山本 博之 | 京都大学 東南アジア地域研究研究所

山本 博之

山本 博之
部門・職位
相関地域研究部門
准教授
専門
地域研究、メディア研究
研究分野/キーワード
・マレーシア地域研究
・ナショナリズムと民族
・災害対応と情報
・映画と演劇
・南方抑留と引揚げ
連絡先
yama@cseas.kyoto-u.ac.jp

山本 博之

マレーシア地域研究

多様な文化的背景を持つ住民がそれぞれの民族性を維持・発展しながら全体で調和がとれて発展した社会を作る仕組みとしての民族がどのように歴史的に形成され発展してきたかについて、マレーシア(特にサバ州)の事例をもとに研究している。

ナショナリズム・民族と活字メディア

国内の主流派の成功物語とは異なる歴史を知る貴重な素材でありながらも国内外で体系的に収集・所蔵されていない現地語の定期刊行物を収集し、建国期の東南アジアについて、国民国家として独立した後も国境を越えた人的・思想的な交流が密接に行われていたという観点から現代史の再構築を試みる。マレーシア・シンガポールの現地語活字メディアとして、ジャウィ月刊誌『カラム』の全記事をローマ字翻字した記事データベースおよび華語文芸誌『蕉風』の記事総目録を作成・公開している。

災害対応と情報

人文社会学による災害対応と復興過程の研究。インドネシアとマレーシアの事例を中心に、情報技術を用いた災害情報の収集とその実践的活用について研究する。日本と東南アジア諸国の災害対応の比較検討を通じて、制度的・技術的レジリエンスと社会的・心理的レジリエンスの両面で自然災害に打たれ強い社会を作ることを目指し、さらにそれを自然災害以外の災厄にも適用する可能性を考える。

映画と演劇と政治文化

異なる文化的背景を持つ人々の間で国民としての共同体意識が醸成される過程において印刷メディアが重要な役割を果たしたという理論を批判的に検討するため、演劇と映画を取り上げ、制作や内容における混成性(混血性と越境性)に着目して物語の生成・伝播・共有・変容を研究する。20世紀前半の演劇と映画に忠誠と正義・公正の2つの価値がどのように織り込まれ、それが今日に至るマレーシアの演劇・映画においてどのような展開を見せているかを検討することで、マレーシアの政治文化の一側面を明らかにする。

南方抑留と引揚げ

日本は1945年8月15日を境に戦時から戦後に一斉に切り替わったのではなく、かつての戦地では抑留された日本人が内地還送を待ちながら労務に従事した。シベリア抑留がよく知られているのに対して東南アジアの抑留についてはほとんど知られていない。主にシンガポールとマラヤに抑留された日本人の抑留中の句集・文集や帰国後に編まれた体験記を収集し、南方抑留の実態を明らかにする。日本人による戦争体験記は日本人の視点のみから書かれたものが多いが、日本人抑留者の存在がシンガポールとマラヤの戦後の政治過程に及ぼした影響にも目を向け、終戦の前後で断絶することのない日本と東南アジアの交流史の一側面を明らかにする。