21世紀最初の10年――スハルト体制崩壊後のインドネシアの政治的言説は、嵐の中の大波のように上下した。いわば「権力の真空状態」の中で生まれた楽観主義のエネルギーは、いくらも経たないうちに方向性を失い、幻滅と絶望に変わる。政治的・社会的「現実」の壁の前に楽観から悲観へと移ろうことは、体制変換期にありがちな、一種当然な反応であろう。ただ、こうした言説を伝える媒体が多様化し、「書かれたもの」が中心で、しかも一方向的な従来型のメディアから、視覚的で双方向的なメディアが普及したことは、政治的言説の振幅の幅を大きくしたことは間違いない。権威主義的「新秩序」が崩れた後、インドネシアは、そのアイデンティティをどう再定義しようとしたのか? 「スクリーンの文化」(映画、テレビ、ソーシャルメディア)に登場した表現豊かな言説の分析を通じて、インドネシアの政治文化の「今」を生き生きと語ると同時に、「インドネシア」とは何だったのか?その歴史性をも明らかにする意欲作。
Contents
List of Illustrations
Acknowledgements
1. Remembering the Future
2. Post-Islamism: Faith, Fun, and Fortune
3. Cinematic Battle
4. A Past Dismembered and Disremembered
5. The Impossibility of History?
6. Ethnic Minority Under Erasure
7. K-Pop and Gendered Asianization
8. From Screen to Street Politics
Bibliography
Index