著者による紹介
本書は、近代初期のヨーロッパで、東洋の十数言語にわたる貴重な写本を集めたトーマス・エルペニウス(1624年没)の個人蔵書に関する初めての包括的な研究書です。エルペニウスはオランダの著名なアラビア語研究者、東洋学者であり、ライデン大学で初代アラビア語教授を務めました。本書で再構成した彼の蔵書は何世紀にもわたって学者たちの議論の中心となってきた希少資料群であり、中には唯一無二のものも含まれます。イスラーム文学やアジアの言語の豊かな情報源として広く知られていたこのコレクションは、ジョージ・ヴィリアーズ(バッキンガム公、1628年没)が購入し、最終的には彼の死後、妻であったキャサリン・ヴィリアーズが1632年6月にケンブリッジ大学図書館に寄贈しました。本書で私は、エルペニウスの生涯と功績、彼の手記やケンブリッジにおけるそれらの受容と保存について詳述しています。トーマス・エルペニウスは、ヨーロッパ植民地主義の揺籃期に東洋とアジアの文献を研究しました。だからこそ、エルペニウスのコレクションを調査すると、彼と周囲の人々のほとんどが、東洋の人種や肌の色や血統、あるいはアジアの香辛料や鉱脈や金鉱ではなく、東洋の文献の遺産を探求したいと考えていたことがわかります。初期の東洋学者たちは、東洋の言語や文学を学ぶことに熱意を注いでいたのです。(マジッド・ダネシュガル)
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