山本 博之

山本 博之
部門・職位
相関地域研究部門
准教授
専門
マレーシア研究、民族,ナショナリズム,混血者,東南アジア、災害,復興,情報,東南アジア、映画,物語,東南アジア、現地語文書,社会史,東南アジア、地域研究方法論
研究分野/キーワード
・災害対応の地域研究
・混成アジア映画研究
・ジャウィ雑誌『カラム』研究
連絡先
yama@cseas.kyoto-u.ac.jp

山本 博之

災害対応の地域研究

人文社会学を中心とする災害対応と復興過程についての研究。インドネシアから始めてフィリピンとマレーシアに対象地域を拡げ、災害対応に関心を持つ人文社会系の研究者のネットワークを築いてきた。災害対応を事例研究にとどめずに社会を研究する枠組とし、それを自然災害だけでなく他の災厄にも適用する可能性を検討している。情報技術を用いた災害情報の収集とその実践的活用についても研究している。
2018年度は研究対象地域を拡大するため、フィリピン、インドネシア、マレーシアに加えてベトナム、カンボジア、ラオス、タイの人文社会学の研究者と災害対応研究のネットワーク形成のためのワークショップを開催した。このほかに隔月の「災害対応の地域研究」研究会を実施した。

混成アジア映画研究

ナショナリズム研究の批判的検討。異なる文化的背景を持つ人々の間で国民としての共同体意識が醸成される過程で出版物が重要な役割を果たしたという理論を批判的に検討するため、多様な言語や文字が使われ識字率が低い社会において国民意識が醸成され共有される媒体として舞台芸能と映画の役割を取り上げ、混成性(混血性と越境性)に着目して物語の生成・伝播・共有・変容の様子を明らかにする。
2018年度はインドネシアおよび東ティモールを対象として、内戦、テロ、災害などによる身近な人の喪失に社会がどのように対応してきたかについて、国際交流基金アジアセンターと共催で東京で公開シンポジウムを行った(2018年5月)。また、本研究プロジェクトが契機となって構想された映画『海を駆ける』(深田晃司監督)の公開にあわせて京都でも同様の公開ワークショップを行った(2018年7月)。大阪アジアン映画祭にあわせて毎年行っている公開シンポジウムではタイ映画をテーマとした(2019年3月予定)。関連して所内のビジュアル・ドキュメンタリー・プロジェクトに参加した。

ジャウィ雑誌『カラム』研究

現地語文献の収集・公開とそれを用いた現代史の再検討。国内主流派の成功物語とは異なる歴史を知る貴重な素材でありながら、国内外に体系的に収集・所蔵されておらず、ジャウィ(アラビア文字)で書かれているために今日の若い読者に利用しにくいジャウィ月刊誌『カラム』(1950-1969)を体系的に収集し、記事をローマ字翻字して原文と翻字を記事データベースとして公開する。また、これらの記事を活用して、建国期のマレー世界について、ムスリム社会の動態に目を向けることで、国民国家として独立した後も国境を越えた人的・思想的な交流が密接に行われていたという観点から現代史の再構築を試みる。
2018年度にはマレーシア国民大学の研究チームと共同研究の可能性について検討した。『カラム』記事を用いた20世紀のマレー世界における社会秩序の形成についての共同研究は2年目となり、成果出版のための原稿執筆およびその取りまとめを行った。