本研究所では、設立当初から研究成果の公表に重点を置き、和・英による学術雑誌および研究叢書の出版を柱として出版活動に取り組んできました。その種類は多岐にわたり、時流に即した多彩な出版をめざしています。
教員の出版物
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カンボジアは変わったのか「体制移行」の長期観察 1993〜2023
小林 知 編著詳細
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Emplacing East TimorRegime Change and Knowledge Production, 1860–2010
Kisho Tsuchiya詳細
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統治理念と暴力独立インドネシアの国家と社会
今村祥子 著詳細
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Rama XThe Thai Monarchy under King Vajiralongkorn
Pavin Chachavalpongpun (ed.)詳細
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四国山地から世界をみるゾミアの地球環境学
内藤直樹・石川登 編詳細
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現代ペルーの政治危機揺れる民主主義と構造問題
村上勇介 編詳細
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地域学地域を可視化し、地域を創る
宮町良広・田原裕子・小林知・井口梓・小長谷有紀 編詳細
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情報・通信・メディアの歴史を考える《いまを知る、現代を考える 山川歴史講座》
貴志俊彦・石橋悠人・石井香江 編詳細
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Two Centuries of Agrarian, Economic, and Ecological Shifts in the North Coast of Java1812–2012
Kosuke Mizuno, Pujo Semedi, Gerben Nooteboom (eds.)詳細
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中央ユーラシアの女性・結婚・家庭歴史から現在をみる
磯貝真澄・帯谷知可 編詳細
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現代フィリピンの地殻変動新自由主義の深化・政治制度の近代化・親密性の歪み
原民樹・西尾善太・白石奈津子・日下渉 編著詳細
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Local Governance of Peatland Restoration in Riau, IndonesiaA Transdisciplinary Analysis
Masaaki Okamoto, Takamasa Osawa, Wahyu Prasetyawan, Akhwan Binawan (eds)詳細
研究叢書
本研究所の刊行する叢書シリーズは下記の通りです。創刊当初は所員の研究成果公開の場でしたが、2000年以降、広く一般からの公募も受け付けています。
Kyoto CSEAS Series on Philippine Studies(英文)
本シリーズは、フィリピンに関する学際的、複合的な観点からの研究を促進し、その成果を刊行することを目的に2019年に創刊されました。京都大学学術出版会とフィリピンのアテネオ・デ・マニラ大学出版会との共同で出版しています。本シリーズの編集者は、日本およびフィリピンに拠点を置く研究者で構成されており、執筆者にはフィリピンの事例研究を通しどのように東南アジア地域研究をより幅広く、充実したものとすることができるか、明確に論じることが求められます。シリーズ詳細
Kyoto CSEAS Series on Asian Studies(英文)
本シリーズは、欧米中心の英文出版に対して、質・量ともにレベルアップしているアジアからの地域研究の成果を世界にむけ発信していくニーズの高まりを受け、2009年に創刊されました。京都大学学術出版会とシンガポール国立大学出版会との共同で出版しています。
アジアのみならず欧米の読者を対象としており、販路の広いものですが、それだけに広い読者層を意識し、アジア研究に一石を投じるような、問題意識が鮮明でかつ緻密な議論を展開する学術書を目指しています。査読はシンガポール国立大学出版会と東南アジア研究所出版委員会との協議の上、専門分野で活躍する外部研究者数名に依頼して行っています。査読・改訂等が終了後、制作はシンガポールで行います。シリーズ詳細
Kyoto Area Studies on Asia(英文)
和文叢書と姉妹版の英文叢書として、1999年に創刊されたもので、京都大学学術出版会とTrans Pacific Pressとの共同で出版しています。和文叢書同様、創刊当初は主に所員の発表の場でしたが、2000年からは国外も含め、外部からの投稿を受け付けるようになりました。創刊の趣旨は和文叢書と同様、これまでの蓄積のうえに地域研究のあるべき姿を求め、かつ日本やアジアからの研究発信を盛んにすべく創設されたものです。現在、東南アジアはグローバル化の渦中にありますが、今こそ個々の地域に根差した地域理解、そして地域に即した世界認識が必要とされています。本叢書は、その課題に積極的に取り組むために、オリジナルな調査・資料に基づく、独創的な着想と綿密な分析により、地域研究に貢献する書籍の出版を目指しています。本叢書は、東南アジア研究所出版委員会が国内外の専門家三名に依頼する厳正な査読を経て、出版を認めるものです。シリーズ詳細
地域研究叢書(和文)
1995年、東南アジア研究センター(当時)と京都大学学術出版会との間で覚書が交わされ、『地域研究叢書』が誕生しました。この叢書は、センター創立30年の節目に、これまでの蓄積のうえに地域研究のあるべき姿を求めていくうえで重要な発信の場として創設されたものです。現在、東南アジアはグローバル化の渦中にありますが、今こそ個々の地域に根差した地域理解、そして地域に即した世界認識が必要とされています。本叢書は、その課題に積極的に取り組むために、オリジナルな調査・資料に基づく、綿密な分析と独創的な着想による、地域研究への貢献となる書籍の出版を目指しています。おかげさまで、本叢書からは多くの受賞作が生まれていることも、学術的なレベルの証左となっています。
創刊当初は主に所員の発表の場でしたが、2000年からは外部からの投稿を受け付けるようになりました。本叢書は、東南アジア研究所出版委員会が専門家三名による厳正な査読を経て、出版を認めるものです。シリーズ詳細
Monographs of the Center for Southeast Asian Studies(英文)
1966年に創刊された東南アジア研究叢書と足並みをそろえ、東南アジア研究センター(当時)から出版された英文叢書です。第7冊からは、ハワイ大学出版会に出版を委託し、現在21冊を数えます。東南アジア研究所出版委員会が外部者に委託した査読の後に、ハワイ大学出版会独自の査読があります。学術的に先進性が見いだせるのみならず、広い読者を望めるものとするための出版社としての査読となります。アメリカの大学出版会として広い販路を持ちますが、内容にはかなり立ち入ったエディティングがなされます。シリーズ詳細
アジア環太平洋研究叢書(和文)
ベルリンの壁の崩壊から30年になろうとしている今日、世界全体としても、またその様々な地域においても、20世紀後半に形成された秩序や状態は激しく動揺している。世界と地域、国家と社会、いずれのレベルでも縦、横に入った亀裂が深まり、既存の秩序やあり方が融解する現象が共時的かつ共振的に起きている。しかもそれは、政治、経済、社会の位相に跨って進行している。
今後の世界秩序の具体的な方向性やあり方について何らかの確信に基づいて多くを語ることが困難な状況において、我々は学問的探究を進め、21世紀世界の新秩序を構想していかなければならない。構想にむけては、世界レベルで覇権をめぐって争う能力を持つ大国の関係ならびにそれ以外の国々の発展と国際舞台での行動のあり方という二つの次元が複雑に絡み合って織り成される実践現場での多様な日常的営為を、注意深く、いわば鳥の目・人の目・虫の目をもって多角的に観察する必要があろう。
そして、そこで紡ぎ出される制度──ある社会の成員によって、ある目的を達成するために正統と認められている了解・合意事項、行動定型、規範・ルール、慣習──を見出し、あるいは制度構築のための環境整備に貢献し、それらを丁寧に繋ぎ合わせて地域大、世界大の秩序形成へと発展、展開させなければならないだろう。それは、環大西洋世界で発展した既知のパラダイムを代替する「アジア環太平洋パラダイム」となるのではなかろうか。
本シリーズは、以上のような展望の下に展開する学問的営為の軌跡を記し、21世紀世界の新秩序を構想することに少しでも寄与することを目指すものである。シリーズ詳細
学術誌
『東南アジア研究』(和文学術誌)
(7月・1月刊行)
1963年、日・英による季刊学術誌として創刊。2012年、英文誌SoutheastAsian Studiesの創刊を受け、年2回刊行の和文誌に移行しました。創刊以来、レフェリー制度のもと、自然科学、社会科学、人文学にわたる多様な分野の東南アジア地域に関する論考を掲載してきました。本誌は、現地で収集したオリジナルの史資料に基づいた研究とともに、地域間比較ならびに俯瞰的・総合的研究を重視し、特に自然科学分野や生態学的視点を包摂する点に、他誌にない独自性があります。その特色は、単独の論考だけでなく、テーマ特集号にも如実に現れています。今後もそれぞれの地域社会に根ざした最先端の問題提起を積極的に発信してゆきたいと考えています。本誌ウェブサイトでは、最新号も含めたすべての論考を公開しています。(Scopus 収録)
Southeast Asian Studies(英文学術誌)
https://englishkyoto-seas.org/
(4月・8月・12月刊行)
2012年4月創刊。『東南アジア研究』の姉妹誌として、東南アジア地域研究に関する最新の優れた研究成果を公表し、国内外の研究者の対話と共働の場となることを目指して刊行されました。東南アジア地域内の事象や話題について広く深く掘り下げた議論を通して地域の内在的理解を深める一方で、俯瞰的・総合的な研究を通した東南アジアの全体像の解明を目指しています。人文学・社会科学・自然科学の各分野からの多様なアプローチによる論考を掲載し、論文、書評などによる通常号以外にも、年に1号程度、特集号の刊行や小特集の掲載を行っています。本誌ウェブサイトでは、最新号も含めたすべての論考を公開しています。(Scopus, Emerging Sources Citation Index 収録)
ブックトーク・オン・アジア
Book Talk on Asia
本研究所では、2021年1月からアジアに関する最新書籍を紹介する音声プログラム「ブックトーク・オン・アジア」の配信を開始しました。毎回ゲストを迎え、書籍の内容や執筆の背景などについてお話をうかがっています(聞き手:中西嘉宏准教授)。
https://soundcloud.com/user-153026370-46049678
CSEASクラシックス
本研究所では、旧東南アジア研究センターの所員による研究成果のうち、無料公開が許された学術書や論文を掲載するウェブサイトを2020年に立ち上げました。現在は、2020年6月に解散した創文社による「東南アジア研究叢書」から9冊、 Discussion Paperから19冊を公開中です。1970~90年代に発表されたこれらの研究をぜひこの機会にダウンロードして、あらためて手に取ってみてください。
ワーキングペーパー
Kyoto Working Papers on Area Studies
大学院アジア・アフリカ地域研究研究科、アフリカ地域研究資料センター、ならびに本研究所が共同で出版するシリーズ。上記3部局に所属する教員、若手研究者、大学院生のオリジナルな研究成果を発表する場となっています。
https://edit.cseas.kyoto-u.ac.jp/ja/kyoto-working-papers-on-area-studies/
多言語オンラインジャーナル
Kyoto Review of Southeast Asia
Kyoto Review of Southeast Asiaは、東南アジアにおける知のコミュニティの交流促進をめざして創刊したオンライン・ジャーナルです。重要な出版物や議論、構想についての情報を、タイムリーに誰でもアクセス可能な誌面を通じて、東南アジア域内で共有することをめざしています。また、大学ベースの知と、NGO・ジャーナリズム・文化の担い手らをつなぎ、相互理解や様々な取組を促進していきたいと考えています。
https://kyotoreview.org/
「コロナ・クロニクル──現場の声」
Corona Chronicles: Voices from the Field
2020年3月11日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行がWHOによって宣言され、これまでに多数の人々が感染し、死亡したと確認されています。現在もなお多くの人々の命と健康が失われている状況のなか、本研究所もこの前例のない出来事がもたらす帰結を注意深く観察しています。
2020年4月に本研究所は「Corona Chronicles: Voices from the Field(コロナ・クロニクル――現場の声)」というオンライン・プラットフォームを立ち上げ、東南アジア地域を中心に、南米や中央アジアも含め、現地、現場のさまざまな視点や声を集めて発信していくことにしました。
具体的には、COVID-19がどのように個人、コミュニティ、そして国家に影響を与え、国家やコミュニティの反応が人々にどういった影響をおよぼしているかについて、各国・地域からの最新の知見を集め発信しています。書き手は現地の研究者、作家や映画監督、ジャーナリスト、さらに医療・保健の専門家などです。国内政治事情により匿名で掲載される記事もあります。多様な書き手による解説・分析記事、観察は、読み手に独自の視点と洞察を提供しており、記事を読みくらべることで、異なった地域の比較も可能となっています。このプラットフォームを通じて、地域研究の最前線を提供するとともに、新しい地域研究の芽を育てたいと考えます。
https://covid-19chronicles.cseas.kyoto-u.ac.jp/
ディスカッションペーパー
CIRAS Discussion Paper Series
CIRAS Discussion Paper Series は、前身であるCIAS Discussion Paper Seriesを引き継ぎ、CIRASセンターによる共同研究の成果を迅速に公開することを狙いとしています。論文のみならず、調査報告、資料、文献解題、ワークショップやシンポジウムの記録など多彩な研究成果を随時PDFデータによりオンライン上で公開してきました。ロヒンギャ難民問題などのように即応性が求められる課題を扱った研究集会や国際シンポジウムの記録、「カラムの時代」シリーズのように資料性の高い基礎研究、映画や音楽などを取り上げて地域研究の新領域の開拓をめざす研究の成果公開に活用されています。
https://ciras.cseas.kyoto-u.ac.jp/research-outcome/publications/
CIAS Discussion Paper Series No. 1-66(地域研究統合情報センター刊行)
http://www.cias.kyoto-u.ac.jp/publish/5.html
叢書(終了したシリーズ)
環太平洋研究叢書(和文)
格差拡大を背景にした民主主義の動揺が世界的に広がる一方,クリミア併合や「イスラム国」,南シナ海問題など,第二次大戦以降世界が経験しなかった力による版図の変更さえもが進行している。平和と安定を再構築するための新しい途はどこにあるのか? 旧体制や「伝統」を乗り越えようと格闘する,非欧米地域の社会の中に可能性を見る。シリーズ詳細
東南アジア研究叢書
東南アジア研究センター(当時)の草創期に活躍され、官制化を目前にして急逝された棚瀬襄爾博士の『他界観念の原始形態』が、1966年「東南アジア研究叢書」の第1冊として刊行されました。その後、第4冊からは出版を創文社に委託し、24冊にいたりました。その内訳は、所員ならびに関係者による単著が14冊、論文集が8巻冊、翻訳書が2冊ですが、論文集には、10周年、15周年、20周年の節目に所員の代表作を集めて編まれたものもあり、その1冊1冊が東南アジア研究の新しい地平を切り開いてきたといえるかもしれません。1991年以降、刊行されていません。シリーズ詳細
地域研究のフロンティア
シリーズ詳細
Frontiers of Area Studies
地域研究統合情報センター(CIAS)では、2010年度から「地域研究のフロンティア(Frontiers of Area Studies)」というシリーズタイトルを冠した叢書の刊行をスタートしました。
このシリーズは、地域研の共同利用・共同研究拠点活動の一環として、国内外の優れた研究成果を募集し、学外有識者を含む編集委員会による審査、および査読を経て、京都大学学術出版会から商業出版として刊行するものです。とくに、地域間の比較や関係性に着目した研究、地域研究にかかわる情報の共有化や地域情報学など、新しい地域研究の開拓を視野にいれた意欲的な研究成果を刊行し、地域研究の「フロンティア」を模索する国際発信チャネルとなることをめざします。シリーズ詳細
情報とフィールド科学
現代世界はたくさんの情報で溢れています。技術やツールの発達によって、これまで利用できなかった情報が利用できるようになり、多くの情報を短い時間に少ないコストでやり取りできるようになりました。また、情報の発信も容易になり、個人でも様々な形の情報を容易に発信できるようになりました。
このように、利用できる情報の種類や量が増えたことで、これまで私たちが知ることができなかった事柄も知ることができるようになりました。学問の世界、中でも生きた人間社会の歴史や現実を幅広く扱うフィールド科学と呼ばれる分野においては、これまでは誰かによって書かれたもの(文献資料)や統計資料、人々の生活の痕跡(例えば発掘出土品)や都市計画・建築、若干の画像・絵画資料に依存せざるを得なかった資料の範囲が急速に広がりました。しかし、それによって私たちを取り巻く様々な事柄がよりわかるようになったとは限りません。情報の種類や量が増えても、それを読み解くツールや方法論が十分に確立していないためです。現実世界には、数字や文字テキストのほかに、音声、図画、動画、形、景観などの様々な種類の情報があり、それらをどのように扱えばよいのかはまだ十分に確立していません。
このブックレット・シリーズが、そうした混沌と溢れる情報の中からフィールド科学にとって有用な情報を引き出す方法について考える手引きとなれば幸いです。
地域を比較し、その関係性を明らかにするという営為は、じつに多くの興味や好奇心、ときには意図しなかった驚きや発見をもたらしてくれます。ひとりでも多くの方が、本シリーズによってこうした営為の仲間入りをしてくださることを願ってやみません。シリーズ詳細
災害対応の地域研究
「災害対応の地域研究」プロジェクトは、地域研究、防災、人道支援、情報学などの分野の異なる専門家が共同で研究を行うことにより、「メディアと情報」「支援と復興」「社会の再編」「記憶と忘却」の4つの分野で災害対応に取り組む研究プロジェクトです。
研究対象地域を時間と空間の広がりの中に置いて立体的に捉える地域研究の方法を取り入れることで、被災後だけ、そして被災地だけを見るのとは違う防災や人道支援のあり方を提示します。また、社会が潜在的に抱える課題がはっきりと現れる契機である災害への対応過程の検討により、地域社会に対する理解がいっそう深まります。
インドネシアのスマトラ島では、2004年12月にスマトラ沖地震津波(インド洋津波)が発生し、約16万5000人(インド洋沿岸諸国で約22万人)の死者・行方不明者が出る大きな被害を受けました。また、スマトラ(インドネシア)ではその後も毎年のように地震や津波などの災害が起こっています。この研究プロジェクトでは、地域社会の目を通じてスマトラの災害対応を捉えることにより、スマトラの地域社会が災害にどのように対応してきたかを検討し、それをもとに他の地域にも通用する「防災スマトラ・モデル」の構築を試みます。
2011年3月11日に発生した東日本大震災は、地震と津波の被害が広域に及んでいる点でスマトラ沖地震津波と共通する点が多くあります。東日本大震災の復興過程をスマトラの経験に照らして検討することにより、スマトラの災害対応への理解を深めるとともに、スマトラの経験を踏まえて日本の復興過程に対して必要な提案を行っていきます。
このプロジェクトは、科学研究費補助金・基盤(A)「災害対応の地域研究の創出──「防災スマトラ・モデル」の構築とその実践的活用」(代表:山本博之)を中心に、京都大学地域研究統合情報センターの「災害対応の地域研究」プロジェクトおよび関連する他の研究プロジェクトとの連携により進められています。シリーズ詳細
相関地域研究
京都大学地域研究統合情報センターは、地域研究と情報学との学際的融合をはかる試みに挑戦しつつ、「地域情報学」と「相関地域研究」を二つの柱とした国際的な共同研究を進めてきました。そのうちのひとつのミッション「相関地域研究」を冠した3巻シリーズを青弓社から刊行しました。
21世紀の地域とは、連動し、影響しあい、それゆえ容易に変化する空間です。こうした急激に変化する地域を理解するためには、各地域の特性を明らかにするとともに、その地域がある種のアイデンティティを持ち得ていることを捉え、同時に、連鎖する複数地域とともに、世界においていかなる役割と意味をもっているのかについて、比較と関係性という二つのキーワードを用いて研究を試みるのが「相関地域研究」の手法のひとつです。
また、いかなる地域も、歴史的淵源の延長線上に存在しており、それゆえ複数地域のあり方も時代とともに変容する可能性があるわけです。こうした時代と地域との相関関係は、アジア域内といえども、それぞれの地域によって相当に異なっていることはもっと留意されてよいと思います。しかし、地域間で、なにが、どのように違うのか、その原因は何なのか、将来どのように変化していくのか、そのためにどのような関係を構築すべきなのか、多くの見解は提示されますが、それらの疑問が明確に答えられることはありませんでした。こうした疑問に答えるためには、地域を比較することでみえてくることがあるはずです。21世紀に生きるわたしたちは、これまでの時代との関係性のなかで、今後どのように生きていけばよいのか、いかなる選択肢が可能なのか、そうした問題を考えることも「相関地域研究」の課題のひとつといえます。
地域を比較し、その関係性を明らかにするという営為は、じつに多くの興味や好奇心、ときには意図しなかった驚きや発見をもたらしてくれます。ひとりでも多くの方が、本シリーズによってこうした営為の仲間入りをしてくださることを願ってやみません。シリーズ詳細