〈研究成果の公開〉インドネシアにおける物質使用障害の再発予防のための遠隔グループ療法:開発過程とパイロット試験結果 | 京都大学 東南アジア地域研究研究所

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〈研究成果の公開〉インドネシアにおける物質使用障害の再発予防のための遠隔グループ療法:開発過程とパイロット試験結果

2024.06.26

インドネシアの精神作用物質を使用する人々は、多くの困難を抱えています。社会的スティグマに直面し(不道徳ラベル)、法執行機関に逮捕・投獄され(犯罪者ラベル)、過剰に医療化されて依存症や精神医学の問題と見做されたりしています(患者ラベル)。こうしたラベルは、しばしば法外に高額な「リハビリテーション産業」の消費者として、彼ら彼女らを強制的に商品化してきました。一方、精神作用物質を使用する人々のごく一部は、特定の物質の使用をコントロールできないことを特徴とする物質使用障害(substance use disorder: SUD)をもち、医療を本人自身が求めていることも事実です。しかし、前述の問題等により、望んでいる医療が受けられなかったり、入院・入所を強制する治療そのものに苦しんだりすることが多いとの報告があります。そこで、坂本龍太准教授、オフィンニ ユディル特定助教(京都大学白眉センター特定助教)、および山田千佳助教らの研究チームは、医療従事者やSUD経験者と協力し、遠隔会議システムを利用したSUDのための心理療法のインドネシア現地版の開発を行い、そのパイロット試験結果を報告しました。

具体的には、日本で確立されている再発予防の心理療法を参考に、インドネシアの共同研究者との意見交換を重ね、インドネシア版薬物依存症再発予防遠隔プログラム(tele-Indo-DARPP)を開発し、SUDと診断された8名を対象に、3か月間、SUD経験のあるカウンセラーと医師が協働してプログラムを提供するパイロット試験を行いました。その結果、SUD当事者および治療提供者いずれにとってもプログラムは受け入れやすく、実用的であることがわかりました。同チームは、プログラムの有効性を調べるための研究を現在行っています。

本研究は学術雑誌「JMIR Formative Research」(2024年6月18日付)に掲載されました。

プログラム作成のためのディスカッション
プログラム試行中の様子

共著者からのひとこと

日本と同様にインドネシアでも、違法薬物の使用が原因で逮捕されれば裁判所の命令により入院治療や入所リハビリが強制される現状があります。しかし、そのような「処遇」を受けた人の話を伺うと、子どもと引き離された辛さ、仕事復帰の困難さ、学業継続への不安といった悩みが多く語られます。本研究では、希望する回に、希望する場所から参加できるオンラインの心理療法プログラムを提案しました。また、タブー視されがちな話題でも、楽しくも真面目におしゃべりできる雰囲気を大切に、当事者と医療従事者が心理療法の中で協働する形式となるよう、工夫しました。

研究者情報

坂本龍太 京都大学教育研究活動データベース
オフィンニ ユディル 京都大学教育研究活動データベース
山田千佳 京都大学教育研究活動データベース

書誌情報

タイトルRelapse Prevention Group Therapy in Indonesia Involving Peers via Videoconferencing for Substance Use Disorder: Development and Feasibility Study
著者Siste K, Ophinni Y, Hanafi E, Yamada C, Novalino R, Limawan AP, Beatrice E, Rafelia V, Alison P, Matsumoto T, Sakamoto R
掲載誌JMIR Formative Research
DOI10.2196/50452

問い合わせ先

<研究内容に関する問い合わせ>
京都大学東南アジア地域研究研究所
助教 山田 千佳
E-mail: chika128 [at] cseas.kyoto-u.ac.jp([at]は@に置き換えてください)

<広報に関する問い合わせ>
京都大学東南アジア地域研究研究所
広報委員会
問い合わせフォーム: https://bit.ly/4dAtaj9