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簡易DNA抽出法とLAMP検出法を組み合わせたアフリカ豚熱の高感度なフィールド検査法の開発:豚全血を用いたベトナムでの評価

2023.04.07

当研究所・ベトナム国立農業大学・宮崎大学の国際共同研究チーム(研究代表者:山崎渉教授)がアフリカ豚熱を農場で診断できる高精度・迅速・安価な検査法を開発しました。アフリカ豚熱は感染した豚の90%以上が死亡するウイルス感染症で、有効な予防法も治療法もありません。アフリカ豚熱は2018年から中国、2019年から東南アジアで流行拡大を続け、現在では世界流行(パンデミック)を起こしています。世界動物保健機関によれば、中国での経済被害は実に1410億米ドルにのぼります(2019年時点)。東南アジアでの経済被害は甚大ですが、算出されていないため不明です。

アフリカ豚熱流行の予防には早期発見・早期防疫活動が重要です。従来の検査法は高価なリアルタイムPCR測定機や試薬を必要とするため、大都市にある研究機関でしか診断ができませんでした。サンプル輸送のタイムロスや高価な検査費用などが早期発見のボトルネックとなっていました。新開発した検査法は従来の検査法と100%の精度を示し、費用は100円以下、所要時間は1時間以内(従来の検査法は1000円以上、3時間が必要)、さらに発生現場の農場で実施できる、といった様々な利点があります。流行現場での早期発見・早期防疫活動を推進するために、当研究所はベトナム国立農業大学およびフィリピン大学ロスバニョス校と共同して、新開発した検査法の導入を進めています。

本研究は科学雑誌『Veterinary Medicine Science』オンライン版(2023年4月3日付)に掲載されました。本研究は日アセアン協働による超学際生存基盤研究の推進プロジェクトの支援を受けています。


研究者情報

山崎渉 京都大学教育研究活動データベース


書誌情報

タイトルDevelopment of a highly sensitive point-of-care test for African swine fever that combines EZ-Fast DNA extraction with LAMP detection: Evaluation using naturally infected swine whole blood samples from Vietnam
著者Ngan MT, Thi My Le H,  Xuan Dang V, Thi Bich Ngoc T, Phan LV, Thi Hoa N, Quang Lam T, Thi Lan N, Notsu K, Sekiguchi S, Yamazaki Y, Yamazaki W.
掲載誌Veterinary Medicine and Science
DOI10.1002/vms3.1124