地域研究叢書(和文)

遊牧と農耕のはざまを生きる定住モンゴル人の民族誌

地域研究叢書48
包 双月 著
2025年8月
392頁、ISBN: 978-4-8140-0593-2

近代化以降、中国内モンゴル自治区東部地域のモンゴル人は定住・農耕化し、半農半牧の生活を創出してきた。過酷な自然環境、複数の近代国家にまたがる激動に常に揺さぶられつつ、生活実践と生業構成、土地所有意識や伝統の概念をダイナミックに変貌させる彼らは、自らを「はざま」に生きる人びとと称する。独立国・牧畜・移動・放牧技術に偏っていた従来の人類学的モンゴル研究を乗り越え、「遊牧」という概念自体の理解をも捉え直す民族誌。

目次

序章 「らしくない」モンゴル人の民族誌 
第1節 問題の所在 
第2節 先行研究 
第3節 周辺の人類学者として
第4節 本書の視座 
第5節 本書の構成

第Ⅰ部 モンゴル世界における遊牧と定住のダイナミクス

第1章 作物を育てる遊牧民牧畜システムと遊牧との連続性
第1節 モンゴルの牧畜システムの特徴
第2節 家畜利用の実態
第3節 拡張的発展
第4節 「伝統」的農業 
第5節 遊牧を定住から再考する 
コラム1 乳加工品  

第2章 周辺の「周辺」内モンゴル自治区東部地域の特色
第1節 内モンゴル自治区
第2節 モンゴル世界の一部としての東部地域
第3節 中華世界の周辺としての東部地域
第4節 定住農耕モンゴル人の村落
コラム2 モンゴルにおける仏教  

第Ⅱ部 定住農耕モンゴル人の民族誌を記述する 

第3章 農業の導入牧畜生活との関係と二重の意義 
第1節 栽培作物と耕作の実態 
第2節 ナムク・タリヤの展開 
第3節 シャンタイ・タリヤの開始 
第4節 農業がもつ二重の意義

第4章 ブタの飼育と利用の開始食肉行為の変化と新たな民俗知
第1節 動物との多様なかかわり方 
第2節 ブタ導入の必要性および飼育方法
第3節 屠畜からみるブタ利用 
第4節 民俗分類体系からみるブタ利用 
第5節 定住農耕モンゴル人にとってのブタ 

第5章 牧畜の変容農耕化と市場経済化の二重の影響 
第1節 家畜飼育形態の変化 
第2節 家畜用飼料の変化 
第3節 家畜の出産管理の変容 
第4節 家畜利用形態の変容 
第5節 家畜の習性に合わせた生き方の持続と変容 

第6章 土地利用形態とその変化土地賃貸システムと「資源化」意識の誕生 
第1節 土地制度の歴史 
第2節 土地制度の近代化
第3節 土地使用権の分配プロセス 
第4節 土地のもつ意味の変化 

第7章 社会変容の諸相─社会構造、年中行事、通過儀礼、ホルチン民謡 
第1節 社会構造の変容 
第2節 通過儀礼の変容 
第3節 年中行事の変容
第4節 民謡と民俗楽器の資源化 
第5節 遊牧から定住農耕化へ 

終章 はざまを生きる 
第1節 遊牧と農業のはざまで
第2節 移動と定住のはざまで 
第3節 モンゴルと中華のはざまで 
第4節 「遊牧論」の再考と展望 

引用文献
索引