著者からの紹介
イスラームへの帰依を示すスカーフなどの覆いを女性が公共空間で着用することの是非をめぐる「ヴェール(スカーフ)論争」は、今やグローバルな議論ともなっています。あまり知られていませんが旧ソ連圏でもそれは生じています。ウズベキスタンにおけるヴェールの「問題」化には、どのような固有の歴史的背景と現代的文脈があるのでしょうか。スカーフ論争を経て、ウズベキスタンは今、「ヴェールのない社会」から「ヴェールがあってもよい社会」への転換期を迎えています。
目次
序 章 ポスト社会主義国のヴェール/スカーフ問題への視座
第一部 モダニティの追求の磁場としてのウズベキスタン
第一章 ウズベキスタンの成立──一九二四年中央アジア民族・共和国境界画定
第二章 独立後のウズベキスタンのナショナリズムの光と影
第三章 宗教とモダニティの相剋──イスラーム観をめぐる亀裂
第二部 イスラーム・ヴェール問題の歴史的展開
第四章 中央アジアにおける女性の装いとヴェール
第五章 帝政ロシアの「ムスリム女性」と「ヴェール」をめぐる言説
第六章 ソ連期ウズベキスタンの「女性」と「ヴェール」をめぐる言説と表象
第三部 現代ウズベキスタンの「ヴェールの政治学」
第七章 権威主義体制とイスラーム過激主義問題
第八章 「女性」と「ヴェール」をめぐるポスト社会主義時代の語り
第九章 新たなヴェール、新たな言説──「ヒジョブ」問題
終 章 モダニティの長い道程は再び開かれるのか
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関連情報
「ブックトーク・オン・アジア」帯谷知可『ヴェールのなかのモダニティーポスト社会主義国ウズベキスタンの経験』(東京大学出版会、2022年)(2022.03.25)