Research Commons

Research commons in Center for Southeast Asian Studies, Kyoto University

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所長からのメッセージ

今回、京都大学東南アジア地域研究研究所の東棟の改修を行いました。その目玉として、入り口1階、入ってすぐの部屋をリサーチコモンズとして太田裕通さんと北村拓也さんにデザインしていただきました。しだれ桜の樹のある中庭に臨むこのスペースは、研究所スタッフによるミーティングやイベント・展示などに使う予定です。新しいことを創造したり、相談したり、中庭を見ながら考えたり本を読んだりすることにもピッタリの空間で、とても気持ちの良く落ち着いた場所となりました。

設計者について

O+KM

2013年より太田裕通と北村拓也が共同主宰するデザインユニット。小さな造作から地域づくりまで建築的思考により物語を紡くデザイン活動に取り組む。
主な作品に「京都大学附属図書館ラーニングコモンズ」(2014年)、「靱公園のスタートアップ・オフィス/ショップ」(2018年)など。
受賞にDSA空間デザイン賞2014学生賞、くまもとアートポリス2020佳作など多数。

太田裕通

http://hirotoota.net/

1989年生まれ
京都大学工学部建築学科卒業、同大学院修士課程修了
2016年~2018年 日本学術振興会特別研究員DC2
2018年3月 博士後期課程研究指導認定退学
2018年4月より京都大学助教
博士(工学)
建築・都市計画学、デザイン学

北村拓也

https://www.corred.info/

1990年生まれ
京都大学工学部建築学科卒業、同大学院修士課程修了
2015年4月~2017年12月 株式会社竹中工務店設計部勤務
2018年5月 大阪にデザイン事務所CORRED DESIGN OFFICEを設立
一級建築士

設計者へのインタビュー

– このたびリサーチコモンズの設計を担当された太田裕通さんと北村拓也さんにお話をうかがいます。どうぞよろしくお願いいたします。

このたび、リサーチコモンズの設計に携わらせて頂きました、太田と北村と申します。よろしくお願いいたします。

– 最初に、お二人のユニット結成と現在に至るまでの流れをお話しいただけますか。

私たちは京都大学工学部建築学科の同期で、元々一緒にコンペをやったり海外ワークショップに参加したりしていて、とても有難いことですが大学院時代に附属図書館ラーニングコモンズの設計に関わる機会を頂きました。これまでになかった新しいプログラムに応える学習環境を、他分野の学生や教職員の方々と協働してつくり上げました。これが私たちの最初の実作になります。大学院修了後、太田は進学し、北村は竹中工務店の設計部に就職、2018年に太田は所属講座の助教に着任し、北村は独立して自身のデザイン事務所を設立しました。同じ建築分野ですが、異なるフィールドで実践している2人はデザイン(設計)への視点もアプローチも違うので、コラボレーションしているような感覚でユニット活動を続けています。

– 今回のリサーチコモンズの設計にあたって、特に意識したこと、あるいはひらめき等について教えてください。

私たちがいつもデザインで大事にしていることは、実際に改変する物理的環境を超えて「デザイン対象をどのように、どこまで捉えるか」を明らかにし、それに基づく物語をつくるという、周辺環境や思考の広がりを含むトータルデザインを行うことです。 今回のリサーチコモンズであれば、約60平米のインテリアのみの空間を考えるのではなく、中庭は勿論、京大の歴史的建築である図書館(旧京都織物会社本社)までも含めた環境をデザイン対象として捉えています(ダイアグラム)。もっと言うと様々な時代の建物が重層している吉田キャンパスにおける、歴史的建築を引き立てるような施設改修・新築のあり方への提案であり、時間の連続性を大事にしたいというコンセプトも含まれています(配置図)。

ダイアグラム
配置図

また、今回の特筆すべきところは、東棟の改修後の什器選択の段階から関わったことです。施設掛の方によるとリサーチコモンズは「視覚的な開放性を持たすために廊下との間仕切りはガラススクリーンとし、3つの窓も構造の許す限り拡大され、また階高の制約から天井ボードは貼らずに直天井とし、内装色も明るくして空間的な拡がりを意図」して改修されたものでした(before写真)。我々はこうした改修に埋め込まれた意図を汲み取りながら、この場所が持つ豊かな価値を最大限に顕在化するようにアップデートしました(after写真)。インテリアのディティールとも言える窓辺に注目し、シンプルな木フレーム挿入により、気持ちの良い中庭と図書館への視線を誘導し、光の振る舞いが感じられる中間領域を作り出しています。

before
after

– 設計者からみて、こうしたオープンスペースはどのような可能性を秘めていると思われますか。

ともすると大学内のオープンスペースは無機質な部屋に椅子とテーブルが並べられただけの空間になってしまいがちです。実際に他のコモンズでは、事前に必要な家具を選び、それらを機械的に配置することによって空間がつくられる先行事例が多く見られます。今回のリサーチコモンズでは必要な機能を満たしながら、もっと根本的に東南研の敷地における場所の価値に向き合って空間をつくることができたと思います。そのように空間をつくることで、利用する人々が快適に学習し、会話し、発展させていくことができるのではないかと考えています。また、空間のフレキシビリティも意識し、自由に移動できる家具や植栽ポット、室全体でのイベントが可能な展示用ピクチャーレールなど、利用する人々が柔軟に能動的に使いこなせるような余白も残しています。ずっと変わらずにここにある場所の価値に触れながら、多様な人材が交流する気持ちの良い環境として育まれていくことを期待しています。

新たな造作に込められた考えについて詳しくおうかがいすることができました。今後、ここから広がっていく思考が生み出されていくことと思います。本日はまことにありがとうございました。