国家の「余白」 | 京都大学 東南アジア地域研究研究所

地域研究叢書(和文)

国家の「余白」メコンデルタ 生き残りの社会史

地域研究叢書42
下條尚志 著
京都大学学術出版会、2021年
570頁、ISBN: 978-4-8140-0309-9

目次

口絵

序論

序章 国家の「余白」──メコンデルタ 生き残りの社会史
 1 国家の「余白」と人々の生き残り策
 2 ソクチャン省フータン社の地域的特徴
 3 フィールドワークとオーラル・ヒストリー
 4 本書の構成

第1章 生き残り策から問い直す動乱
 1 モーラル・エコノミーとベトナム南部
 2 多民族社会とその歴史の捉え方
 3 国家の介入しにくい空間
 4 国境を越えた移動
 5 社会国家関係の再検討

第2章 混淆的な多民族社会
 1 統計ではみえない「混血」の人々
 2 多民族社会の地域性
 3 地域社会の混淆性
 4 民族をめぐる自他認識
 5 人々にとっての民族

第1部 国家の周縁から「余白」ヘ

第3章 紛争と移動──多民族社会の生成
 1 国家の周縁部としての地域形成
 2 植民地化以降の移民と開発
 3 脱植民地化過程の動乱
 4 民族間紛争の捉え方

第4章 脱植民地化過程における言語・仏教・帰属
 1 仏領期末期のフータン社とカンボジア
 2 南ベトナム政府期初期のフータン社とカンボジア
 3 帰属問題の表出
 4 人々と南ベトナム国家の齟齬
 5 クメール語・上座仏教世界の変化に対する反応

第2部 戦時下での生き残り

第5章 戦時国家による地域社会の再編
 1 インドシナ戦争直後の地域状況
 2 ジエム政権の政策理念
 3 「荒地開拓」と「戦略村」
 4 「耕す者に田を」と「緑の革命」
 5 農村モデルの導入から合理的農民の創出へ

第6章 二つの政治権力の狭間で
 1 解放戦線の戦略と地域社会
 2 クメール系上座仏教徒と国家
 3 国家の戦略と地域社会

第7章 戦時下における不可侵の秩序空間
 1 安全な場所への逃避
 2 国家の力が及びにくい寺院内秩序
 3 兵カ・食糧不足
 4 不可侵の秩序空間

第3部 社会主義改造下での生き残り

第8章 社会主義改造による地域社会の再編
 1 社会主義改造の経緯
 2 農業と商業の社会主義改造
 3 宗教と民族の再編

第9章 社会主義改造下のローカルな秩序
 1 農村における私生活領域
 2 闇経済の生成
 3 生存のために残された空間

第10章 生き残り策としての越境
 1 難民としての越境
 2 冷戦終結以降の越境
 3 越境者の背景
 4 「穴だらけ」の国境

第4部 過去を踏まえて現在を生きる人々

第11章 二一世紀のクメール人越境者とベトナム国家
 1 帰属問題の顕在化
 2 越境移動の制度化
 3 モノとメディアの越境移動
 4 不自由化する越境移動

第12章 混淆的な多民族社会における差異の認識
 1 差異と変化をめぐる語り
 2 妖術をめぐる他者認識
 3 「小さな歴史」と「大きな歴史」のもつれあう場

終章 秩序が紡ぎ出される場としての「余白」
 1 国家の「余白」が現れる場
 2 混淆的な多民族社会からみえる歴史
 3 国境を越えた世界の一部としての多民族社会
 4 国家の介入しにくい空間での生き残り
 5 揺れ動く政治的立場
 6 近代国家の弱さとローカルな秩序の強さ
 7 おわりに──国家の「余白」をめぐる再帰的な歴史に向けて

参考文献
あとがき
索 引

関連情報

下條尚志著『国家の「余白」―メコンデルタ 生き残りの社会史』(京都大学学術出版会)が第25回国際開発研究大来賞を受賞。