東南アジアには、内戦・テロや災害によって大切なものや人を突然失う経験をした人々がいます。
国内のイスラム教徒人口が世界で最も大きいインドネシアは、2001年9月の米国同時多発テロ事件をきっかけに世界各地でイスラム教徒をすべてテロリストと見なす風潮が高まる中で、自分たちはテロ事件とは無関係であることを世界にアピールしようとしました。その矢先の2002年10月、インドネシアのバリ島でイスラム教の名のもとで爆弾テロが起こったことは、「多様性の中の統一」を掲げてどの宗教も対等に扱うことを国是としてきたインドネシア社会に深刻な課題を突き付けました。また、長くインドネシアの一部だった東ティモールが住民投票を経て2002年5月にインドネシアから独立したことは、インドネシアに国土の一体性を失う重大な衝撃を与えました。
社会が喪失感に包まれる中で、一人一人はそれぞれの喪失を抱きしめ、意味のある生を歩もうとします。インドネシアから独立した東ティモールを舞台とした『ベアトリスの戦争』と、バリ島爆弾テロ事件を題材にした『天国への長い道』をもとに、災いを経験した人々がどのように喪失を受け止め、再び立ち上がっていこうとしているのかを考えます。
入場無料/事前登録不要
日時: 2018年7月28日(土) 午後1時~6時30分
場所: 京都大学稲盛財団記念館大会議室
プログラム:
12:30 開場
13:00 開会挨拶
13:10 上映『ベアトリスの戦争』
15:00 解説(西芳実・山本博之)
15:30 休憩
16:00 上映『天国への長い道』
18:00 解説(西芳実・山本博之)
18:30 閉会
上映作品:
『ベアトリスの戦争』(Beatriz’s War/ルイギ・アキスト、ベティ・レイス/東ティモール/2013年)
インドネシア軍による全面侵攻以降、東ティモールにおいて占領が女たちにどのような影響をもたらしたのか。ベアトリスの夫は虐殺を逃れたものの行方不明になるが、16年後に村に帰ってくる。だが、ベアトリスはその男性が夫であることに確信がもてない。
101分/DVD/テトゥン語・インドネシア語/字幕:日本語・英語
『天国への長い道』(Long Road to Heaven/エニソン・シナロ/インドネシア/2006年)
世界最大のイスラム教徒人口を抱えるインドネシアは、イスラムの名によるテロをどう受け止めたのか。9.11以降に「テロとの戦争」が世界化する中で発生したバリ島爆弾テロ事件を、テロの企画者、実行犯、地元の人々、報道の4つの視点から描くことで恨みの連鎖を避ける道を探る。
115分/DVD/インドネシア語・英語/字幕:日本語・英語
7月29日(日)には関連企画の「わすれな月2018」が行われます。こちらもあわせてご参加ください。
主催:
混成アジア映画研究会
京都大学東南アジア地域研究研究所