わすれな月2023 ヤスミン・アフマド監督追悼上映・ディスカッション | 京都大学 東南アジア地域研究研究所

EVENTS

わすれな月2023 ヤスミン・アフマド監督追悼上映・ディスカッション

※参加費無料/事前登録不要

※上映作品はいずれもDVD画質による上映です。

※当日は建物の出入り口が施錠されています。各回の上映時間の15分前から上映時間まで(9:45−10:00、12:45−13:00、14:45−15:00)に開錠するのでそれにあわせてお越しください。

プログラム
 10:00 開会挨拶
 10:00 『タレンタイム』上映
 12:00 休憩
 13:00 『ラブン』上映・作品解説
 14:45 休憩
 15:00 『ミン』上映・作品解説
 16:45 閉会

趣旨

『ラブン』から20年

ヤスミン監督がテレビ放映用の『ラブン』で長編監督になって今年で20年を迎えます。『ラブン』にもオーキッドが登場しますが、『細い目』『グブラ』『ムクシン』のオーキッドの物語とは物語上の直接のつながりがなく、『ラブン』はヤスミン作品の中でも異色の作品という扱いを受けることが多かったように思います。
しかし『ラブン』には、田舎に向かう車の中で歌われる「カントリーロード」によく表われているように、その後のオーキッド三部作から遺作の『タレンタイム』まで続くヤスミン作品の要素がいくつも織り込まれています。ヤスミン監督がこの作品を通じて帰ろうとした田舎とはどんなところなのかを考えながら、ヤスミン監督が映画制作という道を走り抜けてどこに向かおうとしていたのかを考えてみたいと思います。
ヤスミン監督が向かおうとしていた先を考えるため、『タレンタイム』の上映も行います。会場にお越しいただけない方も、それぞれの場所で配信やDVDでご覧いただければと思います。

『ミン』と「The Accidental Malay」

『ラブン』の主人公はオーキッドの父アタンと母イノムです。アタンとイノムという名前からもわかるように、オーキッドの両親にはヤスミン監督の両親が重ねられています。
ヤスミン監督の両親といえば、『ラブン』と同じ時期にヤスミン監督の盟友ホー・ユーハン監督が撮った『ミン』では、ヤスミン監督の両親がヤスミン(ミン)の養父母の役で出演しています。ヤスミン監督を間近に見てきたユーハン監督が、ちょっと斜めからヤスミン監督の家族を描いた物語です。
ミンは華人として生まれましたが、マレー人イスラム教徒であるアタンとイノムの夫婦に育てられました。学生時代の友人を通じて実の母である華人女性の居場所を探し出し、電車に乗って会いに行くという物語です。『ラブン』でヤスミン監督が道を走り抜けていたのを別の角度から見ているような作品で、『ラブン』と一緒に見ることで考えが広がります。

育ての親と実の親の民族・宗教が違い、実の母の居場所を探し当てて会いに行くという話に関連して、「The Accidental Malay」という小説があります。幼い頃に父を亡くしたジャスミンは、イポーで暮らす祖母のもとで華人キリスト教徒として育てられ、豚肉製品の販売で知られる大企業の次期取締役の最有力候補と見られています。ところが消息がわからなかった実の母が存命で、マレー人イスラム教徒であることがわかり、ジャスミンは法律上はマレー人イスラム教徒なのだからイスラム教徒として正しく生きるようにという社会の圧力を受けるようになります。「The Accidental Malay」が2022年にシンガポールで刊行されると賛否が真っ二つに割れ、論争は今も続いています。
どなたかに「The Accidental Malay」をぜひ翻訳して出版していただけないかという期待を込めて、「The Accidental Malay」のような小説が出版されたことの意味を、『ミン』でユーハン監督が描こうとしたことと重ね合わせて考えてみたいと思います。

作品紹介

タレンタイム(Talentime)
ヤスミン・アフマド監督/マレーシア/2009年/120分/日本語字幕
高校生が音楽や演劇の才能を競いあうタレンタイム。決勝に残ったメルー、カーホウ、ハフィズ、そしてメルーの送迎担当のマヘシュは、それぞれ恋人や家族との関係で1人で抱えきれないほどの大きな困難を抱えたままタレンタイムの決勝当日を迎える。人はみな輝きを秘めているが、輝くかどうかを決めるのは自分ではない。

ラブン(Rabun)
ヤスミン・アフマド監督/マレーシア/2003年/90分/日本語字幕
オーキッドの父アタンと母イノムの物語。都会で暮らすアタンとイノムは「人間らしい暮らし」を求めて田舎に移り住もうとし、長く住んでいなかった田舎の家を改築しようとするが、田舎には田舎の人間関係があって一筋縄ではいかない。イノムがアタンの水浴びを手伝う場面は『グブラ』の劇中でも使われた。

ミン(Min)
ホー・ユーハン監督/マレーシア/2003年/90分/日本語字幕
教師のヤスミン(ミン)は、華人として生まれ、マレー人の養父母に育てられた。ミンは実の母の居場所を調べあて、電車に乗って母を訪ねていく。ミンの養父母を演じているのはヤスミン監督の両親。ヤスミン監督もミンの同僚教師役で登場する。

主催
 混成アジア映画研究会
協力
 京都大学東南アジア地域研究研究所
 科研費プロジェクト「東南アジア映画の物語と表現を読み解く」
問合せ
 malaysianfilm [at] cseas.kyoto-u.ac.jp