「東南アジアの都市居住」第9回定例研究会(ダイキンセミナー) | 京都大学 東南アジア地域研究研究所

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「東南アジアの都市居住」第9回定例研究会(ダイキンセミナー)

このセミナーシリーズは、ダイキン工業と東南アジア地域研究研究所(CSEAS)との産学共同研究プロジェクトの一環として開催しています。

報告者: 井原智彦(東京大学大学院新領域創成科学研究科環境システム学専攻・准教授)

タイトル: ジャカルタにおける緑化やエアコンなどの暑熱対策の導入効果の評価

言語: 日本語
開催方法: オンラインのみ

要旨:
気候変動により全球の気温は100年で1℃程度上昇したが、ヒートアイランド現象が加わる都市部の気温はさらに上昇している。ジャカルタは世界第2位の都市圏人口を誇り、暑熱対策の合理的な導入が望まれており、効果の事前評価が必要である。

本研究では、都市の街区形状・建物構造などのデータを整備した後、都市キャノピー・ビルエネルギー連成モデルを用い、屋上緑化(インテンシブ・エクステンシブ)や高反射率塗装による気温低減効果と冷房需要削減効果を評価した。電気料金に加えて導入や維持・管理なども含めて費用便益分析を実施したところ、3対策とも純便益も気温低減効果も正となった。エクステンシブ屋上緑化は純便益が大きく、最も優れていたことがわかった。

また、疫学調査を実施し、気温を説明変数として、エアコン有無別の睡眠困難および疲労の被害関数を開発した。都市キャノピー・ビルエネルギー連成モデルを用い、現在および気候変動や都市化が進展した将来、さらにエアコンの普及率を向上させた場合の、エアコンによる睡眠困難・疲労の低減効果および冷房需要を計算した。睡眠困難と疲労、冷房需要、そしてエアコンの製造や廃棄に伴う環境影響を、ライフサイクルアセスメントにより評価した。その結果、ジャカルタの電力は火力発電に依存しているため、現時点ではインバーターエアコンでも純便益が負となるが、電力の低炭素化が進めば純便益は正となることがわかった。

略歴:
2004年3月東京大学大学院工学系研究科地球システム工学専攻博士課程修了、博士(工学)。同年4月に産業技術総合研究所に入所。ライフサイクルアセスメント研究センター研究員、安全科学研究部門研究員を経て、2012年6月より東京大学大学院新領域創成科学研究科環境システム学専攻准教授(工学部システム創成学科を兼担)。現在、産業技術総合研究所客員研究員、名古屋大学非常勤講師などを兼務。

専門は、ライフサイクル思考に基づく都市における気候変動対策の設計、およびエネルギー技術や消費者行動のライフサイクルアセスメント。

主催:岡本正明、小林知(CSEAS)、岸健太(秋田公立美術大学)、粟飯原大、内山三晴(ダイキン工業)

問い合わせ:chika128[at]cseas.kyoto-u.ac.jp(担当:山田千佳)
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