共編者からの紹介
本書は、本研究所の共同利用・共同研究拠点「地域情報資源の共有化と相関型地域研究の推進拠点」(CIRAS)および東北大学東北アジア研究センターの共同研究として、実質的に5年間にわたって実施した中央ユーラシアの女性や家族をめぐる研究課題の成果を提示すべく、アジア環太平洋研究叢書第6巻として刊行されました。振り返ってみると、中央ユーラシアを研究対象とする歴史学者と文化人類学者の協働により、そして関心を共有する中央ユーラシアを超えた地域の多様な研究者との対話により、いくつかのテーマが肉付けされ、議論が磨かれていき、共同研究の醍醐味を味わったように感じています。
第1章から第3章は、相互に連関しており、19世紀末から20世紀初頭にかけての中央ユーラシアと中東地域の知識人らのつながりをムスリム女性をめぐる議論を軸に掘り起こしています。第4章と第5章では、文化人類学的な視点から、中央アジアの現代の結婚をめぐる重要な事象を近現代史的文脈を踏まえて分析しています。また、資料紹介として、中央ユーラシア域内のヴォルガ・ウラル地域と中央アジアの間の女性をめぐる言説の架橋や、そうした言説の歴史的連続性の解明を念頭に、女性雑誌の目録が作成されています。国際書院のHPで、目次、まえがき、索引がご覧いただけます。
なお、本書で帯谷が執筆した、ムスリム女性の解放を唱えたロシア人女性翻訳家オリガ・レベヂェヴァに関する論考のいわばダイジェスト版が、「女性翻訳家がつないだイスラーム的男女平等論」として『アジア人物史 第10巻 民族解放の夢』(集英社、2023年)に所収されています。(帯谷知可)
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