野瀬 光弘 | 京都大学 東南アジア地域研究研究所

野瀬 光弘

部門・職位
環境共生研究部門
連携研究員
研究分野/キーワード
・インド北部ラダック地方における村落住民の健康と生産活動との関連性
・高知県土佐町における高齢者の農林作業実施状況と健康
・東南アジアにおける人口動態と高齢者対策の実態

野瀬 光弘

インド北部ラダック地方における村落住民の健康と生産活動との関連性

インド北部のラダック地方では、国内の山村地域と同様に住民の高齢化と過疎化が進行しつつあり、心身の健康維持が課題になっている。同地方の一村落を対象に、標高の異なる集落ごとに設置された保健センターにある住民リストなどに基づいて年齢、性別、職業、居住地などを尋ねる調査を行った。登録された村落住民数に比べて、3集落とも在村者は40%ほど少なく、65歳以上の高齢者の比率が20%を上回っている集落もあった。住民の健康状態と農牧畜との関連性の分析を通じて、高齢になっても充実感をもって暮らす上での必要条件を探っている。本研究は、東南アジア諸国でもタイなどを中心に予想される高齢化の進行に備え、日本が世界的に見て最先端の状況にある点を活かしてイニシアティブをとった方策の提案につながる。

高知県土佐町における高齢者の農林作業実施状況と健康

国内では人口の高齢化が著しく、特に農山村では65歳以上の高齢者の比率が40%を上回っている地域もある。若年のうちは心身の健康に関する優先順位は比較的小さいが、高齢になると関心度合いが大きくなる。高知県土佐町では、2004年から断続的に75歳以上の高齢者を対象とした健康診断を実施中で、合わせて身体の機能や心理的な満足度をはかるアンケートを進めている。毎年8月に行われる健康診断に随行し、受診者の一部を対象に農林作業の実施状況について尋ねた。アンケート結果を分析したところ、農作業をしている人がしていない人に比べて、また農作業をしている人の中では作物を譲渡している人がしていない人に比べて心身の状態が良好なことが判明した。日々健やかに充実感をもって過ごすためには、高齢でも役立っている感覚を持てるアイテムの重要性を研究面から探求している。

東南アジアにおける人口動態と高齢者対策の実態

東南アジアには、世界第4位の人口大国インドネシア、出生率が2015年時点で3に近いフィリピンなど、人口構成が若い国がまだ多い。ところが、国連の人口統計によるとタイでは65歳以上の高齢者の比率が10%を上回り、2040年には25%に達すると予想されている。他の東南アジア諸国でも時間差がありつつも、高齢化率は増加し続けるため、健康との関連では感染症などの急性疾患から生活習慣病などの慢性疾患の比率が高まると考えられる。そこで、本研究ではタイにおける地域ごとの人口構成や医療などに関する統計を収集・分析するとともに、フィールド医学調査が進められているバンコクから西へ50km離れたナコンパトムを対象に住民の健康状態との関連性を明らかにする。