インドネシア、スマトラ島の北端に位置するアチェは古くから東南アジアにおけるイスラーム文化の中心地として知られ、そこに残存する写本や墓石を始めとする数多くの遺構は、1世紀以上にわたり、多くの研究者の関心を集めてきました。本研究は、海域アジア遺産調査(Maritime Asia Heritage Survey, MAHS)によって近年体系的に調査・記録されたアチェ州ビレウエン(Bireuen)の一対の石碑、およびそこに刻まれた碑文について報告するものです。
本研究で示した碑文の読み解きは、東南アジアのイスラーム文化の初期の動態について新たな展望を開くものです。とりわけ、15世紀半ばの東南アジアにおいて、ペルシア文字の伝統とスーフィズムにおける神との合一の教えがこの地域で受容されていたことを証明しています。
本論文はオープンアクセスで全文公開されています。
著者からの一言
本論文は、インドネシアのアチェ州ビレウエンにある一対の墓碑に刻まれたペルシア語およびアラビア語の碑文を読み解くものです。これらの遺物は近年、著者を中心とする海域アジア遺産調査(MAHS)によって調査およびデジタル記録が行われました。MAHSが作成した3D可視化画像により刻まれたテキストの解読と解釈がさらに明確になったことで、東南アジアにおけるイスラーム文化の初期の動態を明らかにする新たな展望が開かれたと言えます。
スマトラ島の初期ペルシア語碑文の内容とその文脈を読み解くことは、東南アジアにおけるイスラーム化をより深く理解することにつながると同時に、15世紀に拡大したペルシア語世界の東の辺境における文化的関わりの範囲と深さを探究するための新たな問いを提起しています。
研究者情報
R. マイケル・フィーナー 京都大学教育研究活動データベース
書誌情報
章タイトル | A 15th-Century Persian Inscription from Bireuen, Aceh: An Early ‘Flash’ of Sufism before Fanṣūrī in Southeast Asia |
著者名 | Majid Daneshgar, Gregorius Dwi Kuswanta, Masykur Syafruddin, and R. Michael Feener |
書籍情報 | Majid Daneshgar and Evan Nurtawab (Eds.) Malay-Indonesian Islamic Studies. Leiden: Brill, 2022, pp. 86-105. |
DOI | https://doi.org/10.1163/9789004529397_005 |