草の根グローバリゼーション | 京都大学 東南アジア地域研究研究所

地域研究叢書(和文)

草の根グローバリゼーション世界遺産棚田村の文化実践と生活戦略

地域研究叢書25
清水 展 著
2013年1月
450頁、ISBN: 978-4-8769-8249-3

フィリピン、ルソンの山また山の奥、世界遺産の棚田の広がるイフガオ族の村。その僅か千人余りの村から、いま数百人が世界に旅立っている。グローバリゼーションの波に翻弄される日本とは裏腹に、市場経済をしたたかに飼い慣らす先住民。その生活の細部までを描く参与型の民族誌は、「地域で生きる」新しい戦略を教えてくれる。

目次

口絵

第1章 北ルソンの山奥でグローバル化を見る・考える──応答する人類学の試み
1 山奥でグローバル化に対峙・便乗する二人の男──そこに巻き込まれ、深く関わる人類学者
2 グローバルとローカルが接合する人類史
3 山奥から見えるグローバル化の風景

第1部 地域と世界を結びなおす企て

第2章 過去を未来へ反転させる意味付与の実践──村の植林運動家ロペス・ナウヤックの「グローバル」な眼差し
1 バギオでの成功と故郷への帰還
2 インタビュー──ナウヤック自身の語りに耳を傾けよう
3 意味を付与する実践──過去を未来へ反転させる企て
4 グローバル化のなかの陣地防衛戦と散開出撃戦
第3章 「地球一周の旅」のあとで──映画監督キッドラット・タヒミックの自己解体・再構築
1 植民地支配の桎梏
2 はじめて地球を一周した男
3 アメリカ式教育の優等生
4 魂の脱植民地化を目指した学び直し
5 原住民として生きること
6 旅する映画、あるいは文化批評としての戦略的ナイーブ映画
7 政治戦略としてのナイーブさ
第4章 表象のポリティクス──文化を資源化する企て
1 歴史の想起
2 『虹のアルバム』(1981—1994)──激動の同時代を写し取る家族ドキュメンタリー
3 文化のアリーナにおける日常的抵抗・交渉
4 イフガオ文化への憧憬、あるいはバギオからハパオ村に続く道
5 文化を資源として捉える
6 二重の矛盾と相克の中で

第2部 グローバリゼーションと対峙した五〇〇年

第5章 イフガオの生活世界──人類学者と共産ゲリラを惹きつける魅力
1 イフガオの民族誌とその問題点
2 ハパオ村の現在
3 共産党=新人民軍の実効支配が続いた二〇年
4 おわりに
第6章 辺境でグローバル・パワーと対峙する──スペイン、アメリカ、日本の侵入とイフガオの抵抗・逃散
1 スペインによる懲罰遠征と平定作戦への抵抗
2 アメリカによる懐柔策の成功
3 アジア太平洋戦争の主戦場フィリピンと山下将軍
4 イフガオ地域への日本軍の敗走
5 戦争の記憶
6 おわりに

第3部 グローバリゼーションを飼い慣らす

第7章 森の恵みに生きる人々──棚田と木彫り工芸
1 森と棚田のエコ・システム
2 ピヌゴの森と土地所有のシステム
3 現金収入源としての木彫り工芸
4 おわりに
第8章 山奥からの海外出稼ぎと伝統の復活──翼を持つこと、根を張ること
1 海外出稼ぎ者の素描
2 トゥゴ祭の復活
3 広く枝を張り深く根を下ろす生き方とそれを支えるシステム

第4部 草の根のグローバリゼーション

第9章 「山奥どうし」の国際協力──巻き込まれから参与する人類学へ
1 開発の戦略と森林管理の政策
2 イフガオにおける開発を描いた三つの民族誌
3 ピナトゥボ山の大噴火(一九九一)と葛を用いた町おこし
4 私自身の関与──ピナトゥボからイフガオへ
5 ナウヤックの初期の活動、あるいは事前の準備
6 日本からの活動支援の功罪
7 JICAの草の根協力事業
8 おわりに──住民主導の社会開発に向けて
第10章 草の根の実践と希望──グローバル時代の地域ネットワークの再編
1 宇宙船地球号イメージ
2 共有地の悲劇、あるいは成長の限界
3 暗い未来に抗して
4 グローバル化と地域社会
5 「グローカル」な生活世界
6 遠隔地環境主義の鍛え直し
7 おわりに

参考文献
あとがき
索引

関連情報