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セドリック・アーノルド 「ヤントラ―聖なる文様」展

セドリック・アーノルド

「ヤントラ―聖なる文様」展

日時: 2018年12月13-14日
場所: 京都大学稲盛財団記念館1階玄関ホール

展示会について
「ヤントラ―聖なる文様」は、‘サク・ヤント’として知られるタイの伝統的刺青を写した写真、映像、音声、また刺青に関するさまざまなアイテムのコレクションの集成です。

背景
何世紀ものあいだ、タイの人々は刺青には魔力が宿ると信じてきました。刺青の技術を伝承する彫師は“tattoo master”として知られ、刺青の構図を考案するだけでなく、祈祷よって聖なる力を吹き込むことができます。

彫師には特別な敬意が払われ、“帰依者”によって毎年Wai Khruという儀式が行われます。“帰依者”はそこで刺青の霊に取り憑かれ、Khong Khuenとよばれる獣霊憑依の状態に入ります。

 

左:無題23:40×40インチ 右:無題25:40×40インチ

 

儀式の場では、刺青に霊的な力を与えることに焦点がおかれます。「彫師」は単なる刺青職人ではなく、占星術師であり、精神的な導師であり、シャーマンです。女性の恋の悩みを聞き、生まれてきた子供には祝福を施します。拳闘士のグローブやチャンピオンベルトやお守りなどに祝福を与えることもあれば、お店を開く、車を買うのに縁起の良い日をアドバイスする、というようなこともあります。

迷信がいまだ根強い文化社会では、邪霊は現実に存在するものであり、シャーマンや魔法遣は非常に重要な役割を担います。

セドリック・アーノルドは東南アジアを長く取材するなかで、この地域の人々が魔力を信じる姿に魅了され、魔法や俗信にまつわるスピリチュアルな伝統を探るプロジェクトを構想するようになりました。

最初の撮影の機会は偶然に訪れました。セドリックは、契約取材の現場のある造船所で、頭から爪先まで呪文で覆い尽くされた労働者の男に出会いました。翌週、撮影機材を携えて戻り、男を撮影しました。その後、男は二人の彫師に引き合わせてくれ、セドリックはそこで多くの儀式や入れ墨の様子を写真や動画に収めることに成功しました。これを契機とし、セドリックはタイ中で撮影モデルを探し、彼らを大判写真に収めるポートレイト連作「ヤントラ―聖なる文様」を開始しました。

4×5カメラで撮影されたモノクロのポートレイト連作――感光乳剤上に様々な薬品を塗布することでネガは化学変化を起こし、様々な職業や年代の人々が、刺青によって護られている身体を誇らしげに見せる姿を浮かび上がらせます。

刺青は幾重にも重ねられ、また、すでにある刺青のデザインそのものにもインスパイアされ彫り込まれ続けます。写真作品では、真っ白な背景にポーズを取るモデルだけでなく、接写によって刺青の細部を見ることができます。またセドリックは過去数十年にわたって、この伝統にまつわる小物のコレクションも行っています。

セドリックは神経科学、とりわけ意識の変化状態に対する関心から、プロジェクトを深く掘り下げるため、動画の撮影にも着手しました。Wai Khru(「師を称える日」)の儀式を撮影した作品では、“帰依者”が彫師のもとに集い、自分の刺青に新たな力を与えるべく師を称える様子が映し出されます。彼らはしばしばKhong Khuenと呼ばれる獣霊憑依の状態に入り、そこで刺青に宿る霊性は更新されてゆくのです。

数年をかけて収集された膨大な映像や音声を素材として、Wai Khruの目眩く儀式を可能な限り追体験できる複数バージョンの映像作品が生み出されました。作品は映画館上映用の短編バージョン、美術館上映用のループ版、さらにマルチチャンネル+サラウンド音響を用いた体感バージョンがあります。

 

「ヤントラ―聖なる文様」展は、ロイヤル・オンタリオ博物館(トロント)、アジア文化センター(光州)、熱帯博物館(アムステルダム)、ケ・ブランリ美術館(パリ)、ロンドン大学アジア・アフリカ研究学院ブルネイギャラリー、チュラロンコン大学芸術センターなど、これまで世界各地で20回以上開催されました(個展、グループ展を含む)。

熱帯博物館(アムステルダム)での展示レイアウト。中央はシングルチャンネルによるビデオ(4分58秒)のループ上映(2017年3月〜2018年4月)

 

レイアウト例(チュラロンコン大学アート・センター)

 

写真作品
いずれもフィルム撮影(中判、大判、35mm)
Reference: http://www.cedricarnold.com/portfolio/photographs/yantra-the-sacred-ink/

 

ビデオ作品
‘Yantra: The Sacred Ink’: 「ヤントラ―聖なる文様」
(ケ・ブランリ博物館、熱帯博物館、フィールド博物館(シカゴ)、自然史博物館(ロサンゼルス)、デザインミュージアム(ゲント)、MAS美術館(アントワープ)、国際民族芸術博物館(サンタ・フェ)にて上映)

 

展示品
写真、映像と併せて、刺青針、お守りの小物、ヤントラを彫り込んだシャツ、小像、聖典などを展示します。

 

写真家紹介:セドリック・アーノルド(Cedric Arnold)
フランス系イギリス人アーティスト、写真家。1976年イギリス生まれ。パリ大学で歴史学と言語学を学びつつ、写真と映画制作に関心をもち、講義室よりも暗室で多くの時間を過ごす。1999年にロンドンに移りSygma通信社に入社、ロンドンとベルファストの特派員となる。

2001年末にバンコクに移り、 Le Monde、Time Magazine、New York Times、The Sunday Times紙に東南アジア地域関連の記事を寄稿しつつ、個人的関心をより掘り下げる活動も併せて行う。

彼の作品は、ロイヤル・オンタリオ博物館(トロント)、ケ・ブランリ美術館(パリ)、アルル国際写真フェスティバル、熱帯博物館(アムステルダム)、シカゴ自然史博物館、アントワープ美術館、自然史博物館(ロサンゼルス)、チュラロンコン大学アートセンター(バンコク)など、世界中の博物館やギャラリーに展示されている。

 

Website http://cedricarnold.com

 

 

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