使用言語: 英語
発表者: テラ・トゥン (香港大学研究員、京都大学東南アジア地域研究研究所連携助教)
司会者: 土屋 喜生(京都大学東南アジア地域研究研究所)
要旨: 東南アジア研究において、在来の歴史記述法と西洋の歴史学手法との出会いについては長らく注目されることがありませんでした。テラ・トゥン氏はEpistemology of the Past: Texts, History, and Intellectuals of Cambodia, 1855–1970(過去の認識論─1855-1970年におけるカンボジアのテキスト・歴史・知識人)において、2つの特徴的な歴史表現様式の接触とそれが社会にもたらした影響を、初めて批判的かつ体系的に叙述しました。カンボジアの前植民地支配期、植民地支配期、独立後の歴史言説を検証することで、さまざまな視点を持つカンボジア人学者たちが、互いに異なる歴史像を提唱していたことを明らかにしています。
本書は、東南アジア研究における最大の在来言語資料のコレクションを紹介しています。著者は前植民地支配期の歴史記述法が、西洋の歴史学手法と並行して存続し、独自の認識論をもつユニークな知識体系を作り上げたと論じています。本書は、植民地期および独立後の東南アジア、特に在来の認識論、知識生産の歴史、異文化交流と翻訳、さらに歴史の叙述に関わる研究にとって、きわめて重要な貢献となるでしょう。
略歴:テラ・トゥン氏はカンボジア出身の歴史研究者。現在、香港大学研究員、リー・コン・チアン シンガポール国立大学(NUS)–スタンフォード大学東南アジア研究特別研究員(2024–25年度)。京都大学東南アジア地域研究研究所特定研究員(2019–2022年)。
関連情報:
ビジターズボイス「現在のプロジェクト:1850年代から1970年代にかけてのカンボジアのテキスト、歴史、知識人」