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教員の著作が刊行されました
小林知編著『カンボジアは変わったのか 「体制移行」の長期観察 1993〜2023』(めこん)

2024.06.21

編著者からの紹介

 より良い社会、を作りたいと思いませんか?
 より良い社会に暮らしたい、という希望を否定する人はおそらくいないでしょう。でも、より良い社会とは、どのようにしたら作れるものなのでしょうか?また、より良い社会とは、一体どのような社会なのでしょうか?このような質問の答えを探すには、「より良い」という言葉が何を指すものなのかを、まずよく考える必要がありそうです。
 ここで紹介する本は、カンボジアという国を取り上げて、いまから30年ほど前にスタートした、より良い社会を作るという一国のチャレンジの成果を振り返るものです。カンボジアは、東南アジアのインドシナ半島の南にあります。日本の半分ほどの面積の小さな国です。本書では、そのカンボジアの自然環境、政治経済、社会、文化が、最近30年の間に、どのような変化を遂げてきたのかという歩みを、現地で調査の経験をもつ12名の日本人専門家の研究報告を通じて考えました。
 カンボジアの社会と人々の生活は、1990年代初頭までたいへん困難な状況にありました。1970年代には、ポル・ポト政権(クメール・ルージュとも呼ばれます)による共産主義革命があり、政治的な動機にもとづく殺人や飢餓で多くの人命が失われ、社会の基盤が崩壊するような負の影響を受けました。その後国際的に孤立していた1980年代を経て、同国が革命と紛争からの復興を本格化させたのは、1990年代以降です。戦火が止み、社会が安定し、経済活動が活発化しました。
 カンボジアの人々はいま、30年前に比べると、格段に発展した生活を送っています。より良い社会を作るという1990年代以降のチャレンジの多くが、国際的な援助に支えられて、成功したのです。最近は、海外旅行を楽しむ富裕層も増えました。しかし、国内では広大な面積の森林が消え、かつて豊富だった魚が獲れなくなりました。貨幣中心の経済が深く浸透し、生活のため仕事を探しに家を離れる人も増えました。心中の政治的信条を自由に表現できない、というストレスを抱える人もいるようです。
 より良い社会の実現は、我々の多くが希望することです。それだからこそ、「より良い」という言葉の意味を定めることの難しさや、そもそも社会が変わるとはどのようなプロセスなのかを、この本を手に取って、考えてみませんか。(小林 知

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