木村里子 本研究所准教授、柴田万桜子 京都大学大学院農学研究科応用生物科学専攻修士課程院生(本研究所GCR共同研究員)らの研究チームは、無人航空機(UAV)を用いて、野生に生息し自由遊泳するスナメリ(Neophocaena asiaeorientalis)の体長を初めて定量的に推定しました。
研究では、浮上時の呼吸行動に着目し、体軸が最も水平に近く、水面歪みの影響が最小となる瞬間を測定対象として抽出しました。画像中のピクセル長を実長に変換するため、陸上および海上に既知サイズの基準物体を設置し、撮影高度に依存したスケール補正モデルを構築した点を工夫しました。その結果、測定誤差は1.6–3.0%と非常に小さく、同一個体から複数回得られた測定値の変動係数も0.7%と高い再現性が確認されました。推定された体長は93.8–168.0 cmの範囲に分布し、これは既報の漂着個体データと整合的であると考えています。
本研究は、野外で生息するスナメリの体長分布を初めて明らかにするとともに、小型鯨類におけるUAVによる形態計測のための再現可能な標準的手法を提示するものです。これらの成果は、将来的に健康状態や繁殖状況の評価、ならびに保全施策立案のための基礎情報収集に重要な役割を果たすと期待されます。
本研究は、学術誌『Mammal Study』(2026年1月26日)に掲載されました。

共著者によるコメント
「ドローンを使えば動物をはっきりと観察できるらしい」。UAVの登場により、鯨類も容易に、かつ鮮明に撮影できる時代が到来しました。しかし、美しい映像で終わらせず、いかにサイエンスに昇華できるのか──その問いから本研究は始まりました。研究費を獲得し、機体を購入し、飛行技術や関連法規を学び、初めて野生のスナメリを映像として捉えた瞬間の感動は、今でも強く印象に残っています。本研究ではまず、これまで把握が困難であった、野生の生きた個体の体長測定に取り組みました。私たちの研究チームにとって、ドローンを用いた初めての報告です。現在、関連研究を進めており、今後の成果についても順次報告していく予定です。(木村里子)
スナメリは水族館などで親しまれている一方、野生下での姿は観察の難しさから驚くほど知られていません。特に、野生個体に対しては非侵襲的な調査が求められるため、体サイズの把握は容易ではありませんでした。本研究では、ドローンという空からの視点を用いることで体サイズ推定を行いました。本研究で示した手法は、今後の生態研究や保全評価において重要な情報として活用されることが期待されます。(柴田万桜子)
出版情報
| タイトル | The First Estimates of Body Lengths in Free-Ranging Narrow-Ridged Finless Porpoises Using Unmanned Aerial Vehicle Footage |
| 著者名 | Shibata, Maoko, Ogawa, Mayu I., Kimura, Satoko S., and Yoda, Ken |
| 掲載誌 | Mammal Study |
| DOI | 10.3106/ms2025-0023 |
研究者情報
木村里子 京都大学教育研究活動データベース
柴田万桜子 京都大学大学院農学研究科応用生物科学専攻修士課程在学
関連情報
京都大学東南アジア地域研究研究所「グローバル共生に向けた東南アジア地域研究の国際共同拠点」共同研究(R7-2-5)
〈研究成果の公開〉スナメリ鳴音と船舶騒音を高精度に抽出する新しい検出アプローチ(2025年9月3日)
問い合わせ先
<研究内容に関する問い合わせ>
京都大学東南アジア地域研究研究所
准教授 木村里子
E-mail: kimura [at] cseas.kyoto-u.ac.jp([at]は@に置き換えてください)
<広報に関する問い合わせ>
京都大学東南アジア地域研究研究所
広報委員会
問い合わせフォーム: https://bit.ly/4dAtaj9