経済理論の教科書に商人は登場しない。ことほど左様に現代経済学は、完全競争市場の虚構に落ち込んでいる。実際には、情報は不完全で取引費用もかかる。すなわち取引される財の特性に応じて、どのような商人がいかなる作法で市場を形成しているのかを問わねば、真の経済は論じられない。ラオスの地場織物産業に参与観察し、市場形成のダイナミズムを見る。
目次
序章 市場の形成を捉える
第Ⅰ部 手織物を探る
第1章 ラオスの手織物の歴史と技術特性
第2章 登場人物
第3章 取引契約
Appendix A 企業間信用とお得意様関係
第4章 農村経済と機織り
第ⅠⅠ部 ふたつの市場
第5章 高級品を扱うタラート・サオ
第6章 中・低級品を扱うタラート・クアディン
第II部のまとめ
補足資料Ⅱ―1 タラートの糸屋
補足資料Ⅱ―2 守られない「タラート・サオ店舗規則」
補足資料Ⅱ―3 スカーフを織るパーブ村
第ⅠⅠⅠ部 伝統と創造:大消費地ヴィエンチャンとその周辺
第7章 小規模織元
Appendix B 絣と商人:チャムパーサク県サパイ村
第8章 大規模織元
第9章 郊外の機織り村:機業の外延化
第10章 アウトサイダーと機織り
第III部のまとめ
補足資料 III―1 明治期における足利の織賃
第ⅠⅤ部 距離の克服:辺境の産地
第11章 興隆する手織物の宝庫:フアパン県
第12章 低迷する手織物の宝庫:シェンクワン県
第13章 外需に揺さぶられる機業地:ルアンパバーン
補足資料 綿業者(2001年聞き取り)
第14章 とり残された辺境:サイニャブリー県
第IV部のまとめ
終章
あとがき
参考文献
索引