東南アジアセミナー
京都大学東南アジア地域研究研究所では1977年以来毎年、主に東南アジアおよびその周辺地域の学術的研究に関心を持つ学部生、大学院生や大学卒業者を対象として受講者を募り、東南アジアセミナーを実施しています。毎年テーマを掲げて、所内外から講師を集め、講義と討論という形で進めています。当初、「夏季セミナー」とも呼ばれ、1980年代までは夏季に2週間にわたって実施していました。その後5日間のプログラムとなりました。1990年代後半になると、国内の大学や民間のセミナー等様々な形で類似のプログラムなども増えるなかで、トピックの選定、受講者の参加形態などに様々な工夫をしながら、継続してきました。時代のニーズにあった形のセミナーを模索するなかで、第33回(2009年)を京都にて英語で実施したのを契機に、第34回(2010年)以降は東南アジア現地の大学と連携し、受講者もグローバルに公募し、海外で開催するようになりました。
大学院教育
本研究所は、1981年度に大学院農学研究科の熱帯農学専攻を協力講座として担当して以来、東南アジア研究と関連の深い学内の大学院における教育に積極的に協力してきました。1993年度より人間・環境学研究科において東南アジア地域研究講座を担当し、1998年のアジア・アフリカ地域研究研究科(ASAFAS)の発足以降は、ASAFASにおける主として東南アジア研究の分野での教育に大きく貢献してきました。本研究所が主幹となりASAFASと共同で実施したグローバルCOEプログラム「生存基盤持続型の発展を目指す地域研究拠点」(2007~11年度)がきっかけとなって2009年にグローバル地域研究専攻が設置され、2012~14年度には「アジア・アフリカの持続型生存基盤研究のためのグローバル研究プラットフォーム構築プロジェクト」(頭脳循環を加速する若手研究者戦略的海外派遣プログラム)を共同展開するなど、ASAFASと緊密な協力関係を維持してきました。
現在、本研究所は、ASAFASの東南アジア地域研究専攻総合地域論講座を協力講座とするほか、同専攻の生態環境論および地域変動論、またグローバル地域研究専攻の平和共生・生存基盤論およびイスラーム世界論において、本研究所の教員が、授業やゼミの担当、論文指導、学位審査、オープンキャンパスや入試など各種行事に協力し、大学院教育に携わっています。このほか、大学院医学研究科の社会健康医学系専攻において協力講座、医学専攻において教科を担当し、また12部局協力によるグローバル生存学大学院連携プログラムでも、授業の提供や院生の指導を行っています。
・京都大学大学院 アジア・アフリカ地域研究研究科(ASAFAS)
・ASAFAS東南アジア地域研究専攻
・グローバル地域研究専攻
・医学研究科 社会健康医学系専攻
ILASセミナー
多分野・多国籍にわたる研究の蓄積をもつ本研究所は、本学が推進する国際化に協力し、ポスドク・大学院教育から学部生へと教育対象を拡大して、国際高等教育院が実施する少人数科目群(ILASセミナー)にセミナーを提供しています。
2015年度より「英語で学ぶ教養・共通科目」を、2017年度以降は「教養・共通教育集中講義プログラム」にも、特別招へい教員をふくむ本研究所教員がセミナーを提供し、東南アジアを通した異文化間コミュニケーションや人文地理学、宗教論、比較宗教論、アジア社会入門、文化人類学入門、グローバリゼーション入門などを教えています。
高大連携
本研究所では、高大連携事業の一環として文部科学省のスーパーグローバルハイスクール(SGH)・プログラムに取り組んでいます。SGH指定を受けた高校が本研究所を訪問し、日本と東南アジア諸地域が抱える共通の課題について英語で報告・討論を行い、高校生の能動的多面的学習を支援しています。
2017年8月には、本学で日本と東南アジアの防災協力に関する国際会議が開催されるのにあわせて、「日本と東南アジアの共通の課題を考える高大連携国際会議」を開催しました。福岡県立鞍手高等学校、神戸市立葺合高等学校、大阪府立三国丘高等学校、大阪府立北野高等学校の高校生が参加し、東南アジアの研究者と防災や格差、健康問題といった共通の課題について国を越えて考え、英語での発表を行いました。2018年3月には大阪府立三国丘高校の高校生が参加して、「多様な考え──グローバルな場でのコミュニケーションのために~映像から東南アジアの現状を学ぶ~」とのテーマで東南アジアで撮影されたドキュメンタリー映像を鑑賞し、それに関する講義と学生主体のグループ・ディスカッションを行いました。
2018年度からは、所員の様々な研究活動を紹介する「オンライン動画プログラム」の配信を開始しました。こうした試みが高校生が世界に関心を広げ、グローバルな舞台で活躍する人材となるための足掛かりになることを願っています。
・スーパーグローバルハイスクール(SGH)
・オンライン動画プログラム
ポスドク研究員の受け入れ
本研究所では、若手研究者は研究を活性化する重要な要員と考え、多分野・多国籍のポスドク等若手研究員を積極的に受け入れています。現在、本研究所が公募する機関研究員のほか、学内の白眉プロジェクト助教や所内・学内各種プロジェクト・科研プロジェクト研究員、日本学術振興会特別研究員(日本人、外国人長期短期)などが在籍しています。また、本研究所外の研究機関等に所属する若手研究者を連携研究員として受け入れています。
これらの若手研究者は、自身や所属プロジェクトの研究を推進するだけでなく、所内情報共有の場となっている所員会議や所内で開催される多くの国際・国内セミナーに参加し、内外から訪れる多彩な研究者と交流しています。また、自らセミナーやワークショップを企画・実施したり、若手同士で切磋琢磨し議論していく中から新たな研究プロジェクトを立ち上げています。
このように、本研究所では、若手研究者が内外の多様な研究者と交流しあい、研究プロジェクトを実施する経験を重ねて、研究者として重要なステップを築いていけるような研究環境を整備しています。
社会貢献:社会との連携
実践型地域研究推進室プロジェクト
実践型地域研究推進室は、2008年度に旧東南アジア研究所情報ネットワーク部に設立されました。オーソドックスな地域研究が「地域とは何か」を分析的に描き出そうとするのに対し、「実践型地域研究」の目的は、あくまで実践を通じて地域を理解し、地域が理解されることで実践が促進されるという関係をめざすものです。つまり、実践そのものが研究である地域研究と言えます。実践と研究を一体化させ、実践の中に研究の主体(目的)と客体(問題)が存在する地域研究とも言えます。
本研究室は生存基盤科学研究ユニット発足時から、滋賀県の守山・朽木、京都府の亀岡のフィールド・ステーションを運営しながら、行政やNPOなど地域で実践活動に従事している人々と連携してアクション・リサーチを実施してきました。そして、国や地域の違う参加者たちの相互啓発を重視した実践型地域研究を展開してきています。特に最近は、積極的に農村開発や自然災害の問題を、グローバル問題として実践型地域研究の課題に位置付けています。「グローバルな問題こそローカル(在地)から取り組む」という姿勢を維持しながら、アクション・リサーチによる実践的な問題克服の糸口を発見する研究手法の開発に挑戦しています。
https://pas.cseas.kyoto-u.ac.jp/
関連サイト
アジアと日本の農山村問題を相互啓発実践型地域研究で学ぶ
●「地(知)の拠点整備事業」京都学教育プログラム:FY2015-2017