当研究所は京都精華大学アフリカ・アジア現代文化研究センター(CAACCS)との共催で、ビジュアル・ドキュメンタリー・プロジェクト(VDP) の過去の入選作品より2作品の上映とトークイベントを開催します。当日はベトナムとインドネシアから3名の監督をお招きし、制作の背景について伺いながら、死生観、パートナーシップや家族観、現代社会を生きる女性としての経験を共有し、考察を深めます。なお本イベントはCAACCS現代アフリカ・アジア講座2025「表現でみるアフリカ・アジア社会とその課題」第4回講座として開催されます。
プログラム
| 19:00–19:05 | イントロダクション |
| 19:05–19:45 | 作品紹介と上映『8月の手紙』 |
| 19:45–20:25 | 作品紹介と上映『伴侶さがし』 |
| 20:25–21:00 | トーク |
ナビゲーター
ナンミャケーカイン(京都精華大学国際文化学部特任准教授)
藤枝絢子(京都精華大学国際文化学部准教授)
トーク登壇者
マイ・フエン・チー(通称チー・マイ)監督(ベトナム)
スアン・ハー監督(ベトナム)
ワフユ・ウタミ監督(インドネシア)
居原田遥(キュレーター、京都芸術大学講師)
【通訳】辻井美穂
上映作品
1)チー・マイ&スアン・ハー監督作品
「8月の手紙」 (26分/ベトナム/ベトナム語/2021/日英字幕付)
VDP作品の募集の知らせがもたらされたのは、映画作家であるチー・マイが父親の命日に亡き父を偲ぶとともに、甥の誕生日を祝っていた8月のことだった。パンデミックによるロックダウンがもたらした静寂の中、彼女は親友であるアーティスト、スアン・ハーに手紙を書き、2人の共通言語である映像を使って「死と生」というテーマに思いを巡らせようと誘った。『8月の手紙』は、2つの都市を往復する書簡形式の視覚的モンタージュとして、2人の監督やその家族の私的な物語を織り混ぜながら、愛と悲しみ、ケア、そして親密さという営みについての思索を紡ぎ出している。ここで映し出されているものは、現代ベトナムの淡い肖像であり、しぐさや息づかいに宿る記憶と絆だ。

2)ワフユ・ウタミ監督作品
「伴侶さがし」(30分/インドネシア/インドネシア語、ジャワ語/2020/日英字幕付)
『伴侶さがし』は、高齢男性のバスリが再婚を願う気持ち、その期待と彼が向き合う現実についての物語だ。本作では、恋愛ものにありがちな、常に美しく完璧なものという理想世界の観念とは違う愛の見方が描かれる。シンプルで現実に即した愛情表現を描く本作は、親密さを示す単純なしぐさ、たとえば、新郎と新婦の言い争いや、彼らが自尊心から相手に本当の気持ちを伝えるのを思いとどまる様子などを取り上げる。この作品では、2つの別々の街で離れて暮らし、働く2人が抱える葛藤にも迫る。

登壇者紹介

マイ・フエン・チー(通称チー・マイ)は記憶、強制退去や帰属問題を追究するベトナム人の脚本家兼監督である。彼女は映画制作を、埋もれた歴史や声を掘り起こすために長期間にわたりコミュニティと協働して取り組む、ケアの行為として捉えている。監督としてのデビュー作となった短編ドキュメンタリー『Down The Stream』はVimeoの2015年ベスト・オブ・ザ・イヤー賞の最終選考作品に、共同監督を務めた『The Girl from Daklak』(2021年)はポルトガルのインディリスボア国際映画祭でプレミア上映されシルヴェストレ賞にノミネートされている。そしてニューヨークアジア映画祭でも上映された短編フィクション映画監督デビュー作『The River Runs Still』(2024年)、アルジャジーラの委嘱を受けて制作した最新作『50 Years of Forgetting』(2025年)が続く。現在はメコン川沿いに暮らす無国籍の家族たちを描く長編フィクション『The River Knows Our Names』の制作に取り組んでおり、この企画はタレンツ・トーキョー・アワードのネクスト・マスターズ・サポートプログラム(NMSP)に採択されるなど、国際的にも注目されている。
スアン・ハーはアーティスト兼オーガナイザーとしての実践を営むアートワーカーである。映像、インスタレーション、コンセプチュアルアートを横断する活動を通じ、個と集団の幻想を視覚的な語りへと変換し、アイデンティティの流動性、場の無常や社会的・環境的変容の只中における文化的継承の脆弱性について検証する場を、創出する。彼女の作品は、第25回アジア・アヴァンギャルド映画祭(M+ミュージアム、香港)、Painting with Light Film Festival 2022(シンガポール国立美術館)、京都大学VDPプロジェクト2021、ジャカルタ・ビエンナーレESOK 2021(インドネシア国民覚醒博物館)のほか、独立系機関系を問わず国内外の様々なアートスペースで紹介され、展示されている。芸術実践と並行してスアン・ハはベトナムにおけるローカルアートコミュニティの育成に深く関わっている。彼女はChaosdowntown Cháo(ホーチミン市、2015–2019年)の共同創設者であり、A Sông(ダナン、2019年–現在)の創設者である。オーストラリア芸術評議会による「国際未来リーダープログラム2022–23」の受賞歴があり、最近ではプリンス・クラウス基金(オランダ)より「環境危機への文化的・芸術的対応2024(CAREC)」フェローズ賞を受賞した。


ワフユ・ウタミは、インドネシア、ジャワ州中部ウォノギリ生まれの映像作家・アーティストである。インドネシア国立芸術大学ジョグジャカルタ校(ISI)で修士レベル課程を修了。2016年以降、自主制作でドキュメンタリー作品を次々と発表し、作品は国内外の映画祭で上映され、インドネシア国立美術館やシンガポールラサール大学現代芸術研究所(ICA)などにて展示されている。現在はジョグジャ・フィルム・アカデミーで常勤講師を務める。
居原田遥は京都芸術大学大学院芸術研究科講師、インディペンデントキュレーター。沖縄をはじめとするアジアの政治・社会課題や困難と向きあう芸術文化のあり方・活かし方を研究しながら、アーティストたちと共同するキュレーター、アクティビストとして活動。これまでの主な実践に一般社団法人Docu Athanとの共同や「Masking/Unmasking Death 死をマスクする/仮面を剥がす」(東京芸術大学大学美術館陳列館、2022年)展企画キュレーター、「当意即妙ー芸術文化の抵抗戦略」(京都芸術センター、2024年)展企画など。京都市立芸術大学美術学部非常勤講師、沖縄大学地域研究所特別研究員。

問い合わせ
京都大学東南アジア地域研究研究所VDP事務局(vdp [at] cseas.kyoto-u.ac.jp)または
京都精華大学アフリカ・アジア現代文化研究センター(caaccs [at] kyoto-seika.ca.jp)
([at]を@に置き換えてください)