中西嘉宏准教授が『ロヒンギャ危機─「民族浄化」の真相』(中公新書)により、第33回アジア・太平洋賞特別賞を受賞しました。
アジア・太平洋賞は、アジア太平洋地域に関する優れた本を著した研究者らに贈られます。
京都大学ニュース
https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news/2021-10-14
毎日新聞2021年10月8日社告
https://mainichi.jp/articles/20211008/ddm/001/040/122000c
一般社団法人 アジア調査会
http://www.aarc.or.jp/index.html
『ロヒンギャ危機─「民族浄化」の真相』(中西嘉宏著、中公新書、2021年)
https://www.chuko.co.jp/shinsho/2021/01/102629.html
スタッフ紹介 中西嘉宏
https://kyoto.cseas.kyoto-u.ac.jp/staff/nakanishi-yoshihiro/
毎日新聞2021年11月19日(金)朝刊に第33回アジア・太平洋賞の特集記事が掲載され、大賞作品、特別賞3作品それぞれへの選評と著者の言葉が紹介されました。『ロヒンギャ危機』については選考委員の五百旗頭真氏による選評とともに、「「国際的な正義」に警鐘」と題した著者の言葉が紹介されました。
以下は、表彰式を終えての中西嘉宏准教授のコメントです。
大変光栄なことに、アジア・太平洋賞特別賞を受賞することになり、先日、表彰式に出席しました。講評では、選考委員会委員長の五百旗頭真先生から「本書を日本社会が得たことは、大きな幸いと言わねばならないであろう」という過分な言葉をいただきました。
この言葉は、企画から書店に並ぶまで丁寧に仕事を進めてくださった、編集担当者の吉田亮子さんをはじめとする関係者全員に対する賛辞でもあり、とてもうれしく思いました。
2017年のロヒンギャ危機発生時、私はミャンマーで在外研究中でしたが、事件について現地ではさまざまな解釈が広がりました。すべてミャンマー軍が起こした自作自演だとか、グローバル・ジハード主義者による仏教徒への攻撃から国軍は国を護ったんだとか、そういったものです。
敵意に満ちた理解ばかりで、いったい何が起きたのかすらよくわからない、なかなかの難問なわけです。そこで、「敵を憎むな、判断が鈍る」という有名なマフィア映画のセリフを頭に置いて、常に俯瞰した視点を持つよう心がけて本書を執筆しました。
私の試みがどれほどうまくいったのか、またそれで正しかったのかは、いまも自信があるわけではありません。書き手は皆そうでしょうが、自分で読み返すと粗ばかり目立ちます。ただ、今回の受賞で少しは世間のお役に立てたのかなと救われた気持ちにはなりました。
本書で扱った課題が解決に向かう気配はいっこうにみえず、むしろ現地の政情不安で解決への道がますます遠ざかっています。受賞を励みに、これからも研究、発信、双方で努力を続けたいと思います。
(2021年11月22日追記)