====トピックス============================
1. お知らせ
2. 研究集会とイベント
3. 出版
4. 講演・報告
5. ポッドキャスト「ブックトーク・オン・アジア」
6. メディアへの露出
7. 最近のイベント
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1. お知らせ
【10月のGet Together】
・10月23日(木)12時30分より、月例の所内歓送迎会Get Togetherが稲盛財団記念館3階小会議室II(I332)にて開催されます。今回ゲストとしてお迎えする招へい研究者の方々の紹介ページは、こちらからご覧いただけます。
【新たな訪問研究者のみなさん】
・ホセ エレアザール レイネス ベルサーレス(Jose Eleazar Reynes Bersales)さん(文化人類学)が招へい研究員として11月1日に着任され、2026年4月30日まで研究所に滞在される予定です。
【異動のお知らせ】
・マリク・アルプラディティア(Malik, Alpraditia)さん(工学)がCSEAS・ダイキン共同研究特定研究員として10月1日に着任されました。
【ビジターズ・ボイス】訪問研究者の方々へのインタビュー「ビジターズ・ボイス」に新たに記事が加わりました。
・マラディ・オウム招へい研究員インタビュー「The Vital Roles of Libraries and Archives」
【公募】京都⼤学(地域研究学系)東南アジア地域研究研究所 准教授の公募(応募期限:2025年11月30日(日)日本時間23時59分必着)
【公募】VDP2025(テーマ:「逸脱」を生きる)短編ドキュメンタリー作品の募集を開始しました(応募締切2025年11月30日)
【公募】国際交流基金東南アジアパートナーシッププログラムより2件の公募が出ております。
客員フェローシップ(招へい)/日ASEANグローバルパートナーシップ強化助成(いずれも応募締切は2025年12月2日13時(日本時間))
【公募】2025年度京都大学国際シンポジウムへの参加者の募集が出ております。
Kyoto University International Symposium 2025 on Education and Research in Global Environmental Studies in Asia(2025年12月2日~3日、インドネシア・ボゴール)
【お知らせ】山田千佳准教授の講義動画「すぐにわかる「ドラッグ」をめぐる社会運動:地域研究で読み解くインドネシアのハーム・リダクション」が公開されました。
【受賞】土屋喜生助教がEmplacing East Timor: Regime Change and Knowledge Production, 1860–2010(University of Hawai‘i Press, 2024)により、第23回(2025年度)東南アジア史学会賞を受賞されました。おめでとうございます。
【受賞】櫻田智恵 GCR共同研究員(上智大学助教)が『国王奉迎のタイ現代史—プーミポンの行幸とその映画』(ミネルヴァ書房、2023年)により第23回東南アジア史学会賞を受賞されました。おめでとうございます。
2. 研究集会とイベント
・International Conference – Encouraging Local Development in Southeast Asian Countries: Public Administration and Political Perspectives
日時:2025年10月25日(土)9:00–16:00(日本時間)/ 7:00–14:00(インドネシア時間)
場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室(I333)およびオンライン
主催:Indonesian Association for Public Administration Scientists (AsIAN) / 京都大学東南アジア地域研究研究所
・同志社大学人文科学研究所 第111回公開講演会
日時:2025年10月25日(土)13:30–17:00(開場13:00)
場所:同志社大学今出川キャンパス良心館RY107教室
テーマ:変わりゆく熱帯の自然と住民たちの生業―日本人が視たボルネオのこれまでとこれから
・Joint Dissemination Seminar
日時:2025年10月29日(水)14:00–(日本時間)
場所:稲盛財団記念館2階セミナー室(I213)およびオンライン(Zoom)
テーマ:Maritime Security Governance against Illegal, Unreported, and Unregulated (IUU) Fishing: Comparative Study on Japan and Indonesia
登壇者:Rafyoga Jehan Pratama Irsadanar(ムハマディヤ大学ジョグジャカルタ)、木場紗綾(神戸市外国語大学)
討論者:岡本正明(CSEAS)、Indra Alverdian(政策研究大学院大学)
司会:Mohammad Syaban(CSEAS博士研究員)
・特別セミナー
日時:2025年10月30日(木)15:00–16:30(日本時間)
場所:京都大学稲盛財団記念館2階セミナー室(I213)
報告者:Arthur C. Petersen(UCL)
題目:Religion and Climate Change: Examples from the Science–Policy Interface: IPCC, The Netherlands, and Thailand
・「東南アジアの都市居住」第16回定例研究会
日時:2025年10月30日(木)15:00–18:00(日本時間)
場所:京都大学稲盛財団記念館3階小会議室I(I330)
発表1:The Climate Governance in Indonesian Energy Sector: Towards Achieving the NDC Target(Niken Prilandita(バンドン工科大学))
発表2:町内会の歴史的創造と東南アジアへの伝播について(玉野和志(放送大学))
・京都大学アカデミックデイ2025
日時:2025年11月1日(土)11:00–17:00
場所:京都大学百周年時計台記念館
・京大100人論文
日時:2025年11月2日(日)〜6日(木)10:00–19:00(初日は12時から。4、5日は21:00まで。最終日は17:30まで)
場所:京都大学百周年時計台記念館2階国際交流ホールIII
・東南トーク
日時:2025年11月5日(水)12:00–13:00(日本時間)
場所:京都大学稲盛財団記念館2階セミナー室(I213)
題目:Japan’s Summer of Discontent: Migrants, Moral Panic, and Rethinking what is “Essential”
報告者:マリオ・ロペズ(CSEAS)
コメント:ティアン・ユンチェン(京都大学大学院法学研究科特定准教授)
・研究・イノベーション学会 第40回年次学術大会企画セッション「学術書のオープンアクセスについて考える」
日時:2025年11月6日(木)18:30–20:00(日本時間)
場所:オンライン(要参加申込:申込期限11月5日23:59)
問合せ:設楽成実(CSEAS)
・「日本の〈図書館出版〉の現状・課題・可能性:ダイヤモンドOA振興に向けた基礎調査」研究会
日時:2025年11月8日(土)14:00–17:00(日本時間)
場所:京都大学稲盛財団記念館2階セミナー室(I213)
タイトル:同人誌制作活動の背景とあゆみ:30年間の活動を振り返って
発表者:井上学(龍谷大学文学部)
・展示「川端荒神橋界隈いま・むかし」
日程:2025年11月4日(火)〜14日(金)
場所:京都大学東南アジア地域研究研究所図書室
協力:山口潔子氏、京都工芸繊維大学大学院建築学専攻
・2025年京都モダン建築祭ガイドツアー 京都大学東南研図書室
日程:2025年11月8日(土)〜9日(日)
場所:京都大学東南アジア地域研究研究所図書室
主催:京都モダン建築祭実行委員会
・地域研究コンソーシアム 2025年度年次集会・一般公開シンポジウム
日時:2025年11月15日(土)9:30–16:30(日本時間)
場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室(I333)およびオンライン
一般公開シンポジウムテーマ:物語を生きる身体:地域研究と社会を架橋する共創的学び
・第49回東南アジアセミナー
日程:2025年11月19日(水)~24日(月・祝)
場所:プノンペン/シハヌークヴィル(カンボジア)
テーマ: グローバルな混乱の時代の東南アジアー歴史・語り・超学際的挑戦(Global Disruptions and Southeast Asia: Exploring histories, narratives, and transdisciplinary challenges)
・京都大学データ科学イノベーション教育研究センター データサイエンススクール「Rを用いたプログラミング基礎・統計入門」
日時:2025年11月25日(火)13:30–16:30(日本時間)
会場:Zoomによるオンライン開催
講師:木村里子(CSEAS)
・CSEASコロキアム
日時:2025年11月27日(木)15:00–16:30(日本時間)
場所:京都大学稲盛財団記念館2階セミナー室(I213)
題目:TBA
報告者:Vina A. Lanzona(ハワイ大学)
・第205回東南アジアの自然と農業研究会
日時:2025年11月28日(金)17:00–18:30(日本時間)
場所:京都大学総合研究2号館4階AA447会議室およびオンライン(Zoom)
話題提供者:福島万紀(都留文科大学)
題目:タイ北部の奥地的集落における換金作物栽培の拡大と焼畑耕作の継続可能性
・CSEASコロキアム
日時:2025年12月4日(木)15:00–16:30(日本時間)
場所:京都大学稲盛財団記念館2階セミナー室(I213)およびオンライン
題目:The May 1998 Riots: Women Psychologists and the Entry of Trauma in Indonesian Popular Discourse
報告者:Hans Pols(シドニー大学)
司会:山田千佳(CSEAS)
3. 出版
【最新号】『東南アジア研究』63巻1号を7月31日に刊行しました。本誌ウェブサイト、KURENAI、J-Stageにて全文をダウンロードいただけます。
【最新号】Southeast Asian Studies Vol. 14 No. 2を8月28日に刊行しました。本誌ウェブサイト、KURENAI、J-Stageにて全文をダウンロードいただけます。
【最新号】多言語オンラインジャーナルKyoto Review of Southeast Asia 第41号を9月1日に刊行しました。今号の特集 “History with Documents: New Research on the Indonesian Left” ではThiti Jamkajornkeiat氏が編者を務め、5本の論文を掲載しています。各論文は英語、タイ語、インドネシア語、フィリピン語、ベトナム語、ミャンマー語、日本語、および今号から新たに加わったクメール語で全文をお読みいただけます。また、英文による5本の書評を掲載しています。
【コラム公開】Kyoto Review of Southeast Asia “TRENDSETTERS” コラムを10月1日に公開しました。
“A Birdlike Flock Moving Without a Leader: Social Networks and Economic Pressures in the 2025 Indonesia Demonstrations” by Wahyu Prasetyawan
【最新号】ニューズレター10月号を公開しました。
[かもがわ便り]石井周「水中考古学の可能性」
【論文】Yunihastuti E, Ophinni Y, Sari V, Adli I, Yamada C, Widhani A, Sanityoso A, Gani RA. Longitudinal changes in immune biomarkers following direct-acting antiviral therapy in HIV/HCV-coinfected individuals in Indonesia. Journal of Medical Virology. 2025 Oct 6; 97(10): e70627 http://dx.doi.org/10.1002/jmv.70627
【コラム】岡本正明「〈世界の潮〉怒れる人民の復権か?インドネシア・8月デモと暴動の深層」『世界』2025年11月号、135–138頁。
【報告】Ye Htet, “AYSEA 2025 ‘Asia in a Fragile World’,” SEASIA Official News, October 3, 2025.
【近刊】村上勇介・出岡直也・山岡加奈子編『現代ラテンアメリカ政治』(地域研究のファーストステップ、法律文化社、2025年10月)
【近刊】岡本正明・中西嘉宏・大庭三枝編『現代東南アジア政治』(地域研究のファーストステップ、法律文化社、2025年11月刊行予定)
4. 講演・報告
【研究発表】ジュリー・デロスレイエス、「Conversation on Globalization and Deglobalization」(Walden Bello、CP Chandrasekhar、Chukki Nanjundaswamy氏とのパネル)、および「The ‘Criticality’ of Critical Minerals: Implications for Energy Transitions and Global Power」(単独報告)、Focus on the Global South – Chulalongkorn University Social Research Institute、2025年9月25日、バンコク。
5. ポッドキャスト(音声プログラム)「ブックトーク・オン・アジア」
▼ポッドキャスト(音声プログラム)「ブックトーク・オン・アジア」シーズン1(No. 1〜No. 76)のプログラムをSoundCloudとYouTubeにて配信中です▼
今月のおすすめエピソード
No. 70 櫻田智恵『国王奉迎のタイ現代史─プーミポンの行幸とその映画』(ミネルヴァ書房、2023年)
6. メディアへの露出
※掲載記事の一部はスクラップして稲盛財団記念館2階掲示板(研究支援室2の向かい側)に掲示しておりますので、適宜ご覧ください。
・NHK Worldの特集「Climate Change in Asia」に対し、甲山治教授が泥炭地火災が発生している状況を示す資料を提供しました。
Climate Change in Asia ep. 2: Indonesia Struggles With Forest Megafires(2025年9月23日放送、00:52から)
・週刊読書人(2025年10月3日付)にて貴志俊彦著『戦争特派員は見た─知られざる日本軍の現実』(講談社現代新書)の書評が掲載されました。評者は石本理彩氏です。
・今村祥子著『統治理念と暴力─独立インドネシアの国家と社会』(東京大学出版会、2024年)の書評が『アジア経済』2025年66巻3号、88–91頁に掲載されました。評者は見市健氏です。
7. 最近のイベント
・山田勇さんをしのぶ会
日時:2025年10月18日(土)13:30–19:00(日本時間)
場所:京都大学稲盛財団記念館3階大会議室(I333)・中会議室(I332)およびオンライン
・第203回「東南アジアの自然と農業研究会」
日時:2025年10月17日(金)17:00–18:30(日本時間)
場所:京都大学総合研究2号館4階AA447会議室およびオンライン(Zoom)
題目:ラオス農山村における家族農業の持続性とレジリエンス―北部ウドムサイ県の焼畑農業の事例から
話題提供者:東智美(埼玉大学人文社会科学研究科)
・研究会「マサコンから40年:ブータン研究の軌跡と展望」
日時:2025年10月13日(月)13:00–16:30(日本時間)
場所:京都大学綜合研究2号館4階447号大会議室
主催:京都大学ヒマラヤ研究ユニット
・民族自然誌研究会第111回例会
日時:2025年10月11日(土)13:00–17:00(日本時間)
場所:京都大学総合研究2号館4階大会議室(AA447)
テーマ:不思議に満ちた植物―タケ・ササの謎に迫る!
・国立大学附置研究所・センター会議 第3部会シンポジウム
日時:2025年10月4日(土)13:30–16:30
場所:東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所およびオンライン(Zoom)
テーマ:「多様性」をどのように生きるか:複眼的に考える地域の姿
・京都大学アカデミックデイ2025
日時:2025年9月27日(土)11:00–18:00
場所:ゼスト御池
座談会「フィールドノートでのぞく研究の世界」に木村里子准教授が登壇しました。
・「映像で学ぶ東南アジアの文化と社会」上映会
日時:2025年9月26日(金)18:00–(日本時間)
場所:京都大学東南アジア地域研究研究所東棟1階マルチメディアルーム2
上映作品:「恋する惑星/Chungking Express/重慶森林」(103分、広東語、日本語字幕)
・CSEAS読書会
日時:2025年9月26日(金)16:00–(日本時間)
場所:京都大学稲盛財団記念館2階東南亭(I201)
紹介図書:Helen Czerski. Blue Machine: How the Ocean Shapes Our World. Penguin, 2024.(ヘレン・チェルスキー著、林真訳『ブルー・マシン─海というエンジンと人類史』エイアンドエフ、2024年)
紹介者:オフィンニ ユディル(CSEAS)
・Special Seminar
日時:2025年9月24日(水)15:00–18:00(日本時間)
場所:京都大学稲盛財団記念館2階セミナー室(I213)
題目1:The Hidden Political Economy of Apartment Governance in Jakarta
報告者1:Ruriana Nafilah Anggraini(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科博士課程)
題目2:Reimagining Resistance: Feminist and Housing Rights Activism in Contemporary Indonesia
報告者2:Intan Paramaditha(マッコーリー大学)、Aryo Danusiri(インドネシア大学)
・CSEASコロキアム
日時:2025年9月24日(水)14:00–16:00(日本時間)
場所:京都大学稲盛財団記念館2階東南亭(I201)
題目:Japan’s Legal Transplants and Their Discontents: A Critical Appraisal
報告者:ルキト・ラトノ(スナン・カリジャガ国立イスラーム大学/CSEAS招へい研究員)
■編集後記 ——————————————–
先日、リアウ州の自然災害について古い新聞記事を見に、中央ジャカルタのサレンバ通りにあるインドネシア国立図書館(旧館)へ行きました。5年に1度ほど大きな洪水が起こっている地域について、1978年にも広範囲で洪水が起こっている記事を見つけました。しかし記事を閲覧するまでが大変でした。記事のタイトルだけが館内のパソコンで検索でき、本文を閲覧するには1ヶ月分の冊子体となった当時のサイズの新聞を1枚ずつめくっていきます。新聞の並びも日付ごとに揃っているわけではなく、文字も大変小さいです。以前に訪れたことのある研究者によると、大きな新聞を1枚ずつめくっていくスタイルは昔から変わらないようです。記事タイトルだけをスキャンするのであれば紙面全体をスキャンするといいのに、と思った次第です。(M.O.)
先週、久しぶりに本部キャンパスまで歩きましたが、銀杏を踏まずに歩くのに苦労しました。気づかないうちに秋が来ていたことに気づかされました。現在、図書館の方とアンケート調査を準備しています。日本のダイヤモンドOA出版の持続的展開につながりますように。(sn)
2025年のノーベル経済学賞は「イノベーション主導の経済成長の解明」に対するもので、ジョエル・モキイア教授(モキアとも。ノースウェスタン大学)、フィリップ・アギオン教授(アギヨンとも。コレージュ・ド・フランスほか。高級既製服の先駆け「クロエ」創業者のギャビー・アギョンの息子)、ピーター・ホーイット教授(ブラウン大学)の3名に贈られることになりました。ここではスウェーデン王立科学アカデミーの資料とフィリップ・アギオン他著『創造的破壊の力』(東洋経済新報社)に依拠しながら、簡単に三氏の業績について説明します。経済史研究者のモキイア教授が取り組んだ研究課題は、持続的経済成長(経済成長のテイクオフ)はなぜ19世紀初めまで待たねばならなかったか、そしてなぜそれは大国であった中国ではなく、欧州の小国の英国で始まったのかというものです。この大きな課題を多数の著作で取り上げますが、彼の論旨は知識と制度の二つの関わりに注目するという簡潔なものです。まず、知識を理論と応用、具体的には科学的知識(理論的知識)と技術的知識(実践的知識)に分けた上で、原理を理解しようとする科学的知識が19世紀に入って社会的に望まれ、それが技術と結びつき、科学と技術が歩調を合わせて理論と応用が相互作用した結果、新しい製品とサービスが創出され、産業革命の基盤が用意されたと説明します。それでは制度はどのような役割を果たすのでしょうか。モキイア教授は三つが重要だと言います。第一に知識・情報の交換と普及。第二に(国同士の)競争。第三に知的財産権の保護。郵便サービスの普及と出版・印刷コストの低下によって、欧州に散らばる知識人同士が共通言語であるラテン語で知識・情報の交換を行う空間「文学共和国」(文芸共和国、学問の共和国)が18世紀までに用意されたことにより、国境を越えて「巨人の肩に乗る」ことが可能になり、知識の伝播が新しい知識の創造に資するようになります。さらに当時の欧州は国同士が競争していたため、国境を越えた人材獲得合戦が盛んになるとともに国同士の競争は、既得権益から利益を得る国内の反対勢力を封じたり、妥協を重ねるなどして、製品、技術、サービスの新陳代謝を促します。最後に発明家の権利を認め、報いること。欧州の中で英国は技術で先行していたわけではなく、先行していたのは財産権の保護でした。これが特許制度の登場を用意し、産業革命以降の持続的経済成長につながったとします。
一方、アギオン教授とホーイット教授は、1992年に公刊された共同論文の中で、企業による研究開発(R&D)への投資はどのように決まるのかに注目することで、シュンペーターが提唱した「創造的破壊」という考え方をマクロ経済学研究、経済成長論研究の中に持ち込みました。R&D競争によって新しい製品、技術、サービスが生まれ、それが従来のものよりも消費者に支持され、旧来の製品等は一気に蹴落とされるという「創造的破壊」は経済厚生にとって良いことなのか否か。経済成長とどのように関わっているのか。社会は民間のR&Dをどこまでサポートすべきなのか。これらの研究課題に答えるには経済全体を俯瞰する必要があります。企業によるR&Dの原資は家計の貯蓄ですが、家計の貯蓄は金利によります。金利は経済成長率から決まります。経済成長率を考察するためには企業の参入退出、企業のR&Dの決定、家計行動といったミクロ面に目配りしつつ、金融市場と生産物市場を統合して考えるという作業が必要で、アギオン教授とホーイット教授はこれに挑みました。先の研究課題に対する答えは「場合による」というものですが、「創造的破壊」という重要な社会現象への一視点を提示したことは学界の財産だと考えられます。(M)
––– CSEAS メールマガジン第46号 ––––––––––
2025年10月22日 発行
京都大学東南アジア地域研究研究所 広報委員会
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