民主化と労使関係 | 京都大学 東南アジア地域研究研究所

地域研究叢書(和文)

民主化と労使関係インドネシアのムシャワラー労使紛争処理と行動主義の源流

地域研究叢書41
水野広祐 著
2020年9月
544頁、ISBN: 978-4-8140-0264-1

権威主義崩壊後、労働法制が改革されたインドネシア。その実態はどうか? 団結権や行動権はどこまで確保され、法はどこまで執行されているのか。植民地期に遡る資料の渉猟と緻密な臨地調査を併せることで、労働運動のみならず広くインドネシア社会を特徴付ける、ムシャワラー(合議)と、一方で時に暴力を伴う行動主義の源流を探る。

目次

序章 「合議」と「全員一致」原則の現実と行方
1.権威主義後の労使関係の力学を探る
2.既存研究のサーベイ
3.本書の目的
4.方法

第1章 植民地期の労働問題と労働法
1.労働者保護法──企業・使用者保護?あるいは労働者保護?
2.集団的労働関係法
コラム 奴隷制度と賦役労働
3.植民地期の労働運動と労使紛争
小括

第2章 独立後スカルノ期の労働法制と労使紛争処理
1.スカルノ期の労働法制と労働運動
2.スカルノ期の労使紛争処理の実際
小括

第3章 スハルト政権下の労働法制と労使紛争処理
1.スハルト期前期の労働法制と労働運動
2.スドモ労働大臣期
3.ポストスドモ大臣の労働政策
4.スハルト期の労使紛争処理の実際
小括

第4章 改革期の労働政策と労使組織
1.民主化期の労働政策
2.労働組合と使用者団体
3.新組合の結成と労組活動
小括

第5章 改革期初期の労使紛争処理事例──激烈な紛争と大量解雇
1.D社と労使紛争の概況
2.D社労使紛争の特質──「合議」の質
3.「合議」を支える制度と運用
小括

第6章 安定的労使関係の創出事例
1.労使紛争事例の概況
2.労使関係のルール・戦略と労使関係安定化
3.小括
4.補論──労働者の不満と賃金問題:組合員アンケートの結果から

第7章 2003年労働力に関する法律第13号
1.解雇をめぐる諸規定
2.ストライキをめぐる規定
3.アウトソーシングをめぐる問題
4.反労働者抑圧委員会を中心とするグループによる,憲法裁判所への司法審査請求
5.2003年労働力に関する法律第13号に対するその後の憲法裁判所への司法審査請求
小括

第8章 インドネシアの労使紛争処理制度改革──2004年労使紛争処理に関する法律第2号を中心に
1.2004年労使紛争処理に関する法律第2号の成立過程
2.2004年労使紛争処理に関する法律第2号の規定する労使紛争処理制度
3.新しい制度の積極面と問題点
小括

第9章 労使関係裁判所制度下の労使紛争処理
1.ストライキ権の解釈とその制限──A社の労使紛争
2.戦略的ストライキの例
3.ストライキと団結
4.労使関係裁判所に依存しない紛争処理──労使関係裁判所の認証ぬきの大量解雇
小括

第10章 グルブック・パブリク「工場捜査」労働攻勢とアウトソーシングおよび有期労働契約問題
1.アウトソーシング・有期労働契約とグルブック・パブリク
2.A社におけるグルブック・パブリクと会社の対応
3.労働攻勢と敵対的労使関係――司法制度と弁護士の役割
小括

第11章 労働運動の発展と労使紛争処理制度
1.労働運動の発展
2.労働監督制度と労使紛争処理制度
小括

終章 ムシャワラー・ムファカットと行動主義

参考文献
附表
組織名など略称一覧
関係法令一覧
索引

関連情報

ブックトーク・オン・アジア No.4 水野広祐『民主化と労使関係──インドネシアのムシャワラー労使紛争処理と行動主義の源流』(京都大学学術出版会、2020年)