インドネシアでは、毎年のように火災が頻発しており、長期間燃焼する泥炭火災は大量の二酸化炭素を排出し国内外に深刻な影響を与えている。インドネシア国家防災庁は、火災検出にNASAのMODISおよびVIIR衛星搭載センサーデータを解析したFire Information for Resource Management System(FIRMS)のホットスポット情報を用いている。 しかし、そのアルゴリズムは地表面上で起きる高温かつある程度広域の森林火災を対象にしたものであり、低温で地中に分散して燃焼する泥炭地火災の検出は難しかった。そこで亀岡大真氏(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程)、甲山治准教授らの研究チームは、火災が頻発した2019年9月の泥炭火災地で赤外線カメラを搭載したUAV(ドローン)を用いて、泥炭火災の検知や規模の特定を可能にする泥炭火災図を作成した(論文1)。また、火災リスクを軽減するために乾季(2019年5月)の熱帯泥炭地において、赤外線カメラを搭載したUAVで取得した土壌表面温度を用いた地下水位推定手法を開発した(論文2)。
研究者よりひとこと:
泥炭火災は、泥炭土壌という「土が燃える」独特な火災です。そのため、森林火災とは違った対策を試みる必要がありました。したがって、研究内容は挑戦的なものでしたが、地域住民、行政や研究者といった様々な方々のご協力があったおかげで、本研究成果を得ることができました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。(亀岡)
2019年はインドネシアの広域に少雨をもたらす中央太平洋の海水昇温に対応する 「エルニーニョモドキ現象」が発生しており、5月には地下水位が低下した泥炭地で水位推定を行いました。さらには2019年8月以降にスマトラ島に少雨をもたらすインド洋⻄部の海水昇温に対応する 「正のインド洋ダイポールモード現象」も発生したことで、スマトラ島の広域で火災が発生しました。乾燥した泥炭地で開発した2つの手法は現地カウンターパートに技術提供されており、泥炭地火災の実態把握に貢献しています。(甲山)
研究者情報:
亀岡 大真 Researchmap
甲山 治 京都大学教育研究活動データベース
書誌情報:
論文1
タイトル | Mapping Peatland Fires Using a Drone Equipped with a Thermal Camera |
著者 | Taishin Kameoka; Osamu Kozan; Sunawiruddin Hadi; Asnawi, Hasrullah |
掲載誌 | Japan Society of Photogrammetry and Remote Sensing, 2020年11月 |
DOI | 10.4287/jsprs.59.214 |
論文2
タイトル | Monitoring the groundwater level in tropical peatland through UAV mapping of soil surface temperature: A pilot study in Tanjung Leban, Indonesia |
著者 | Taishin Kameoka; Osamu Kozan; Sunawiruddin Hadi; Asnawi; Hasrullah |
掲載誌 | Remote Sensing Letters, 2021年6月3日 |
DOI | 10.1080/2150704X.2021.1906974 |