EVENTS

【CSEAS X DAIKIN】バライ改築記念セレモニー・展示ウィーク

Balai Opening & Exhibition

”re ~ spire”

日時: 2025年12月8日(月)~14日(日)
場所: クタンダン地区バライ(インドネシア・スラバヤ市)
   https://maps.app.goo.gl/GgSYoTsF4Ue5kW8EA
共催: Operations for Habitat Studies(OHS)、UNTAGスラバヤ大学、スラバヤ工科大学(ITS)、スラバヤ市政府
協力: 現地企業、地域住民組織、アート・コレクティブ(※詳細は下記参照

産学連携による協創プロジェクト「CSEAS x DAIKIN共同研究」メンバーである岡本正明教授、岸健太客員教授、山田千佳准教授、マリク・アルプラディティア特定研究員、および粟飯原大連携研究員、内山三晴連携研究員が、Operations for Habitat Studies(OHS)ら現地パートナーと共に、2025年12月8日(月)~14日(日)にかけて、インドネシア・スラバヤ市にて、気候変動時代の新たな空調文化・技術の協創およびバライ(公民館)の改築に関するセレモニー及び展覧会を開催しました。クタンダン地区住民のみなさん、東ジャワ州副知事Emil Dardak氏、スラバヤ市長代理・環境研究開発局長Irvan Wahyudrajad氏、田子内進在スラバヤ日本国総領事、公共事業省建築科学技術研究所開発・革新チーム長Muhammad Nur Fajri Alfata氏、ダイキン・インドネシア社ディレクターBudi Mulia氏らが改築記念式典に出席し、建築家、研究者、アート・キュレーターらの説明を熱心に聞き、地域住民と意見交換を行いました。今後も学術・産業界・行政・地域コミュニティの連携により、地域の文化・慣習に根差した新たな空調文化の創出と発信に取り組みます。

プログラム

DAY 1 Dec. 8 (Mon.)
Introductory sessions for locals

Guest & Participants: Ketandan resident representatives & Balai users

Time schedule:

12:30–13:30 Lunch Reception
13:30–14:00  Building & Exhibition Tour
Sarah Inassari (Architact, Operation for Habitat Studies)
Lutfiah Setyo (Researcher, Operation for Habitat Studies)
14:00-14:15Cooling system briefing
Anugrah Yulianto (Researcher, Operation for Habitat Studies)
14:15-15:00Discussions
15:00-15:10Closing Remarks
Bintang Putra (Director, Operation for Habitat Studies)

DAY 2 Dec. 9 (Tue.)
Balai Opening, Municipal Government Session
Inauguration Session 1

Guest & Participants: Municipal Government Representatives, Community Leaders, Japanese Government Representative, Project Partners

Time Schedule:

10:00-10:05Opening Remarks
Anugrah Yulianto (Researcher, Operation for Habitat Studies)
10:05-10:20Welcome Ceremony
 “Remo Dance by Ketandan Youth”
10:20-10:30Prayers by local Muslim leader
10:30-10:50Welcome Speech
Fatchur Rahman (Head of RW Ketandan)
Retno Hastijanti (Dean of Faculty of Engineering, UNTAG Surabaya)
10:50-11:10Inaugural Speech
Irvan Wahyudrajat (Acting Mayor of Surabaya/ Head of the Environmental Research and Development Agency, Surabaya City Government)
11:10-11:40Guided Building Tour
Sarah Inassari (Architect, Operation for Habitat Studies)
Anugrah Yulianto (Researcher, Operation for Habitat Studies)
11:40-12:30Lunch & Discussions

DAY 3 Dec. 10 (Wed.)

Balai Opening, Provincial & Regional Government Session
Inauguration Session 2

Guest & Participants: Provincial Government, Japanese Government Representative, Academic & Corporate Partners

Time Schedule:

12:00-13:00Lunch Reception
13:00-13:10Welcome Speech
Nia Kurniati (Head of RW Ketandan)
13:10-13:30Key Speeches
Masaaki Okamoto(Vice Director, CSEAS, Kyoto University)
Susumu Takonai(Consul General, Consulate-General of Japan in Surabaya)
Budi Mulia(Director of PT Daikin Industries Indonesia)
13:30-13:45Inaugural Speech
Emil Dardak(Vice Governor of East Java)
13:45-13:55Prayers by local Muslim leader
13:55-14:25Guided Building Tour
Sarah Inassari (Architect, Operation for Habitat Studies)
Anugrah Yulianto (Researcher, Operation for Habitat Studies)
14:25-14:35Closing Ceremonial Dance By Ketandan Youth

DAY 4 Dec. 11 (Thu.)
Exhibition

Guest & Participants: Public

Balai Exhibition
Walking Tour

DAY 5 Dec. 12 (Fri.)
Discussion on Balai Future Planning

Guest & Participants: Public, Local Government & Community representatives

Balai Design Presentation by ITS Students
Building & Curatorial Tour
Community Discussion

DAY 6 Dec. 13 (Sat.)
Exhibition & Events

Guest & Participants: Public

Balai Exhibition
Architect Talk & Seminar
Neighbor’s event; Community Gathering

DAY 7 Dec. 14 (Sun.)
Closing

Guest & Participants: Public

Exhibition Closing
Neighbor’s event; Film Screening

メディア

本セレモニーの模様は地元メディアでも多数報じられました。

Major Media

Regional & Local Media

Partner official communication

レポート
『バライ改築記念によせて-都市空間を”呼吸”する』

産学連携による協創プロジェクト「CSEAS × DAIKIN共同研究」の一環として、2025年12月8日から14日にかけて、インドネシア東ジャワ州スラバヤ市グンテン区カンポン・クタンダンにおいて、RW(Rukun Warga:町内会)04のバライ(Balai:公民館/集会所)の改築記念式典および展示ウィークが開催されました。本取り組みは、気候変動が進行する都市環境のなかで、地域の文化や生活実践に根差した新たな空調のあり方を、研究・実装・対話を通じて探ることを目的としています。

期間中には、バライの改修を祝う式典が行われ、東ジャワ州副知事、スラバヤ市長代理、在スラバヤ日本国総領事、公共事業省建築科学技術研究所開発・革新チーム長、ダイキン・インドネシア社代表をはじめ、大学関係者、行政機関、地元企業、地域住民など、多様な関係者が参加しました。式典後には、改修内容や研究背景についての説明が行われ、参加者は実際にバライ内部を見学しながら、気候変動への対応や公共空間および空調の将来像について意見を交わしました。

本イベントの重要な構成要素の一つとして、Operations for Habitat Studies(OHS)による展示「RESPIRE:Ngangin ― バライと都市気候の再考」が、改修後のバライを会場として開催されました。本展示は、住民、研究者、行政、民間企業が関わってきた協働の過程そのものを可視化し、問い直す試みとして位置づけられています。

展示を通じて共有された中心的な関心は、高温化が加速するスラバヤという都市において、カンポン・コタと呼ばれる都市村落が、どのように暑熱と向き合ってきたのか、そして今後どのような応答が可能なのかという点でした。商業地域と居住地域が密接に混在するカンポン・コタでは、ヒートアイランド現象の影響が特に強く現れます。住民はこれまで、窓や扉の開閉、家具の配置、路地での過ごし方など、さまざまな工夫を積み重ねながら暑さに対応してきましたが、気温上昇の加速により、こうした実践だけでは対応が難しくなりつつあります。

展示タイトルである「RESPIRE:Ngangin」は、「呼吸する」「息をする」を意味する respire と、東ジャワで風を通し涼をとる行為を指す日常語「ンガンギン(ngangin)」を重ね合わせたものです。展示カタログでは、このコンセプトを次のように表現しています。

「RESPIREは、バライが空気の流れと人の関係性のなかで〈呼吸〉し、都市の気候変動に応答しながら、住民の生活のリズムを支え続ける存在であることを示す。」

本展示のキュレーターを務めたOHSのFithrotul Mumtaz氏は、「呼吸(respire)」を、調査と実践のプロセスそのものを示す概念として用いました。住民の語りや身体感覚、空間の使われ方に耳を澄ませて状況を受け取る段階は「tarik nafas(息を吸う)」に、知恵や分析、設計・技術の検討が往還しながら空間全体に行き渡る過程は「peredaran nafas(息が巡り、循環すること)」に、そして設計や改修、展示、制度設計として社会に応答を返す段階は「hembusan nafas(息を吐き出すこと)」になぞらえられました。このように「RESPIRE:Ngangin」は、完成された解答を示すのではなく、息を吸い、巡らせ、吐き出すという連続的なプロセスを通じて、空間がどのように理解され、更新され得るのかを問い続ける枠組みとして構想されました。

住民や関係者と共に取り組んだ幾度ものワークショップやグループ・ディスカッション、そして展示制作のプロセスを通じて、バライという空間がどのように理解され、使われてきたのかがあらためて浮かび上がってきました。バライは、行政手続きや会議、保健活動、宗教的な集まりといったフォーマルな機能を担う一方で、子どもたちの遊びや学習、文化活動、さらには東ジャワの文化の中核とも言える、人びとがのんびりと共に時間を過ごす「チャンクルック(cangkruk)」の場としても機能しています。

私たちがバライを訪れるたびに耳にしたのは、幼い子どもたちのはじける声や、青年会に参加する中学生が誕生日を祝われて大笑いする声、そして婦人会や住民の方々の尽きることのない談笑でした。展示では、こうした日常の声を録音として紹介する試みも行われており、それを聞いた際には胸に込み上げるものを覚えました。

展示ではさらに、こうした多層的な役割を表す比喩として「バライを一本の木として捉える」という視点も提示されました。東ジャワのカンポンにおいて木の下は、人びとが自然と集い、休み、話し、身を寄せる場所です。同様に、バライもまた、人びとが「ブルトゥドゥ(berteduh)」、すなわち暑さや雨をしのぐ場であると同時に、住民組織や行政サービス、保健、教育、文化活動など、多様な制度や実践と結びつく空間として機能してきたことが可視化されました。

インドネシアでは、国家レベルでカンポン・コタにおける自然換気を重視したパッシブ冷却の推進計画が進められていますが、本展示は、その重要性を踏まえつつ、現実の生活とのあいだに生じる緊張にも目を向けました。カンポンでもエアコンの使用が徐々に増えるなかで、パッシブな設計とアクティブな冷却をどのように組み合わせ、矛盾を最小化していくのかという問いが共有されました。

本プロジェクトでは、住民と密に協働しながら、バライに関する住民の感覚的な知識や微気候への理解を丁寧に言語化し、それを建築設計へと翻訳してきました。その結果、自然換気や建築的工夫によるパッシブ冷却と、省エネルギー型のアクティブ冷却を組み合わせた「ハイブリッド型」の空間が実現されました。

パッシブ冷却としては、対面に戸口や窓を配置し直すことで、室内に風の通り道を確保すると同時に、ジャワの伝統建築ジョグロ(Jogro)にも倣い、熱気を公民館上部に誘導する設計として、屋根を高くし、さらに各種換気口が配置されました。一方、能動的冷却による改修では、バライ内に可動式パネルの壁で区切られた小部屋2室を作り、ダイキン製エアコンを設置しました。より広いスペースを必要とする住民活動のために、これらの部屋は統合できるように設計されています。このスペースは、極端な高温時には住民が一時的に避難できる「地域クーリング・ハブ」としての役割も想定されています。さらに、インバーター式エアコンと非インバーター式エアコンのエネルギー使用量の違いを直接観測する取り組みの一環として、期間限定で各室に2種類のエアコンを設置し、一定期間ごとに交互に稼働させることで、今後の研究開発用のデータを取得する予定です。

エアコン導入にあたっては、その運用方法と費用負担のあり方が重要な検討事項となりました。本プロジェクトでは、将来的な他地域への応用も見据え、機器の設置・利用・費用負担の関係をどのように設計できるかを検討しています。その一つの実証の場としてクタンダンのバライでは、機器本体、設置、メンテナンス費用をダイキン側が負担し、電気代はエアコンの利用に応じた Pay for Use の収益から支払う形を採用しました。収益のうち電気代を差し引いた残額については、OHS と住民が毎年協議を行い、住民福祉やバライの運営・改善など、エアコン以外の用途に活用することとしています。あわせて、本取り組みでは、東ジャワ州マラン市を拠点とする環境・エネルギー分野のスタートアップ myECO と協働し、省エネルギーな使い方を自然に促す運用設計も組み込まれました。設定温度や可動式パーティションの使い方によって実質的な電気代に差が生じる仕組みとすることで、利用者が空調の使い方とエネルギー消費の関係を体感的に理解できるよう工夫されています。技術導入にとどまらない、技術と社会を結びつける仕掛けづくりです。

町内会長夫人の Nia Kurniati氏は、エアコンが設置された部屋について、早速活用した感想を次のように述べています。子どもたちの学習や健診の際に涼しい部屋があることで、子どもたちが落ち着いて活動に参加できるようになったとのことでした。式典および展示の期間中には、新しく導入されたアプリを使いながら、エアコンのある空間を楽しそうに利用する住民の姿も多く見られました。その空間では、自然と「チャンクルック(cangkruk)」がはずみ、性別や年齢を問わず人びとが集まり、床にくつろぎながら会話を交わす光景が広がっていました。こうした様子を目にして、私は、住民と十分に話し合いながら導入されたエアコンが、従来のバライが持っていた「木」としての機能、すなわち人びとを引き寄せ、支える役割を、一層強めているのだと感じました。

改築式典において、スラバヤ市長代理として出席した開発計画・研究開発企画庁長官の Irvan Wahyudrajat 氏は、このバライを「気候変動の課題に対応した省エネルギー公共空間づくりの好例」であり、市内にある1,361の町内会にとってのロールモデルになり得ると述べました。東ジャワ州副知事の Emil Dardak 氏は、涼しさの確保にとどまらず、地元観光業や中小零細事業(UMKM)など、住民による多様な活用の可能性が広がった点を評価しました。また、在スラバヤ日本国総領事の 田子内進 氏は、本プロジェクトが学術研究、民間企業、行政、地域社会の連携によって実現した点を高く評価し、草の根レベルから気候変動に取り組む新しい国際協力の形であると述べました。

本展示および改築記念セレモニーは、完成した建物を称える場であると同時に、バライをめぐる実践が今後も更新され続けることを前提とした「途中経過の共有」の場でもありました。バライは、行政サービスの拠点であり、文化活動や展示、地域経済の場であり、同時に気候変動に対応する都市インフラの最小単位の中枢として再構想されています。都市で加速する気候変動やヒートアイランド現象に対して、日常的な共同空間のスケールからどのような応答が可能なのか。本取り組みは、インドネシア東ジャワ州スラバヤ市グンテン区カンポン・クタンダンを起点として、東ジャワ州、さらには他地域へと対話を広げていくための出発点となることを目指しています。

執筆:山田 千佳

フォトギャラリー

  DAY 1  

改築を祝う地元住民とメンバー

  DAY 2  

バライ改築デザインを担当したOHSサラ・イナッサリ建築家による説明を聞く来賓

  DAY 3  

  DAY 4-7

協力:

現地企業
myECO(エネルギーIoT・環境データ活用)
BeCool(屋根用遮熱塗料・熱環境対策)
Surabaya Satu(建設・施工)

地域住民組織
・Pokdarwis Cak Markeso(地域観光・文化拠点の運営)
Karang Taruna Ketandan(地域青年活動)

アート・コレクティブ
HANDPROV(壁画・空間ビジュアル制作)
ARTCHE MIST(クリエイティブイベント企画運営)
Krambel Art Media(アート実践デジタルアーカイブ)
Readesign Magazine(アート批評マガジン)

Contact:
OKAMOTO, Masaaki 岡本正明
YAMADA, Chika 山田千佳
cseasxdaikin-admin◎cseas.kyoto-u.ac.jp(◎⇒@)

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