スタッフ紹介
清水 展
研究概要
先住民のグローバリゼーション
1980年代末に東西冷戦が終結し、90年代からはグローバル化が急速に進行した。その草の根レベルへの影響と、それへの住民の対処を理解するために、1998年から北ルソン山地の山奥の先住民イフガオのハパオ村でほぼ毎年のフィールドワークを開始した。 ハパオ村は、先の大戦末期に山下将軍麾下の日本軍主力部隊が3か月立てこもった。1970年代後半から10年ほどは、共産党=新人民軍が実効支配を続けた。そんな山奥の村から、過去20年ほどで人口の約1割、180人余りが30カ国へと海外出稼ぎに出るほどにグローバル化してきた。調査でその背景を明らかにした。 出稼ぎの収入・仕送りは、子供の教育費や家屋の新築などのほか、伝統儀礼の復活と盛大な挙行をもたらした。村人は社会経済的にグローバルなネットワークを動くと同時に、ローカルな伝統文化を再興し、「グローカル」な新しい人間となってきた。その経緯を詳細に分析し、草の根のグローバル化のダイナミズムを解明した。