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Special Seminar: Frontiers of Gender Studies in Asia

特別セミナー: アジアにおけるジェンダー研究のフロンティア(主催: 東南アジア地域研究研究所 男女共同参画推進委員会)

開催日時: 2019年12月9日 16:00-18:30
場所: 東南アジア地域研究研究所 稲盛財団記念館3階 中会議室(332号室)https://kyoto.cseas.kyoto-u.ac.jp/access/

プログラム:
講演 1
タイトル: ソヴィエト朝鮮語新聞における可視的/不可視的高麗人女性
報告者: ゲルマン・キム(アル=ファーラービー・カザフ国立大学/カザフスタン、建国大学校/韓国)

要旨:

学術文献、マスメディアおよび芸術にみられるソヴィエト女性像は、ソヴィエトと欧米では階級ならびにイデオロギー上の差異によってそれぞれ異なる解釈が存在した。ソヴィエトでは、解放やジェンダー平等において目に見える目覚ましい成果を上げていることのみを主張することが一般的であった。欧米世界でも、ソヴィエト女性像は固定観念に縛られており、批判的な含意があった。ソヴィエト女性像の解釈をめぐるこうした相反するアプローチは氷山に例えることが可能であり、どちらの側も目に見える一角を明らかにしているが、水面下の塊は隠している。ソヴィエト朝鮮語新聞「センボン」(선봉、前衛、1923~1937年)ならびに「レーニン・キチ」(레닌 기치、レーニンの道、1938~1991年)の資料から収集した写真をもとに、朝鮮系女性の目に見える像と“見えざる”像について述べる。

 講演 2
タイトル: ウズベキスタン映画における女性像
報告者: ニゴラ・カリモヴァ(科学アカデミー芸術学研究所/ウズベキスタン)
要旨:
ウズベキスタンの女性を描いた映画の形成に影響を与えた社会・政治的および文化的条件について検討する。1925年から1980年代までの女性に関するクロニクルの特徴について当時支配的であったイデオロギーを踏まえて分析する。ウズベキスタンにおける初期の女性映像作家と初期の無声映画の女優について述べる。ウズベキスタンの映画形成はソヴィエト国家の一連の社会・政治的改革、すなわち土地と水資源に関する改革、女性解放キャンペーン「フジュム」、識字向上などと軌を一にする。ソヴィエト時代の「無声映画」期において新世界の女性像が創造された。1930年代半ば、大衆向けの写真雑誌ならびに映画定期刊行物(映画雑誌)では、視覚情報の70%は幸せな女性を描いた写真であり、政治プロセスに関する報道はほとんどなかった。1920年代および30年代の「無声映画」-「死のミナレット」(1925年)、「第二夫人」(1927年)、「毒された者」(1928年)、「聖者の娘」(1930年)、「チャドル」(1927年)-すべての筋書きは女性の運命をめぐるものであった。検討対象時期の長編映画にみられる特徴は、ステレオタイプ、時代の象徴、主要なイデオロギーの優越、筋書きの特質、女性登場人物の代表モデルであると考える。

コメンテーター:
李 眞恵(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 特任研究員)     
帯谷 知可(京都大学東南アジア地域研究研究所 准教授)         

モデレーター:
設樂 成実(京都大学東南アジア地域研究研究所 助教)    

報告者の紹介:
ゲルマン・キム教授はアル=ファーラービー・カザフ国立大学の朝鮮研究センター所長と建国大学校歴史学科中央アジア研究・協力センター所長を兼務している。30年余りにわたってソヴィエト時代およびポスト・ソヴィエト時代の朝鮮系人に関する論文・書籍を数多く著している。2019年から京都大学東南アジア地域研究研究所の招へい研究員を務める。

ニゴラ・カリモヴァ氏は映画批評家、ウズベキスタン科学アカデミー芸術学研究所の映画・テレビ学科長である。ウズベキスタンの劇映画の形成と発展をテーマとして科学アカデミーから博士号(科学博士)を授与されており、また、博士論文をもとにした『ウズベキスタンの映画製作』(ロシア語)(タシュケント、2018年)を出版した。ウズベキスタンの映画製作史に関して論文、メディア・プロジェクト、科学的モノグラフを数多く著している。国際映画批評家連盟(FIPRESCI)会員でもある。

*本セミナーは、CIRAS共同利用・共同研究プロジェクト「中央ユーラシアのムスリム地域社会における家族と規範:中東との比較分析」との共催である。

男女共同参画推進