スタッフ紹介
小林 寧子
研究概要
植民地期ムハマディヤの組織拡大
世界最大のムスリム人口を擁するインドネシアには、いくつもの民間のムスリム組織がある。中でも主流のナフダトゥル・ウラマー(ウラマー〈宗教学者〉の覚醒、以下NU)とムハマディヤ(ムハンマドに従う人々)は、植民地期に誕生して現在に至るまで発展を続けている。このふたつの団体の組織編成は対照的である。NUはウラマーの人脈を通して広がったが、ムハマディヤは組織活動を積み重ねて全国展開した。ここ数十年NUは政治との関りで研究者の関心を集める一方、実質的な社会教育分野では堅実な活動を続けているムハマディヤは等閑視されている。本研究では、従来の研究では掘り下げられなかった初期ムハマディヤに焦点をあて、ブミプトラ(インドネシア人)が自らの権利を主張するようになったプルグラカン(運動)の諸団体との関連を視野に入れてその運動展開を考察する。このプルグラカン研究では主として植民地政府資料が使用されていたが、現在ムハマディヤの内部資料や同時代のオランダ語新聞などもアクセスが可能となった。このような資料から聞こえてくる「ムスリム自身の声」に耳を傾け、ムハマディヤの組織構築活動を明らかにすることをめざす。ムハマディヤ運動を通して離れた島々の人々がつながり、やがて独立国家インドネシアの土台の一部を構築していくことが見えてくるであろう。