スタッフ紹介
土屋 喜生
- 部門・職位
- 社会共生研究部門
助教 - 専門
- 東南アジア地域研究、近現代史、ポストコロニアリズム、冷戦研究、境界研究
- 研究分野/キーワード
- 東ティモール、インドネシア、フィリピン、冷戦、ポストコロニアリズム、脱植民地化、境界
- 連絡先
- kishotsuchiya@cseas.kyoto-u.ac.jp
土屋 喜生
研究概要
現在の社会問題や国際問題が生まれてきた経緯を理解するため、今に直接繋がっている過去としての近現代の歴史、そして長期的持続と変化について研究している。スタンスとしては、インドネシアと東ティモールに分断されているティモール島やフィリピンのミンダナオ島など、国家や地域の辺境・境界地帯として扱われてきた空間から、植民地主義・冷戦・脱植民地化・空間の生産・国家建設と密輸・知識の生産等、世界史の諸問題・概念を再考するというアプローチを取っている。主要な研究は大きく2種類に分類できる。
第一に、ティモール島史に関する研究がある。2009-10年に国際連合東ティモール統合ミッションの選挙支援部門で勤務した経験から、ティモール島内のインドネシアと東ティモールの国境、海外メディアが発信する情報、実際にそこで生活している人々の帰属意識と実際の生活空間には認識の多様性、あるいはズレがあると感じてきた。このズレが生まれてきた過程を文脈化することで、現在の社会問題や政治的論争、そして東ティモール・インドネシア・域外の勢力の国際関係をより深く理解し、世界史の諸概念を異なる位置から再考することができる。そのために、19世紀頃から現在までに収集・制作されたティモール島の口伝伝承、様々な外部の勢力(カトリック教会、ポルトガル政府、オーストラリア、日本軍、研究者たち等)が残した史料、インドネシアやティモールの知識人たちの作品等を研究している。一連のティモールに関する研究は、米国アジア研究協会からの2つの論文賞を含む複数の賞を受賞している。
第二に、2019年頃から、アジアの草の根の経験から「冷戦」を再考・再概念化するという研究に関わってきた。「東南アジア冷戦」の枠組みで語られてきた歴史は、例えばフィリピンにおけるフク団の鎮圧、インドネシアにおける赤狩り、大陸部のベトナム戦争やクメール・ルージュのように、「冷たい戦争」というよりは、「熱い戦争」、一方的な虐殺、国内の平定、社会戦争と呼んだほうがふさわしく見える出来事にあふれている。そして、ソ連の崩壊ともに「冷戦は終わった」という見方があるものの、フィリピンやインドネシア、東ティモールの人々は現在でも「共産主義の脅威」「反動性」「自由と平等」「アカ」等、冷戦の論理を使って社会問題や政治を語り続けている。これらは「ひとつながりの世界戦争」だったのだろうか、それとも多数のローカルな紛争だったのだろうか。東南アジアの一般の人々は、なぜ「冷戦」の論理でこれらの現象を語ってきたのだろうか。フィリピンのミンダナオ島や東ティモールでのオーラルヒストリー収集し、各国の研究者たちと協力しながら、東南アジア(特に地方)の一般の人々にとって「冷戦」とは一体何だったのかを明らかにしていきたい。
シンガポール国立大にて2013年に修士号(東南アジア地域研究)、2018年に博士号(歴史学)を取得。その後、テルアビブ大学バックマン法学部のナショナリズム・領土・帰属意識の研究プロジェクトにリサーチアソシエイトとして関わった後、2019年4月よりシンガポール国立大学歴史学科にて冷戦再考プロジェクトに博士研究員として参加。2021年10月より現職。
第一に、ティモール島史に関する研究がある。2009-10年に国際連合東ティモール統合ミッションの選挙支援部門で勤務した経験から、ティモール島内のインドネシアと東ティモールの国境、海外メディアが発信する情報、実際にそこで生活している人々の帰属意識と実際の生活空間には認識の多様性、あるいはズレがあると感じてきた。このズレが生まれてきた過程を文脈化することで、現在の社会問題や政治的論争、そして東ティモール・インドネシア・域外の勢力の国際関係をより深く理解し、世界史の諸概念を異なる位置から再考することができる。そのために、19世紀頃から現在までに収集・制作されたティモール島の口伝伝承、様々な外部の勢力(カトリック教会、ポルトガル政府、オーストラリア、日本軍、研究者たち等)が残した史料、インドネシアやティモールの知識人たちの作品等を研究している。一連のティモールに関する研究は、米国アジア研究協会からの2つの論文賞を含む複数の賞を受賞している。
第二に、2019年頃から、アジアの草の根の経験から「冷戦」を再考・再概念化するという研究に関わってきた。「東南アジア冷戦」の枠組みで語られてきた歴史は、例えばフィリピンにおけるフク団の鎮圧、インドネシアにおける赤狩り、大陸部のベトナム戦争やクメール・ルージュのように、「冷たい戦争」というよりは、「熱い戦争」、一方的な虐殺、国内の平定、社会戦争と呼んだほうがふさわしく見える出来事にあふれている。そして、ソ連の崩壊ともに「冷戦は終わった」という見方があるものの、フィリピンやインドネシア、東ティモールの人々は現在でも「共産主義の脅威」「反動性」「自由と平等」「アカ」等、冷戦の論理を使って社会問題や政治を語り続けている。これらは「ひとつながりの世界戦争」だったのだろうか、それとも多数のローカルな紛争だったのだろうか。東南アジアの一般の人々は、なぜ「冷戦」の論理でこれらの現象を語ってきたのだろうか。フィリピンのミンダナオ島や東ティモールでのオーラルヒストリー収集し、各国の研究者たちと協力しながら、東南アジア(特に地方)の一般の人々にとって「冷戦」とは一体何だったのかを明らかにしていきたい。
シンガポール国立大にて2013年に修士号(東南アジア地域研究)、2018年に博士号(歴史学)を取得。その後、テルアビブ大学バックマン法学部のナショナリズム・領土・帰属意識の研究プロジェクトにリサーチアソシエイトとして関わった後、2019年4月よりシンガポール国立大学歴史学科にて冷戦再考プロジェクトに博士研究員として参加。2021年10月より現職。