてよいです。Golden Birdタクシーは、安全だが台数が少ないため、相当、待たされることがあります。その場合は、上手に値切って、白タクを使うのも一考に値します。

【バス利用】

 白い車体に青字で「DAMRI」と書かれているものを探します。「BLOK M」行きのものに乗る。Blok Mでは、パサラヤ前の地下ターミナルに着くので、初めてでない場合には、その直前のクバヨラン・バルのバス停で降車して、バジャイ(輪タク)に乗り継ぎます。初めての場合は、ターミナルまで乗車して、地上に上がり、ホテル・アンバラHotel Ambharaの脇に停まっているバジャイを利用します。