奥宮 清人 | 京都大学 東南アジア地域研究研究所

奥宮 清人

部門・職位
環境共生研究部門
連携教授
専門
フィールド医学、老年医学、神経内科学
研究分野/キーワード
西ニューギニア地域の神経変性疾患の病型変化に関する縦断的研究

奥宮 清人

西ニューギニア地域の神経変性疾患の病型変化に関する縦断的研究

内インドネシア、パプアは、グアムや紀伊とならんで、1970年代に神経難病の多発(世界平均の100倍以上)が報告された。グアムや紀伊は、社会の近代化とともに、急激に神経難病の減少と病型の変化が認められたが、最近のパプアの状況は不明であるため、それを明らかにすることを目的としている。多発地域住民の検診により、神経難病の種類、病型と頻度を把握し、毎年追跡調査した。

2001年より2018年度までの調査より診断した、西ニューギニアの神経変性疾患、94例の病型を分類した。1)運動ニューロン疾患 37例、2)パーキンソニズムとALSの合併例:19例、 3)パーキンソン症候群:33例、4)その他:5例であった。以上より、西ニューギニア地域の神経変性疾患は、現在も多発していることが判明した。ALSとパーキンソニズムの症状が同一患者で重複しており、認知症の合併と家族内発症も認めた点は、紀伊やグアムのALS/PDCと酷似しており、この3地域の疾患は同一疾患である可能性が非常に高まった。

ニューギニア地域では、運動ニューロン疾患は、1980年台のGajdusekらの報告の時に比べてALSは世界平均の100倍より減少はしているものの、最近までは少なくとも、世界の地域と比較して25倍と明らかに多発していた。Gajdusekらにより報告されなかった、軽症のPossible ALSが多くみられており、発症年齢の高齢化と病悩期間の延長といった病型変化が最近見られている。グアムや紀伊でみられた、ALSの減少と、パーキンソン症候群と認知症の相対的な増加といった、病型変化が、最近、西ニューギニア地域でも認められており、今後の動向が注目される。

共同研究機関のCenderawasih Universityとの共同で、毎年の共同調査により、神経変性疾患のフォローアップと水質調査を行い、現地の医師と情報交換を行なった。これまでの成果を、Cenderawasih Universityで毎年開催しているワークショップで発表し、現地の公衆衛生学者、神経内科医と情報交換した。さらに、第59回日本神経学会学術大会にて、情報交換を行った。