第82回「東南アジアの社会と文化研究会」を下記の通り開催します。
今回は、インドネシア・フローレス島における絣布をめぐる社会的生活とその変化について、長年同地でフィールドワークを積み重ねてこられた青木恵理子先生にお話をしていただきます。
オープンな研究会ですので、ぜひお気軽にご参集ください。
事前登録等の手続きは必要ありません。
また、研究会後には懇親会を予定しております。
日時:
2018年12月14日(金)16:00~18:00(15:30開場)
場所:
京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科
総合研究2号館4階 会議室(AA447)
会場についてはこちらもご参照ください。
http://www.asafas.kyoto-u.ac.jp/about/access
地図が二枚ありますが、下の方の地図(「本部構内」)です。
話題提供者:
青木 恵理子 氏 (龍谷大学教授・京都大学客員教授)
発表題目:
インドネシア・フローレス島における絣布の社会的生活:日常・贈り物・消費文化などの観点から
発表要旨:
インドネシア南東部にある東ヌサテンガラ州は、絣をはじめとした何種類かの技法による、腰機(いざり機・原始機)で織った布の産地として、手織り布愛好家の間では国際的に有名である。絣織の技法は17世紀にインドから伝わったと考えられ、パトラと呼ばれる、インド由来の模様のパタンをもった布が、この地域の各地で今でも織られている。
フローレス島は、東ヌサテンガラ州に位置する、四国ほどの面積の、東西に長い島である。人口の90%はカトリック。島の西部では紋織、中部以東では絣布が織られている。1979年以来私が調査をしてきた中部山岳地帯では、絣織生産はなされていないか、或は、禁じられているが、日々の生活において身に着けられているだけでなく、誕生から死に至るまで繰り返し行われる親族間の贈り物として、社会生活にとって欠かせないものとなっている。
フィールドワークを始めてから40年の間に、様々な変化が起きた。80年代から、コーヒー、丁子、カカオなどの換金作物栽培が導入された。ほぼ同時期に、フローレス島中央山岳地帯の人びと(多くは男性)が、マレーシアへの(不法)出稼ぎに、1990年代の末からは国内出稼ぎに出かけるようになった。現金収入を得るようになったが、自給のための食糧生産は減少し、そういった食料を現金で購入するようになった。現金収入が可能になったことにより、贈与財にも現金や町で購入した消費財が多く取り入れられるようになった。
1990年代末から、土着化の方針のもと、カトリック教会が教会行事の際の「地方」衣装着用を推進するようになった。1998年からの行政改革「地方分権化」の潮流の中、地方文化の強調にも伝統布が使われるようになり、絣織が多く生産されるようになった。1980年代から海外からの観光客がフローレスを訪れるようになり、お土産として絣布を購入するようになった。手ごろな値段で買えるよう、地元で使われる絣布とは異なる模様の、小さいサイズのものも作られるようになった。また、絣布の生産と流通に関与するNGOや産業省や地元民間人のなども出現した。
本発表では、絣布の社会的生活を把握することによって、フローレス島中央山岳地帯、ひいては同じような状況にある近隣地域の生活の変化の原理を探ってみたい。
●2018年度世話人代表・研究会事務局
岡田雅志
p_okada[at]cseas.kyoto-u.ac.jp
和田理寛
mwada[at]cseas.kyoto-u.ac.jp
●「東南アジアの社会と文化研究会」のウェブサイトには、今回の研究会の案内、発表要旨、研究発表に関わる写真が掲載されていますので、ご覧ください。
http://www.chiiki.cseas.kyoto-u.ac.jp/syakai-bunka/